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自民党本部主催の講義がベースというのが驚き:読書録「日本近現代史講義」

・日本近現代史講義 成功と失敗の歴史に学ぶ
編著:山内昌之、細谷雄一
出版:中公新書

<本書は2015年12月から2018年7月まで、自由民主党本部で行われた「歴史を学び未来を考える本部」での講義をもとに、その内容を新書形式にまとめたものである。>


という「おわりに」の編者(細谷雄一氏)の文章にちょっとビックリ。
いや確かに「らしい」ところもないではないんだけど(冒頭の中韓の歴史認識のあり方に対する愚痴とかw、憲法改正への評価とか)、全般的には日本的保守陣営の「歴史認識」とはズレるところがあるんじゃないかなぁ…とも。
まあ、日本的保守陣営の「歴史認識」ってのは、どっちかっていうと「俯瞰図」(物語、フィクションといってもいい)的なとこが強いですからね、本書は「歴史観」を意識しながらも、実証史学の成果を踏まえつつ、アップデートした「歴史観」の構築を志向してると言えるかもしれません。
(ちなみに日本的リベラルも同様に「俯瞰図」に囚われてるし、アップデートもされてないと僕は思ってます)


取り上げられているの以下の13視点(+総論)。

1 立憲革命としての明治維新
2 日清戦争と東アジア
3 日露戦争と近代国際社会
4 第一次世界大戦と日中対立の原点
5 近代日中関係の変容期
6 政党内閣と満州事変
7 戦間期の軍縮会議と危機の外交
8 「南進」と対米開戦
9 米国の日本占領政策とその転換
10 東京裁判における法と政治
11 日本植民地支配と歴史認識問題
12 戦後日中関係
13 ポスト平成に向けた歴史観の問題


僕の個人的興味というか、認識は、

「経済的に豊かになり日本をキャッチアップした中国・韓国では、ナショナリズムが高揚し始め、結果として発展期には直視されなかった<日本>に対する複雑な感情が表面化してきている。その感情的連帯で中韓(+北朝鮮)が連携する可能性がある一方で、経済的に相対的に衰退する日本は難しい舵取りを今後は取ることを余儀なくされる」

…というところにあります。
その観点から言えば、特に「11」「12」「13」あたりは非常に参考になったし、考えさせられました。
他の視点も、全体の「流れ」に関しては知識としてありましたが、その「評価」という点では興味深いものも少なくなかったです。
(僕は卒論に「東京裁判」を取り上げてるんですが、「10」を読んで、当時の自分の思想性を突かれた思いがありました。避けたつもりだったんですがね)


日本の中高の歴史教育では日本近現代史は「駆け足」(あるいは無視w)ですが、今後の地政学的なポジションを考えると、「近現代史」こそが歴史教育の焦点となるべきだと、僕は思っています。
まあそうなるにはかなりゴタゴタしそうですが、その「ゴタゴタ」も含めて、必要なんじゃないか、と。

相対的に貧しくなることを甘受して、アメリカの使いっ走りで済ませるつもりなら別ですがね。

さて、講義を受けた自民党の先生方はコレをどう活かしてくれるんでしょう。

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