見出し画像

忘れて、待つ。



何の予定も入らなかった休日、外出は夕飯の買い物のみである。  今日は天気にも恵まれたことだし、運動も兼ねて馴染みのスーパーがある駅前広場まで歩いて出かけることにする。真面目に歩けば20分強の距離だ。  出かけると決まれば、何より先に選ばなければならないのがカメラだ。今日の気分はさっきからモノクロだった。そこで先日無事を確認した「好光」ことHOLGAに再びモノクロフィルムを詰めた。  HOLGAの良いところは何と言ってもボディの軽さ。箱入りスナック菓子程度の重さしかない。デジタル一眼レフなどと比較してしまったらそれはもう浮力を感じるほどだ。この軽さ、仕組みのシンプルさで最低限のカメラ機能を持ち合わせていることに感動する。  


  モノクロフィルムで撮るのか、それともカラーフィルムで撮るのか。フィルムによって目線は変わるものである。 (たまにモノクロフィルムを入れていたことを忘れてカラー目線で撮ってしまうという間違いはあるけれど、それはそれで面白い。) そんなわけで、今日はモノクロ目線で世界を眺めつつ歩き始めた。 今日は撮るぞ!と張り切って出かけても何も目に留まらずシャッターを押せない時もあるのだけれど、今日はごく見慣れた場所を歩いただけなのに撮りたい景色にたくさん出会えて、スーパーへたどり着く遥か手前で12カットすべて撮り終えてしまった。歩数計アプリを確認すると2370歩。2370歩でブローニーフィルム1本撮りきってしまうとは、なんと贅沢な散歩なのだろう!

   撮り終えたフィルムを巻き取り、カメラから取り出して、写真屋さんへ持ち込んで、現像仕上がりまではさらにそこから数時間〜数日。 フィルム写真は撮影画像と対面するまでに時間がかかる。 その間に撮った記憶はわたしの中で熟成と風化を同時進行させていく。時が経てば経つほど仕上がった時の答え合わせは味わい深いものとなる。 今日撮り終えたこのフィルムも、明日の仕事帰りに写真屋さんへ立ち寄って現像をお願いしてくるつもりだ。その店ではモノクロ現像は外注しているから、出来上がりまでさらに時間がかかる。たぶん2週間近くかかるはずだ。 それだけ先のこととなると、メモでも残しておかなければ仕上がり日を覚えてはいられない。忘れた頃にやってくる仕上がりの連絡を今回も楽しみに忘れて待つことにしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?