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痛烈な一撃!…だが…:読書録「おっさんの掟」

・おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」
著者:谷口真由美
出版:小学館新書(Kindle版)


森喜朗総理の「わきまえない女」発言に対する内部告発!
…みたいな本かと思ってたら、全然違いましたw。
まあ、帯じゃ煽ってるし、その発言がある種の「体質」を表してるのは確かなんですが。
内容としては、
日本ラグビーの新リーグ(Japan Rugby League One)の発足に向けて、日本ラグビー協会の理事としてリーグ立ち上げをリードしながら、チーム振り分け審査において強豪チームへの「忖度」をしなかったことから(推測)、組織を追われることになった経緯を、時系列に沿って具体的に、「実名を挙げて」記載。
という作品です。


いやぁ、この本自体、「忖度」抜きっぷりは大したものです。
彼女を追いやったメンバー、文句を言った(と思われる)強豪チームの実名まで(トヨタです)、バッチリ書いてますからねぇ。
どうもご本人はここら辺のことを詳らかにするつもりはなかったようなんですが、ラグビー協会の方から、内容証明郵便で、
「協会内で知りえた情報を口外すれば法的措置を含む断固たる措置を採る」
旨の文書を送りつけられて、火がついたようです。
何やってんですかね。ラグビー協会。


本書を読む限り、谷口さんはそんな「分からんチン」でもなさそうです。
前半はプロ化急進派の清宮克幸さんの「失脚」への流れが書かれてるんですが、清宮さんに近しいはずの谷口さんも比較的、協会保守の主張に賛同しているようですから。
谷口排除の直接のキッカケは「新リーグの一部参加チームの審査」において強豪チームへの配慮をしなかったことにあるようですが、ここら辺、協会幹部や強豪チームがもっと谷口さんとコミュニケーションをとれば、違う動きにもなりえたように思います。(実際、そういう動きをした人もチームもいる)


まあ、「舐めてた」んでしょうな。
でもって出てきた結論に表立っては「ケチ」がつけられないから、組織の論理で潰しにかかった…と。
この「組織の論理」が「おっさんの掟」な訳です。
むっちゃ「昭和」。
でもまあ、あるよ。
これはね。


谷口さんはナカナカ戦略家のようで、本書でも冒頭に「川淵三郎」氏との対談を置いてます。
森さんと近しくて、「わきまえない女」騒動の際には森さんサイドと位置付けられた方をなぜ?…なんですが、これはまあ「組織の外の重鎮にも私の味方はおるで」という牽制でしょう。
でもって、新しい協会理事の女性メンバーにも「わきまえない女になってないやろね」的なメッセージを送ることで、「今後の内部曝露」の可能性にも言及しています。
ナカナカですわw。


さあ、ラグビー教会はどうしますかね?
まあ、多分なんもせんでしょう。
それを谷口さんも期待はしてないんじゃないかな?
一番の「反撃」は「新リーグを成功させること」だけど、これはこれで谷口さんの望むことでもありますから。
そして、もし他でなんらかの不祥事が表沙汰になったら…
そのときは本書での指摘(一言で言えば「ガバナンス不在」)が活きてくる。
日大で起きてることも、まあそんな感じでしたから…。

個人的には「ラグビー」はもっと人気が出てもいいスポーツだと思うし、プロ化は世界レベルのプレイを呼び込んでくることで意義のあることだと思ってるんですが。(そのことでファン層やプレイヤー層を広げていくことにつなげる)
でもまあ、なんか変な「アマチュアリズム」が蔓延ってる感じもするし…。
とりあえずは新リーグがどうなるか、でしょうか?



#読書感想文
#おっさんの掟
#谷口真由美
#japan_rugby_league_one

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