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書記の読書記録#162「星条旗の聞こえない部屋」

リービ英雄「星条旗の聞こえない部屋」のレビュー


レビュー

リービ英雄(Ian Hideo Levy, 1950年11月29日 - )は,アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー生まれの小説家・日本文学者。本名,リービ・ヒデオ・イアン。日本語を母語とせずに日本語で創作を続けている作家の一人。東欧系ユダヤ人の父と,ポーランド人移民の母親をもつ。


「星条旗の聞こえない部屋」は1992年の作品で,野間文芸新人賞を受賞している。


ジャンルとしてはハードボイルドに近い感じ。日本語を母語としないにも関わらず,いやだからこそか,日本語表現へのこだわりや愛着が感じられる文章である。それでいて過度なオリエンタリズムに陥っていない感じがして好印象。


ベンは多勢の人に見つめられることに慣れていた。1950年代,アメリカ外交官の息子として,幼児の頃から香港,プノムペン,台北など,数年あるいは数ヶ月ごとに家と国を替えながら,アジアの中に住む白人の子供として育った。(p10)


多分ベンのような人々は,街中にいるのだと思う。しかし彼みたいな人々に光が当てられることはほとんどないだろう。「しんじゅく」といい横浜といい,闇深い街に人々は飲み込まれることは避けられない。行き先も帰り道もないのなら尚更。どこでもない夜をたどるベンの冒険はまだ始まったばかりだ。


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