ミステリーじゃないのねw。:読書録「ラブカは静かに弓を持つ」
・ラブカは静かに弓を持つ
著者:安檀美緒 ナレーター:斉藤壮馬、伊東健人 他
出版:集英社(audible版)
発表されたときに、
「面白そうだな」
とちょっと思ったんですが、そのまま忘れちゃって…。
audibleにあるのを見つけて、DLしました。
橘は少年時代の誘拐事件未遂の記憶から逃れられずにいる。
事件の影響でチェロを弾くのをやめ、今は著作権管理団体に勤務する橘に、著作権法違反の証拠の収集のため音楽教室に潜入調査に入る命令が降る。
そこで出会った教師の浅葉と、彼の生徒たち。
橘は思わぬ穏やかな日々をそこに見出す。
スパイである身分を隠したままに…
ちょうどヤマハとJASRACの争訟が話題になってたこともあるし、スパイ×音楽小説ってのもちょっと面白そうで
…だったんですが、なんでか「ミステリー」と思い込んでたんですよねw。
全然、ミステリーじゃないっす。
なんならスパイサスペンスっぽくも。
幼少期の事件をきっかけに「演奏」を捨てた青年が、特殊なシチュエーションで「音楽」と再会し、
<嘘>から始まって、やがてかけがえのないモノになった人間関係を、根底のところで崩しながら、もう一度築き直そうと一歩踏み出す。
…そういう人間ドラマでした。
「死体」もなけりゃ、「銃撃戦」もありませんw。
個人的に音楽教室の著作権問題については、
「まあ、わかるんだけど、それって音楽の土壌そのものを失わすもんじゃないの?」
って気持ちがありました。
裁判の決着はこうなったようですね。
<音楽教室著作権裁判>
講師の演奏は著作権の対象/生徒の演奏は対象外
割といいところに着地してるんじゃないかな?(音楽教室がビジネスとして成立している以上、なんらかの利益還元は著作権者にもあって然るべし…という観点で)
ちなみに本書は著作権者の権利は認識しつつも、音楽教室/講師と生徒の関係性から、著作権団体の主張にはネガティブではあります。
出版は最高裁判決前(判決は22年10月。出版はその5月)ですが、その決着を作者がどう思ってるかはちょっと分かりません。
まあ、そこがテーマの作品じゃないんですけどね。
個人的には主人公と同じ「スパイ」のある人物がちょっと気になります。
ここはもうちょい深掘りして欲しかったw。
まあ、こっちもテーマじゃないと言えばテーマじゃない。
設定はエンタメですが、物語運びは割と純文学テイスト。
派手な話が好みな方にはちょっと退屈かも。
ちなみにaudibleだと、各キャラの声が全員別の人が当てて、総勢9名のキャストが表記されています。
気合い入ってるなぁ
…だけど、そこまで効果的でもなかった気がw。
男女二人で演じわけ…くらいがちょうど良かったんじゃないかと思いますよ。
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