自分としても区切りをつけたかったので:読書録「小山田圭吾 炎上の「嘘」」
・小山田圭吾 炎上の「嘘」 東京五輪騒動の知られざる真相
著者: 中原一歩
出版: 文藝春秋(Kindle版)
どうにもこうにもすっきりしない気持ちが残っていたので、自分自身に一区切りをつけるために読んでみた作品。
いじめの対象となったと言われる人への取材ができていないので、そういう意味では完璧ではないけれども、このタイミングで書かれてものとしては最もバランスが取れていて、丁寧な内容になっていると思います。
(あの炎上の状況を考えると、いじめの対象になった人が取材の対象になること自体が良いことだと思えないと言うのもありますしね)
主なポイントは以下かなと考えています。
①小山田圭吾が記事の内容になったような行為を行ったことについては、1部は事実。
その点に関しては「いじめ」と今から見れば言われても仕方がない部分があると小山田サイドも認めており、反省している。
ただし自分が行っていないことや混同させるような内容があることも小山田サイドが主張しており、この点は同席した目撃者の証言からもほぼ信用しても良いと思われる
②記事が書かれた時期や媒体の性質から行ってある意味「悪ノリ」の部分があったのは確かと思われる。
その点に関しては、「クイックジャパン」の記者がホームページで書いている点が妥当と思う。
「ロッキング・オン・ジャパン」サイドは本件に関してはきっちりとした説明をしていない状況。
③記事がでた以降、小山田サイドが訂正をする機会は複数回あった。
それぞれのタイミングで訂正謝罪を行わなかった事は、小山田サイズのミスジャッジであると考える。
④オリンピックの作曲を引き受けた経緯に関しては「友人を助けるため」と言う動機が1番大きく、そもそもクレジットも出ないと言う約束であったと言う点は同情に値する。
僕がこの小山田さんの記事について知ったのは、本書を読んでさかのぼって考えてみると、2011年頃のことだろうと思います。
そのことがあったので、僕自身は本件に関しては
「小山田圭吾はオリンピックの作曲の仕事を受けるべきではなかった」
「もっと早い段階で謝罪をすべきであり、その点を放置した点において問題がある」
と言うスタンスでした。
本書を読んでも、そのこと自体に変わりはないんですけど、
「まぁ、いろいろあったんだなぁ」
と言う点は理解しました。
それを前提としても、あの時期のあの「炎上騒ぎ」「キャンセルカルチャー的騒動」はちょっと異常だったなぁと今になって振り返って思います。
やっぱりコロナでちょっとおかしくなってたっていうのはあるんでしょうね。社会全体としても、僕自身も。
今になったらすっかり忘れ去られたようになってることを考えてもそう言えると思います。
結果的には、今回の騒動によって、小山田さんは過去の記事の内容に関する個人の見解を明らかにし、謝罪もしっかりしたと言う点では一区切りついたと言うことになるんでしょうかね。
アーティストとしての活動も再開されているようですが、それが大きなバッシングにもなっていませんから、社会的にもある程度は整理がついたということなのかもしれません。
それにしても、大きすぎる代償であったとは思いますけれども。
あれ以降も炎上が繰り返され、キャンセルカルチャー的な動きも何度も繰り返されています。
そのことに問題意識を持っている人も増えてきたと言う事は確かだとは思うんですけど、こういうの、一体いつまで続くんでしょうね。
そういう動きに対する揺り戻しが来ちゃうのも、それはそれで「なんだかなぁ」って言うところはあるんですけど、
ほんと悩ましいです。
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