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高度に組織化された「隣組」?:読書録「中国共産党 世界最強の組織」

・中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで
著者:西村晋
出版:星海社新書(Kindle版)



「中国共産党」の組織の構成や機能について解説した本。
…と言っても、国家主席や党中央といった上部組織ではなく、地域コミュニティや職場内での共産党組織がテーマです。
また論調としては「思想」的なものは極力排しつつ、「機能」として<共産党組織>がどのようにワークしているのかを解説してくれます。
まあ、そうは言っても「思想」的なものへの言及を全くなくしてしまうことはできませんし、中国の教育機関で働いた経験を持つ作者だけに、それなりのシンパシーも働いているのはやむを得ないところでしょう。(作者自身、認識しています)
それでもできる限りフラットに書こうとしているし、その努力は報われてるとは思いますがね。
(中国で生活したり、働いたりする人には必読本かもしれません)


端的に言えば、「上意下達」の徹底のための組織がかなり末端にまで作り込まれている…と同時に、機能としては「下意上達」の機能もワークしているという感じでしょうか?
もちろん民衆の意見がストレートに党中央に反映する…というのとは違いますが、党中央が全く末端の状況を知らずに組織運営や判断をしているわけではないというのは分かります。
下部組織が地域社会の構成に組み込まれていて、社会運営や文化の醸成にも関係している…なんてあたりは、戦時中の「隣組」をイメージさせるところもあります。
あれよりは相当高度な組織化がされて入るようですが。


僕なんかだと、戦時中の日本みたいに、陸軍から来たワカランチンが、現場のこともよくわからずに「お国のため〜」とか言って、権力を振り回すようなイメージに中国共産党を重ねちゃうんですがw、(そういうところも汚職や賄賂の話なんかには垣間見えるものの)そこまで雑な組織ではなさそうです。
企業内の党組織と企業活動との関係なんか、なかなか興味深いところがあります。(そもそも党サイドの目的に「企業活動を拡大発展させる」という大命題がある)
まあ、基本的に優秀な人材を集めているっていうのもあるでしょうしね。


それでも僕自身は「中国の仕組みはうまくワークしないだろう」と思っています。
やはり「意思決定」の根幹が「独裁」(独裁者ではなく独裁党ですが)であることは、長期的には上手くいかない(少なくとも国民の幸福にはつながらない)んじゃないか、と。
でも、もしかしたら日本の少なからずの人が、こういう<末端まで実務的に意思統一ができ、俊敏に動くことができる組織>を求めてるような気がしなくもないかな。
「コロナ対策」の件とか、「ツイフェミ」の件とかを見てますとね。
「自分の考えで行動して、トライ・アンド・エラーを許容する」
…ってのは、ホント苦手なんですよね。
そういう意味では「こうなっちゃアカン」という事例として本書を読むってのもあるかもしれませんw。
「<正解>なんかない。<着地点>を模索して、トライ・アンド・エラーを重ねるだけ」
…そういう社会を目指さないといけないと思ってるんやけど。




#読書感想文
#中国共産党
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