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「24年組」の神話を解体する:読書録「萩尾望都がいる」

・萩尾望都がいる
著者:長山靖生
出版:光文社新書(Kindle版)


「萩尾望都」作品について、デビューから最新作まで、「今日的視点」から論じ直した評論本。
「評論」なんで、読んでると、「なんか小難しいこと言っちょるな〜」ってとこもありますが(自分の勉強不足を棚上げしてるw)、全体としては興味深く読めました。



「今日的視点」という点では、テーマとしては「ジェンダー」「自由」「家族(親子)」…と言ったあたり。
ジャンルとしては「SF」としての萩尾作品への言及が特に強く出ています。
僕個人としては80年代頃には萩尾作品をSF視点から読み解く文章は結構読んだ記憶があるんですが(そういうのが紹介されてて懐かしくもありました)、<今>という地点から読み直す方が「SFとしての萩尾作品」の凄さってのは、より理解できるように思いました。



そして「24年組」「大宮サロン」の伝説の解体。
「一度きりの大泉に話」の後に書かれた本書は、この美しい伝説を容赦なく解体します。
<物語>としては美しく纏まってるんですけどね、「24年組」「大宮サロン」。
でもそれが幻影(あるいは増山・竹宮ラインの「思い込み」「捏造」)であったのは、ほぼ間違いないことだと思います。
竹宮/萩尾の関係性だけでなく(ここが「一度きりの〜」で露わになったんですが)、具体的な漫画家名を挙げながら、「24年組」や「大宮サロン」が成立しないことを論じてるあたりを本書は「評論」として論じています。
まあ、2、30年経って、関係者が皆さんいなくなったら、ここら辺が「伝説」として復活してくることもあるかもしれませんが(それくらい「美しく」できてはいます)、萩尾さんはじめ、現役の方もまだいますからね。
その間はこのラインでの「物語」は成立しないかな。


個人的にはここら辺で挙げられている漫画家名を見て、自分の少女漫画歴がホボホボここら辺の作者(1960年生まれくらいまでの漫画家)で止まっていることに、ちょっと衝撃を受けましたw。
漫画読みとしては「現役」とまではいかないものの、そこそこはフォローしてたつもりだったんですが、作品はフォローしてても、漫画家のアップデートはあんまりしてなかったんですな。
まあ、だからって今更若い漫画家を意識的にフォローする気もないですけどw。
(少年漫画・劇画の方の漫画家はアップデートされていると思います。本書でも「少女漫画の保守化」に関する言及がチョットありますが、もしかしたらそこら辺も関係してるかも。
萩尾望都世代の漫画家たちは、良くも悪くも「保守化」はしませんでしたからね)



…てな感じで本書を読んで、SFがらみの作品を読み直そうかなと思って、「スターレッド」と「銀の三角」をDL。
ついでに以前DLしてた「半神」をまた読み直してみて…またもやガツンとやられました。
なんなんでしょう、この作品のとんでもなさは…。


#読書感想文
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