話、終わってないやん:読書録「優等生は探偵に向かない」
・優等生は探偵に向かない
著者:ホリー・ジャクソン 訳:服部京子
出版:創元推理文庫(Kindle版)
「自由研究には向かない殺人」に続く女子高生ピップを探偵役とする青春ミステリー第2作。
シリーズは3部作らしいんですが、本書は「続編」というより、前作の「続き」って感じ。解説者が「第2部」と評してましたが、まさにそんな感じです。
1年前に読んだ前作の内容はボンヤリしてたんですが、そこら辺はストーリーの序盤に「ポッドキャスト」というスタイルで紹介されるので問題なし。
…ではなくて、それくらいの「まとめ」では収まらないくらい、前作とのつながりは密接です。
読んでるうちに思い出してきたからいいんですが、「終わった」と思ってた話が、こんな風に展開するなんて…。
そして本書でも話は決着を見ていません。
1作目・2作目ともにメインとなる事件は解決するのですが(1作目はある青年の冤罪、2作目は友人の兄の失踪)、この小さな街に蔓延る不穏な状況は解決されていないのです。
ドラッグとレイプが絡んだその状況は、主人公たちの学校を汚染し、人々の心を蝕み、分断を生んでいます。
表面上は穏やかな街。
しかしその裏では小さな軋みが声を上げている。
個々の作品の事件とは別に、この「街」を巡る状況そのものがシリーズを通しての「事件」なのかもしれません。
1作目で「探偵」役を演じた主人公は、本作で自分の抱える「正義」への渇望・「真実を追求する」欲求を自覚します。
同時にそこには「司直が正義を実現しない」ことへの激しい怒りがあり、ダークサイドもまた顔を覗かせています。
それが次作でどのような展開を見せるのか。
重低音を思わせる不穏なラストで本書は終わります。
…とはいえ、全体としてテンポの良い、スピーディーな展開は前作同様、読んでて気持ちいいんですけどね。
SNS、インタビュー、手帳といった前作でも駆使されたツールに加え、本作では「ポッドキャスト」という新しいメディアが活用されるあたり、時代の息吹も感じますし。
トントント〜ンと、調子良く読み終えることができました。
3部作の締めとなる次作の翻訳は1年後かな?
待ち兼ねるな〜。
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