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「ネットは便所の落書き」世代と思ってたんだけど、違うの?:読書録「シニア右翼」

・シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか
著者:古谷経衛
出版:中公新書ラクレ(Kindle版)

ネット右翼に近いところで活動していた経験を持つ作者による「裏切り」の書。

<私は現在革新とかリベラルとみなされている政治勢力や、与党であっても個々人の見識ある政治家にはその可能性をわずかに見出している。こういった政党の比例代表における絶対得票数は、日本において真に民主主義的自意識を持った人々が必ずしも死滅していないことを示しているからだ。この勢力を護持し、さらに発展させていくことがシニア右翼に対抗する重要な「拠点」「砦」となりうるのかも知れない。>

いや、「裏切り」かどうかは知らんけどw。



題名にある「シニア右翼」に関する分析は、作者自身の保守・右翼界隈での活動経験と分析から導き出されています。


①ネット右翼の人数は150万人〜200万人程度
②その大半はシニア層(50代以上)。20代以下は少数。
③戦後民主主義の下に生活してきた「シニア層」が「ネット右翼」に落ち込むのはYouTubeを中心とした「ネット動画」の影響
④シニア層がネット動画に影響されるのは「ネットリテラシーが低い」ことと、戦後民主主義が不徹底であった」ことによる

ここら辺の主張をザク〜っとまとめるとこんなところでしょうか。


作者自身の「経験」に根ざしてるところもあるので否定しづらい面もありますが、まあでも色々な報道記事関係から垣間見える点から推測しても大きくは変わらないのかなと言うのが僕の評価です。


(ちなみに僕自身「ライトシニア層」に含まれます。
定年退職して時間を持て余すようになってネット動画をバンバンみるようになったら気をつけなきゃな
…と思う一方で、
「所詮ネットに出てるものは眉唾もの」
って感覚があるのも確かなんですよw。
だからchatGPTの大ボラを楽しんだりもしてる。
でも世代としては少数派なんですかね、そういうの。
ここら辺、ちょっと分かんないです)



ただ本書が興味深いのはここら辺(「シニア右翼」分析)よりも、彼らがネット動画に影響される原因の一つとなる「戦後民主主義の不徹底」について論じたところだと思います。

<第四章 未完の戦後民主主義
①戦前と戦後の連続
②民主的自意識の不徹底
③戦争の反省の不徹底ー幻の戦争調査会
④戦争記憶の忘却>


これに加えて、各章の間に置かれている「コラム」

・宗教保守とは何か
・保守と右翼
・異形の「新米保守」


あたりを読むと、
戦後日本社会における「保守」のあり方の歪さ、
その中から生じた<保守本流(宏池会・経世会)>と<保守傍流(清和会)>のせめぎ合い、
アメリカに対する一方的な「思い入れ」の歴史
…あたりが浮き彫りになってきて、作者の問題意識も見える気がします。



ここら辺、僕は作者に賛同できない点もあるのですが(革新・リベラルの評価や、「移民へのスタンス等)、戦後日本政治史の認識としてはそれほど大きくズレを感じません。
作者としては、
「なんか<保守>とか自称してるけど、今の日本の<保守>ってのは、歪で全然<保守>なんかじゃないんだよ」
って言いたいんでしょうが、そこら辺は共感できるかな。(言葉の定義的には「革新」に近いと思うんですよね)



「活動家」としての古谷経衛さんについては「れいわ新選組」の党首選挙に出馬して、自ら動くことによって自分の考える<保守>の道を模索されているようです。
その姿勢は評価しても良いんじゃないかと(ネットで、匿名でピーチク騒いでるよりは)。
ただそれが大きな賛同を得るところまで行くのかどうか…。
これはちょっと分かんないですね。


#読書感想文
#シニア右翼
#古谷経衛

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