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書記の読書記録#98「点と線」

松本清張「点と線」のレビュー

「戦後文学の現在形」収録作品。


レビュー

一般に,社会性のある題材を扱い,作品世界のリアリティを重んじた作風の推理小説を指す。事件そのものに加え,事件の背景を丁寧に描くのが特徴。(Wikipedia「社会派推理小説」より引用)


「点と線」は1958年の作品。これをはじめとしたミステリー小説により,松本清張は現在では社会派を代表する作家に位置づけられている。作者の言葉によればこの時期で既に「社会派」という用語は定着していたようだ。


推理小説の犯罪解明法を「アリバイくずし」に軸をおいたり,リアリズムを重視する姿勢は,イギリスの作家F・W・クロフツの影響が少なからず指摘される。平野謙の解説によると,クロフツは犯人の動機付けに個人悪に限定していたところを,松本清張は個人悪と組織悪をミックスさせた,そこが新しいという。


リアリティという点で見ると,終盤数ページに全てが凝縮されているように思う。とにかく後味が悪いのである。アリバイが崩れてさも気持ち良かろうところに,畳み込むようにして真実を突きつけてくる。あんまりにも詰めすぎてリアリティが薄れた感もあるが,断定はできない,そこが苦いところだ。もともと人情の描写に定評のある作者だからこそ出来た挑戦だと思う。


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