格差社会

私は母子家庭で育ち海外旅行なんて一度も行ったことがなく、古くて狭くて治安が悪い市営団地で暮らしていた。

同級生のあの子は家族で毎年ハワイへ行き、広くて綺麗な分譲マンションに住んでいた。

私は身長が伸びなくなってから新しい服はほとんど買ってもらわなかった。家計が苦しいことを知っていたから服が欲しいなんて言えなかった。

同級生のあの子はいつも可愛い服を着ていた。遊びに行った部屋のクローゼットには私の持っている服の何倍もの服が収納されていた。

私の家族親戚はみんな高卒低学歴の非正規雇用で、私は親族たちの中で初の大卒になった。今でも大卒は私だけだ。

同級生のあの子の家族親戚はみんな大卒専門学校卒で看護師になったり大手商社に勤めていたし同級生もその兄弟ももちろん大卒だ。

私は大学の奨学金を借りるだけではお金が足りず学費を稼ぐために週に4.5日はバイトをしていたため、友人と遊んだりサークルに入ったりなんてできなかった。稼いだバイト代はほとんど学費の支払いで消えた。

同級生のあの子は学費は親が全て支払い、週に2.3日の短時間だけバイトをして稼いだバイト代は全て自分のお小遣い。サークルに入ったり旅行へ行ったりしていた。

私は大学を卒業してから地元の中小企業に就職した。奨学金の支払いに苦しんだ。親も低収入だから頼れない。日々の生活に加え奨学金の支払いもあるため仕事が辛くても退職はできない。

同級生のあの子も大学を卒業してから地元の中小企業に就職した。奨学金は借りていないため稼いだお金は全て自分のもの。仕事が辛くなり1年で退職して実家に帰った。そのまま実家に住み着き親の脛を齧りながらフリーターをしていた。


私は築30年近い1LDKの古くて汚いマンションに住み、夫と娘の3人暮らし。家計は苦しい。親族だけで小さな結婚式を挙げ、新婚旅行なんて行けなかった。格安の業務スーパーで数十円の節約をし、電気代が高いため暖房も付けず寒い部屋で生活している。

同級生のあの子は新築一戸建てで旦那さんと2人暮らし。盛大な結婚式と海外への新婚旅行が待っているため今はまだ子供は考えていないそうだ。結婚と同時に親の生前贈与で多額のお金を受け取っていた。オーガニックスーパーへ買い物へ行き、近所のカフェで週2日数時間だけ働いている。


結局、どれだけ頑張っても格差は埋まらなかった。
私は仕事も生活も、頑張ることを諦めた。
古くて狭い1LDKのこの家で「生まれたときから環境に恵まれている」人達を妬み、羨みながら慎ましく命を消費していく。

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