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書記の読書記録#251「苦海浄土」

石牟礼道子「苦海浄土」のレビュー


「戦後文学の現在形」収録。


レビュー

本書は,「苦海浄土」「神々の村」「天の魚」の,いわゆる水俣三部作を全て収録したものである。

水俣病に関する活動について示されている文学作品で,複数の視点を活用することにより物語としての強度を上げている。単なる事物の羅列にとどまらない,著者の編纂の底力が見える。事実と情動のバランス感に優れる,稀有な作品であろう。

描かれる世界というのはまさに地獄の底に等しく,その中で闘う人々の美醜がつまっている。ある程度読んでいくうちに「苦海」と「浄土」が浮かび上がってくる。

三善晃「レクイエム」で感じられるような凄みがここにもある。人々の怨念は,そう簡単に晴れるようなものではない。

私個人としては,今後の文学のあるべき姿と言われたら,まず本作を挙げたい。


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