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宙組公演「Never Say Goodbye-ある愛の軌跡-」の魅力

わたしと宝塚の出会いの作品

 わたくし事ではあるのですが、この作品は学校から観劇したわたしが初めて塚沼に引き込んだ作品でございまして。今でもあの時の感動は忘れられないです。本当に素晴らしい作品だと思いますし、この作品でなければここまでハマることはなかったんじゃないかなって思うくらい運命的な作品でした。
 わたしが行っている学校が演技の専門学校ということでめちゃめちゃ近いS席でして…。銀橋めっちゃ近かったんですよ…。もう、あのフィナーレの風を感じるくらい。そしてオペグラなくても顔がハッキリ分かって…この作品のブルーレイで本格的にハマった母曰く、これを生で観たらそりゃあハマるわ。とのこと。

「Never Say Goodbye」の魅力

ゆりかさんの初舞台公演から16年ぶりの再演

 これは本当に運命的な作品だな。って思うんですよね。もちろん後で知った話ですが、トップスター真風涼帆さん(ゆりかさん)の初舞台が初演の「Never Say Goodbye」だったんですよね。それを16年経った今、ゆりかさんがジョルジュ・マルローとして真ん中に立たれる…。なんてドラマチック…。ゆりかさんもそれはそれは気合が入ったでしょうね…。
 新作主義の宝塚だからこそ、こういう繋がりは面白いです。ゆりかさんを支える副組長は92期生、同期の松風輝さん(まっぷーさん)です。パオロ、いい役ですよねぇ。

コーラスの宙組の底力

 コーラスの宙組らしいナンバーがとっても多いです。というか全体的に見ても曲数が多いです。どの曲も素晴らしく、元々が宙組に当て書きされた作品ということもあってか組全体で歌う曲が多いんですよ。これ以上にコーラスの宙組を感じられる作品無いんじゃないかな…。ほんとに宝塚…ハマらんだろうなとか、外出るのめんどくさいな。とか思ってた当時の自分を殴り飛ばしたいですよ…予習しろ。って。ちなみにこの作品を観たあとに塚沼にまんまとハマり、抜け出せなくなり、そして今に至るわけですが、家に帰ってからこのバルセロナの内戦のこととかサンジョルディの祭りのこととか調べ倒したんですよ。そしてブルーレイを購入しまして観たらそりゃあ、深いところまで解釈できて面白かったです。もぅ…あの時のわたしは何してたんだ…。

イケコ先生×フランク・ワイルドホーンは神

 宝塚が新作主義を採用している以上、この上なく大事な演出家の先生。名作の数々を書かれている小池修一郎先生(イケコ先生)ですが、なんとこの作品はアメリカの作曲家フランク・ワイルドホーンが初めて宝塚に曲を作った作品でもあります。全曲書き下ろしですよ。初演は和央ようかさんと花總まりさんの退団公演でもあったわけですが、和央さんはこの後フランク・ワイルドホーンとご結婚されていますね。
 イケコ先生と言えば、原作ありきの一本物を作るのが得意で原作なしは苦手というイメージですが、この作品はイケコ先生らしく、オリジナルでありながら重厚感があったと思います。
 そしてフランク・ワイルドホーンが全曲書き下ろししたと言えば雪組公演「ひかりふる路~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~」です。もちろんこの作品も傑作ですよね。新規ホイホイと呼ばれるだけあります…。
 またこの二人の新作が観てみたいです。

