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カモノハシの大冒険譚&楽園の崩壊:読書録「われらはレギオン4 驚異のシリンダー世界」

・われらはレギオン4  驚異のシリンダー世界<上・下>
著者:デニス・E・テイラー 訳:金子浩
出版:ハヤカワ文庫(Kindle版)

「3」で人類救済に成功して、宇宙開拓に飛び出していったボブたち。
「3部作で終了」
…と思ってたら、「好評にお応えして」続編発表となったようです。



<3部作>では色々錯綜しまくってましたが、本作のストーリーラインは比較的シンプル。

・初期に行方不明になったボブのコピー(ベンダー)の行方を追う中で発見した異星人世界(副題の「シリンダー世界」がこれ)での「ベンダー捜索/救出」の冒険譚
・コピーを重ねるうちに差異が大きくなってしまい、考え方や思想、哲学にズレが生じてしまった「ボブたち」の軋轢と、その結果のボブヴァースの危機

この二つが並行して語られます。
異星人「クインラン人」は<カモノハシ>に似てるんですが、そのアンドロイドに憑依(?)したボブたちの冒険譚は、アクション満載でなかなか楽しませてくれます。
その世界の謎が、ボブヴァースの危機とどう重なっていくのか…ってミステリー仕立ての部分もあって、物語としてもドラマティックな展開になり、面白く読ませてもらいました。



オリジナルは死亡し、電脳世界での存在になった「ボブ」がコピーをどんどん繰り返し、VR世界とリアル世界(アンドロイドに入って)に独自の生態系(ボブヴァース)を作りつつ、異星人と人類の攻防に関与することになる。

…というのが先行する3部作のアウトラインですが、この「ボブヴァース」が僕は結構好きなんです。
まあ、感覚的には「攻殻機動隊」で草薙素子がネットの海に溶けていったような感じに通じるんですけど、「攻殻機動隊」シリーズ(特にアニメの方)ではなんとなくネガティブなイメージもあるネットワークとの融合が、「ボブヴァース」では(ボブの性格もあって)実に明るく、ヤンチャで、それでいて倫理観はある世界として描かれています。
VRとリアルを行き来しつつ、瞬時に物事を判断し進めていく展開が毎回気持ちいいんです。
本作では<ボブ>は1万人ほどになってますんでw、その推進力もナカナカですわ。


その「ボブヴァース」が大きく揺らぎ、危機を迎えるのが本作のもう一つのテーマ。
それでいて悲壮感はなく、「ボブじゃなくなりつつある」けど「ボブである」って対抗勢力たちとのせめぎ合いが、カラリと描かれています。
まあ、どっちも「大人になり切れない」ボブだからなぁw。
その過程の中で、ボブたちは人類や前3部作で庇護した異星人たちとの関係性も微妙な感じになってくるんですが、それもまた「カラリ」と描かれているのもボブならでは。
このシリーズを楽しめるかどうかは、この「ボブ気質」を楽しめるかどうかにかかってるってことですね。
(もちろん僕は大好き)



続編も計画されてるとのこと。
さてさて<ボブヴァース>はどうなっていくのかな?
楽しみです。



#読書感想文
#われらはレギオン
#驚異のシリンダー世界



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