いやぁ、そういう見方、確かにな〜:読書録「ミライの源氏物語」
・ミライの源氏物語
著者:山崎ナオコーラ
出版:淡交社
大河ドラマ(光る君へ)の便乗本
…じゃないかな?出版は23年3月だし。
その頃には決まってたから、「狙った」って可能性もなきにしも…?
どっちでもいいんですが、僕が大河の「副読本」として読んだのは確かですw。
「千年も前の作品なんだし、そのころ書いた人/読んだ人の考え方や常識は今と違う。それを今の視点から批判するのは無意味」
…ってのは当然だし、著者もそんなことは重々承知。
「その当時の人はどんな風に考えたり、とらえたりしていたか」
をベースにするのは研究者なら当然だし(ナオコーラさんは源氏物語を研究されてたことがあります)、そういう視点で読書するっていうのもあるでしょう。
一方で、「物語」として気楽に接するとしたら、作品は千年前のものでも、「読む人」は<今>の人。
その<今の人>が読むときにどんな違和感を感じるか、何を考えるか…それは「読書」の当たり前のあり方でもある。
まあ、そこから「源氏物語」を読み直したって感じでしょうか。本書については。
ルッキズム ー末摘花
ロリコン ー紫の上
マザコン ー桐壺更衣と藤壺
ホモソーシャル ー雨夜の品定め
貧困問題 ー夕顔
マウンティング ー六条御息所と葵の上
トロフィーワイフ ー女三宮
性暴力 ー女三宮など
産んだ子どもを育てられない ー明石の御方
不倫 ー雲居の雁と他のたくさんの人たち
ジェンダーの多様性 ー書かれていない人たち
エイジズム ー源典侍
出家 ー浮舟
受け身のヒロイン ー桐壺更衣と浮舟
「なるほどね〜」
なんですが、前半はそれほど「新しい視点」って感じもしないかな〜と思いながら読んでました。
「源氏物語」について色々言われてることを、わかりやすく整理した感じかな…と。
居住まいを正したのは「性暴力」という視点に踏み込んだあたり。
女三宮、浮舟、そして紫の上
当時の恋愛のあり方から言えば、それを<批判>するのは当たらないのですが(紫式部も批判しているわけではない)、<今>の視点から見ると「確かに」。
そしてのその視点から物語を読み直すと、「源氏物語」そのものの大きな流れが、そこに呼応するようにも思えてくる。
これは思いもよらない視点でした。
「源氏物語」を<今>の視点から批判するものではない。
でも<今>の視点から見ることで、「源氏物語」そのものが持っている何かに呼応するものを感じ取ることができるのかもしれない。
それだけの芳醇さがあることが、この物語が一千年のときを耐え得た理由の一つなのではないか、と。
予想以上に興味深く読めた作品でした。
ま、フェミニズム的スタンスが苦手な人には向かないかもしれませんがw。
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