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さて、僕のココロの「ゼイ肉」はなんだろう?:読書録「あなたのゼイ肉、落とします」

・あなたのゼイ肉、落とします
著者:垣谷美雨
出版:双葉文庫(audible版)

「いや〜、コロナ禍でゴロゴロしてて付いちゃったゼイ肉を落とさなきゃいけないと思って〜」
…って訳でもないんですがw、audibleでオススメに上がってきてたので、つい。
Amazonのアルゴリズム恐るべし。


垣谷美雨さんは、「老後の家計」「終活」「定年後のオジサンの生き方」等々、今の社会のタイムリーな「課題」をテーマとして取り上げて、小説を書かれています。
僕も2、3作読みましたが、テーマそのものは結構「重い」けど、ストーリーとしてはそこまで深刻なところには持っていかず、基本はコメディタッチで読みやすい作品に仕上げてるんですよね。
それでいて根幹となるテーマそのものから目を逸らしてはいない…ってあたりのバランス感覚がちょうどイイ感じなんでしょう。


本作は「ダイエット」をテーマに…なんですが、作品的にはその裏にある精神的・心理的な課題に踏み込んだ内容となっています。

<心のゼイ肉、落とします>

ってのが作品の本当のテーマ。
そもそも「ダイエット」なんて、「消費カロリー>摂取カロリー」であればイイだけなんですから。(それができないのは…)
性別も年代も違う4人の人物を主人公として、彼らの真の「課題」を解いていく連作小説です。


・園田乃梨子 49歳:「歳を取り、容貌が衰える」ことに自分が合わせられない
・錦小路小菊 18歳:両親(特に父親)の束縛が強く、自立できない
・吉田知也 32歳:父親に反発しつつ、価値判断が父親と同じになってしまい、自我の形成が歪になっている
・前田悠太 10歳:貧困といじめの中、健全な生活環境が崩れている



彼らを導くのが「大庭小萬里」と言うキャラで、「ダイエット指導」を通して、彼らが囚われている精神的な閉塞感や束縛、歪みを明らかにし、解放していく…という構図です。
それぞれが違った要因を抱えているのですが、その根底に共通するのが「家族関係」。
垣谷さんの作品全体に通じる視点かもしれません。


性別・年代が違うだけでなく、物語展開にも作品ごとに工夫が凝らされていて、なかなか楽しく読む(聴く)ことができます。
難点を言えば、
「読んだからって、痩せられない」ことw。
結果的には「そんなに痩せなくてもいい」って結論になるケースもありますから。


本作にはどうも姉妹編があるらしくて、そちらは「片付け」がテーマになってるとのこと。
いやぁ、これも課題なんだよな〜。
機会を見て、そっちも読んで(聴いて)見ようと思います。
…チョットは体重落としてからね。


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