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書記の読書記録#57「リア王」

シェイクスピア「リア王」のレビュー

訳は松岡 和子のものを読んだ。


レビュー

悲劇という表現はある種の文学的なラベルであって,歴史を俯瞰する時によくある,王位継承と権力闘争の過程が本作の流れとして見えてくる。ほんのわずかな計算違いが個人にとっては命取りになる世界だ。現代なら爆撃機で吹き飛ばされかねない世界だが,シェイクスピアの戯曲では人命の変質が丁寧に拾われる

リア王は最後まで王として,それが継承されることなく死んだ。すべてを捨てて裸になろうが気がどこへ行こうが,王は王なのである怒りと悲しみの果ての狂気それが人間の裸姿だと語るかのようだ。

冒頭より感情に支配される物語は,第5幕でとうとう極限に至る。怒りはとうとう哀しみへと変質し救済を求める姿がとにかく痛々しい。希望を見出したのも束の間,手を伸ばそうにもそれは叶わずに絶命する

これで以前から読んでいた四大悲劇を全て読み終えたわけだが,「リア王」はその中でも一つ飛び抜けてるように思う。終始感情がうねりながら,死の間際まで叫び続ける世界が,悲劇として徹底されているように感じた。

解説において,「19世紀はハムレットの時代,20世紀はリア王の時代」という言い方がされることが言及される。私が思うのは「これを音楽に翻訳するとしたらどうするのか」であった。あの叫びをどう表現するのか。

リア王のオペラ化は,20世紀後半にアリベルト・ライマンによって成し遂げられたとされる。全部聴いたわけではないが少し聴くだけで,セリー理論やトーン・クラスター,強烈な音楽であった。なるほどロマン派とかは書けなさそうな感じだ。時代が経つにつれ,「リア王」の持つ叫びの解剖がようやくされるようになりつつある,ということなのだろう。


参考→ https://blog.goo.ne.jp/kt2004rex/e/8891ffdc7096aec38ca19fd741e92809

絵画についてはこちらが参考になる。
リア王に関する絵画を紹介したブログ
http://mementmori-art.com/archives/26486332.html



本記事のもくじはこちら:


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