わたしが観劇した感想

 悲恋物で、それもまぁナチスドイツとか、バルセロナの内戦だとか…かなり重めの、難しい話ではあったものの、完全に理解こそ出来ませんでたが、その歌の力と生の舞台の素晴らしさは本当に実感した作品でした。場面場面のすべてに鳥肌が立ち、魅了され、後で色々な作品を観ても、これ以上に魅了された作品はありませんし、好きな作品一位の座は未だこれが一番です。
 この作品はなかなか宝塚の作品の中でも異色を放つものだなぁと感じます。曲数が多いことや、宝塚らしい華やかさはなく、ゴリゴリの社会派であること、イケコ先生のオリジナル作品であること等々…。
 わたしが好きな曲は、まぁ全部ですが、特に観劇後に最も記憶に残っているのは『One Heart』『NEVER SAY GOODBYE』『俺たちはカマラーダ』でしょうか。
『One Heart』は宙組の中でもかなり名曲名高い曲ですよね。(後で知った話)あのゆりかさんが静寂の緊迫した空気を破って歌われるお姿はやはりトップスター様だなと。それはそれは美しく、強く、かっこいい。あれも鳥肌立った…そこから一つになっていく。まさに『One Heart』になる瞬間がこの目で見えるようです。余談ですが和希そらくん(そらくん)が『ハッスルメイツ!』でこの曲歌ってて嬉しかったです。
『NEVER SAY GOODBYE』はその名の通り主題歌で、劇中でゆりかさん演じるジョルジュが2回歌ってフィナーレナンバーの歌唱指導で芹香斗亜さん(キキちゃん)が歌われるわけですが、これ全部キーが違うんですね、それがもう大感動。曲に対する意気込みや、込められた想いがそれぞれの場面で違っていて、それが曲とリンクしているからあの感動があるわけですよ。なんて素晴らしい。…フランク・ワイルドホーンはすごいです。個人的には歌唱指導のが好きだったりします。あのね、「あぁ!フィナーレが始まるっ!」ってなる感じ(笑)。
『俺たちはカマラーダ』これもまぁコーラスの宙組らしい一曲で。戦うために、団結していく場面何だけれども、自分の生きがいを捨てて兵士となった人、女性、子供…皆さんが団結して、希望の光を見るように歌うのが時代を感じて涙が出そうになるよねぇ…。あのキキちゃん演じるヴィセントに光が当たる瞬間がなんとも実に…物語に魅了される瞬間だと思います。オリンピアーダから兵士になった男役たちが銀橋に並んだところから始まるんですよねぇ…。あぁ…大劇場で観た時、紫藤りゅうくん(しどりゅー)に惚れた…。
 そしてキャストですが…。ジョルジュに関しては本当に当て書きじゃないの?って思うくらいはまってました。初演の方もスカステで観ましたが、違った感じの芸術家で面白かったです。和央ようかさんのジョルジュも好きですけど、やっぱりゆりかさんの方が好きです。潤花さん(かのちゃん)演じるキャサリンをお姫様抱っこするとか…もう…ね…やばい。大人の色気を纏うゆりかさんにだからできる演技だと思います。キャサリンは、やっぱり大人な自立した女性を演じたらかのちゃん以上の演技ができる人はいないだろうな…。とっても美しかったです。あの二人の並びは最高ですね!ヴィセントは、とにかくあっつい。キキちゃんは本当に何でもできる二番手さんだと思います。すごく好きです。あの水音志保ちゃん(ひろこちゃん)演じるテレサを見る顔が…あぁ、元花男って感じする…。桜木みなとさん(ずんちゃん)演じるアギラールはですね…もうずんちゃんの演技力に圧倒されるばかりで本当に怖い。いい意味でですよ、もちろん。目の使い方がすごい。ずんちゃんは身長170cmで宙組では小さいけれど、その存在感は誰よりも強い。あの黒い皮スーツだけで、ずんちゃんが出てくるだけで空気が変わる感じを出せるのはやっぱりずんちゃんだからだなぁと…尊敬いたします。そして天彩峰里ちゃん(じゅっちゃん)演じるエレンが個人的に好きです。本当に嫌な女、イタイハリウッド女優。でも多分一番になりたいっていう気持ちと同時にジョルジュへの愛もきっとあって。だからこそ、取られたくないっていう女心、あると思うんです。なんと言ってもじゅっちゃんちゃんの歌唱力。たくさん聞けて嬉しかったです。やっぱり宙組一の歌姫!!と称賛します。(後で知った)個人的MVPは留依蒔世くん(るいくん)。女役でございましたが、やはりあのお役は男役があるからこその力強さ。それが大事だったんだと思います。るいくんは…すごいですね。さすが97期生首席と言わざるを得ない…。退団されるのが惜しいです。 
 ジョルジュがヴィセントに向かって「兵士になったマタドールか。似合うぞ」って言ったシーン。戦争に参加して愛する祖国を、人を守ろうとするただの市民たち、銃を持つはずのなかった人たちが戦いにでなければならないその事象、あの言葉を言われて、ヴィセントはどう思ったんでしょうか。わたしは救われたんじゃないかなと思っています。決して裏切らない仲間がいるということが、愛する恋人がいるということが、本当に心の支えになったんだろうなと。それは今現在の現実世界にも関係していて。無縁な世界ではないことを感じます。この作品の再演と今の世情の重なりは運命的なものがあるのかもしれない。この強いメッセージを、この作品を観た人たちは感じている。どうか早く不毛な争いが終わることを祈ります。
 カフェブレイクでキキちゃんが「命を懸けて舞台に立つという意味では通じるものがある」と言っていましたが、やっぱりそういう気持ちがなければこんな世界を作れないんだなと思います。わたしもそんな舞台人になりたい。
 フィナーレ!!!!まず、歌唱指導のキキちゃん。やっぱりああいうザ・タカラヅカの衣装が一本物らしくってワクワクします。そして銀橋で朗々と歌われる…。初めて観た時はタイプじゃない人と思っておりました…。今のわたしとしてはアホっ!って頭叩きたくなる思いでございます。そして群舞ね、もう…鼻血鼻血鼻血…。マタドールはずるい。マタドールでマントブンブン回しちゃって。迫力!そして色気!あれを間近でみたわたしは…もっと価値をわかっていれば良かったのに…。アホ。そっからのデュエットダンス…あれで完全に宝塚という沼にはまって抜け出せなくなった気がします。まるで桃源郷や理想郷に迷い込んだように吸い込まれて、空いた口が塞がらないってああいうことを言うんだと思う。ひっどい顔してただろうな…。パレードの幕開けのエトワールはじゅっちゃん!美しい歌声。安定感の塊。そして美しい。美しい。大好きですじゅっちゃん。初めて観たパレードは終始笑顔で楽しすぎました。

 こんな素晴らしい世界に引きずりこんでくれた学校に感謝感謝です。この魅力が皆さんにも伝われるといいな…。


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