見出し画像

引越しできないご近所が抱えるリスク:読書録「『ネオ・チャイナリスク』研究」

・「ネオ・チャイナリスク」研究 ヘゲモニーなき世界の支配構造
著者:柯隆
出版:慶應義塾大学出版会


作者の柯隆さんは伊藤洋一さんのラジオ番組(Round up world now!)に年に何回かゲスト出演され、中国経済について語ってらっしゃいます。
そのバランスの取れた語りっぷりが好きなんですよね。
先日、番組の中で本書が紹介され、それで読んでみた次第です。



「チャイナリスク」と言う意味では、共産党第一主義による司法を超えたルール適用のこととか、公的なデータが信用できない中での経済破綻のリスク(不動産や闇金融)なんかが言われることが多いと思うんですが、本書が「ネオ」としてあげるのは、習政権の覇権的な性格から生じている、

①統制経済を強めることによる経済成長の鈍化(それに伴う社会不安の増大)
②高圧的な態度での外交(戦狼外交)による国際的な孤立

をメインに上げています。(多分)
習近平を含めた現在の共産党幹部連が元・紅衛兵世代であることから、「毛沢東」の独裁的中央集権思考を受け継ぎ、当面の間の中国は「統制」を強める方向に動き、そのことが経済成長の鈍化による社会不安と、国際的な孤立を深めてしまうので…という考えですね。
その先には国際紛争・戦争といった「暴発」リスクもあるので、ご近所の「日本」としてはあまり嬉しくない見立てでもありますが…。



中国人として柯隆さんは故国の将来を非常に憂慮されています。
だから本書も「中国けしからん本」じゃなくて、歴史的な視野も踏まえて自国を分析し、そのリスクを指摘するとともに、そこから脱却する方向性も指摘しようとしています。


「歴史的」と言う意味では、習近平世代の考え方のベースになる毛沢東のスタンスや、中国の経済成長を支えてきた産業構造のあり方(「隙間」産業を担った民営企業が成長の軸であった等)なんかは、改めて頭の整理になりました。
「なんで今更『毛沢東』?」
って思いが習近平の個人崇拝の強化なんかに個人的にはあったんですが、「共産党独裁の維持」を軸とした歴史視野では「ありうる」んやなぁ、と。
大躍進運動とか文化大革命とか、「とんでも」政策…と僕は思ってるんですが、中国じゃそう言う整理がされてないんですな。
経済成長を担ってきた民間企業(アリババとかテンセントとか)を、なぜ統制しようとするのか、その構図も理解できます。


読み終えて、
「なんか、大変そうやな、これからも」
って気分。
引越しできない「お隣」に、こんなリスク…。
まあ、日本も大概なところはありますが(今のコロナ禍で炙り出されたりもしてる)、その比じゃないからなぁ・・・。


とは言え、日本は日本として、こう言うリスクを抱えた国とお付き合いしていかざるを得ません。
「お前がおかしい!」
とかいっても始まらないし。
バイデン政権になって、同盟国強化の流れになっていますが、当面はこちらに乗っかる形でしょうか。
+「東アジア」政策。
厄介なのは「韓国」政策。
…でもここら辺を打開できるような政治家・政党が見当たらないってのが、日本にとっちゃ「リスク」なのかも。

どなたか書いてくれませんかね。
「ネオ・ジャパンリスク」研究w。


#読書感想文
#ネオチャイナリスク研究
#柯隆

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?