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存外静謐な世界観が悪くないです:読書録「此の世の果ての殺人」

・此の世の果ての殺人
著者:荒木あかね ナレーター:青木瑠璃子
出版:KADOKAWA(audible版)

小惑星の衝突によって、数ヶ月後には人類が滅亡する世界。
太宰府で教習所の通うヒロインは、元・刑事の教習官と、教習自動車のトランクに他殺された死体を発見する。
こんな状況下で、なぜ「死体を隠す」殺人を犯す必要があるのか?
飛び抜けた正義感を持った教習官とともに犯人の追跡がスタートする…



ってな感じの話。
史上最年少の江戸川乱歩賞受賞者。
帯には綾辻行人、月村了衛、柴田よしき、新井素子、京極夏彦と、錚々たるメンツの推薦文。
…というのに踊らされてaudibleをDL。
「世紀末覇王伝説みたいな世界観の話だったらシンドイかなぁ」
と危惧も過ったんですけど、それは杞憂。
そういう<破滅的><破壊的>なステージは既に過ぎ去っており、多くの人々が逃げ去った静かな福岡を舞台に物語は展開していきます。



まあ、ヒロインは大切な友人たちを暴動や自殺で失い、母親には棄てられ、父親は勝手に自殺して、引き篭もりの弟とポツンと取り残されてるっていう、結構絶望的な状況に置かれてはいるんですがね。
絶望的なんだけど、なんかそんなに「悪くない」感じがするのが不思議っちゃあ不思議。
読後感も良いんですよ、これがw。
絶望的な世界での倫理と正義の話…というとこですかねぇ。
人間って、そういう生き物なのかなぁ、としみじみしちゃたりもしました。



当初はトンデモ正義感の教習官に振り回される話かと思いきや、それがヒロイン自身の個人ストーリーにつながって行く仕掛けなんかもお見事で、この設定で推理小説として成立してるところも大したもの。
楽しく読ませてもらいました。
設定が設定ですからねぇ。
2作目のハードルは高いかなw。
でもちょっと楽しみ。



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