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オチに膝を打ち、心を揺るがされる:読書録「アリアドネの声」

・アリアドネの声
著者:井上真偽 ナレーター:上野翔
出版:幻冬舎(audible 版)


「探偵が早すぎる」「その可能性はすでに考えた」の井上真偽さんの作品。
井上さんは結構トリッキーなミステリーを書かれるって印象だったんですが、割と本書はストレートなデザスターもの。
…ま、最後にヒネリはありますがw。


障害者も自由に暮らせるように作られた地下5階建てのスマートシティ。
祭典の最中、地震に襲われたことで、街は大きな被害を被り、浸水と火災が発生する。
その地下5階に三重苦の障害者である女性が取り残されていることが判明。
彼女を救出するために、ドローンを使った救出作戦が計画される。
苦難を乗り終える最中、避難者の障害への疑念も生まれて来て…



主人公はドローンを運転する青年で、少年時代に目の前で兄を亡くした経験から
「あきらめなければ何とかなる」
という信条で物事に取り組んでいます。
この信条が物語の突破口となる一方で、主人公にとっての「鎖」として描かれています。


物語の中で、主人公と幼なじみの関係性も描かれており、最終的には「あきらめずにやる」のではなく「やれることをやる」という方向性に気持ちを切り替えることで、困難を乗り越えていきます。
その過程に主人公の成長が描かれている訳です。
作品的にはラストに被害者の障害詐称疑惑の謎が明かされるのですが、コレがなかなか…。
やれることをやる
だが「やれること」の何と奥深いことか…。
どんでん返しなんですが、テーマにも効いてくるあたり、やられた感倍増でした


この作品、上手く映像化したら盛り上がるんじゃないかなぁ。
でもまあ、地下崩壊のスマートシティを描くのには予算がかかるから、Netflixじゃなきゃ無理かなw。

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