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書記の読書記録まとめ

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今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
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2021年7月の記事一覧

書記の読書記録#236「はじめて学ぶラテン文学史」

高橋 宏幸(編著)「はじめて学ぶラテン文学史」のレビューと読書記録 レビューギリシア文学の継承者にして、中世近世ヨーロッパ文学の母胎でもあるラテン文学を、叙事詩、抒情詩、喜劇、悲劇、風刺詩、恋愛詩、弁論・修辞学、教訓文学、書簡文学、歴史など、ジャンル・形式別区分けという斬新な視点から現代に甦らせる画期的テキスト。 ヨーロッパの文学を知るには欠かせないラテン文学についての,専門家による入門書。ジャンルに分けて解説されているので見やすいところもある。 読書記録# 1p1〜9

書記の読書記録#235「想像ラジオ」

いとうせいこう「想像ラジオ」のレビュー 「戦後文学の現在形」収録作。 レビュー第35回野間文芸新人賞受賞作,第11回2014年本屋大賞ノミネート。 いわゆる「震災文学」の一種であり,それにより評価は大抵参考にならないものとなっている。涙腺が破綻している読者があまりに多すぎる。 本作は芥川賞候補作でもあり,選評をいくつか引用する。私の感想としてはその折衷を採用したいところだ。 肯定意見:高樹のぶ子の選評「小説を書く目的として最も相応しくないのがヒューマニズムだというこ

書記の読書記録#234「色彩心理学入門」

大山 正「色彩心理学入門」のレビューと読書記録 レビュー色彩心理学という学問の歴史について書かれたような本。ニュートン「光学」とゲーテ「色彩論」を起点として,さまざまな理論が登場する。色彩工学の知識の補完に使える本。 読書記録# 1p3〜52 ・ニュートン「光学」・プリズムと七色・混色・色円・ゲーテ「色彩論」・明順応と暗順応,残像と色順応・色の対比・色覚異常の化学者ドルトン・イシハラテスト # 2p53〜117 ・ヤングの色覚説・ミュラーの特殊神経エネルギー説・ヘルムホ

書記の読書記録#233「図解 相続税法「超」入門」

税理士法人 山田&パートナーズ(監修)「図解 相続税法「超」入門」のレビューと読書記録 レビュー「所得税法」と同じシリーズ。相続税もFP3級の範囲なので軽く読んでおいた。 読書記録# 1p1〜60 ・相続財産・相続人,法定相続分・遺産分割・遺言・相続税の計算 # 2p61〜215. ・財産評価・土地の評価:路線価方式,倍率方式・家屋の評価・株式の評価・相続税の申告,納付・物納・贈与税・暦年課税制度,相続時精算課税制度・事業承継税制 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#232「寝ころんで読む金匱要略」

入江 祥史「寝ころんで読む金匱要略」のレビュー レビュー金匱要略とは,傷寒論と同じく三大古典に含まれる書物で,主に慢性疾患についての各論で構成される。 本書は口語調とはいえ読みやすい訳ではないのだが,元の書物が難解なのでしょうがない。そもそも熟読するほどの価値があるのかが分からないが,日本漢方では金匱要略が出典の方剤が多く採用されていることを考えると勉強しておくべきなのだろう。 より詳しい解説書として,大塚敬節「金匱要略講話」を挙げておく。 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#231「槿」

古井由吉「槿」のレビュー 「戦後文学の現在形」収録作。 レビューただただ退屈だった。 本作に込められた手法について,松浦寿輝による解説に詳しいが,果たしてこれを長編でやる意味はあるのか疑問。一種のリアリティについては同意するけれども,やはり簡潔にまとめないと輪郭が薄れてしまうと思う。むしろ「輪郭のボヤけ」こそ本質なのかもしれない,それにしても退屈なのは変わらない。 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#230「生命保険入門」

出口治明「生命保険入門」のレビューと読書記録 レビューライフネット企画株式会社の設立者で現立命館アジア太平洋大学学長である著書による,専門分野への入門書(FPでも十分上級レベルか)。生命保険商品の特徴や法制度などの解説。生命保険会社に関しては1章割いて詳しく説明している。 読書記録# 1p1〜75 ・簡易保険の存在,一社専属制,1940年体制・私保険と社会保険・リスクマネジメント理論・米国の401(k)プラン・収支相等の原則,大数の法則・予定利率,予定死亡率→純保険料・3

書記の読書記録#229「杳子・妻隠」

古井由吉「杳子・妻隠」のレビュー レビュー「杳子」は第64回芥川賞受賞作。 ひたすら陰鬱な作品で,メランコリーが全体を支配しているのが特徴。70年代「内向の世代」の代表作で,ある種の純文学の王道だろう。 今にも落ちそうな危うさで,といっても落ちたからといって何事も起こりそうもない,といった徒労。閉ざされた世界における不安は,現代でも十分通じるところがある。 「病的」というのを書こうとすると大抵は意欲作扱いされると思うのだが,本書はそれを普通にこなしてしまった。更に,本

書記の読書記録#228「アーリア人」

青木健「アーリア人」のレビューと読書記録 レビュー「20世紀にジョルジュ・デュメジルが三機能仮説として提唱したインド・ヨーロッパ語族の宗教を,イラン系アーリア人だけに限定し」た本。古代オリエントとイスラーム時代の間の動きについて。 読書記録# 1p6〜89 ・イラン系アーリア人:騎馬遊牧民,定住民・キンメリア人・スキタイ人・サカ人・サルマタイ人の覇権・アラン人・フン族の侵入・パルティア人,アルシャク王朝・ミフルダート2世・ミスラ神崇拝,ズルヴァーン主義・サカ人のインドへの

書記の読書記録#227「図解 所得税法「超」入門」

山口 暁弘(編著)「図解 所得税法「超」入門」のレビューと読書記録 レビュー特に簡単でも難解でもなく,税理士やファイナンシャルプランナーなどに対する標準的なテキストだと思う。 読書記録# 1p1〜106 ・納税義務者,納税地・所得税の計算・収入,必要経費・減価償却・利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,譲渡所得,一時所得,雑所得,山林所得,退職所得 # 2p107〜220 ・所得の金額の総合・損益通算:不動産所得,居住用財産の譲渡損失・損失の繰越し,繰戻し

書記の読書記録#226「ビジュアル医学全史」

Clifford A. Pickover「ビジュアル 医学全史」のレビュー レビュー休憩として少しずつ読み進めた。現代の医学体系が,過去の人々の探求による賜物であることを改めて実感する。内容が西洋かつ近代に偏っているのはしょうがない。 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#225「よくわかる初等力学」

前野 昌弘「よくわかる初等力学」のレビューと読書記録 レビュー説明のくどさが本書(本シリーズ全般?)の特徴である。特に「作用反作用の法則」「慣性の法則」に対しては誤解を生まない配慮が過剰なまでになされている。砂川の物理の考え方シリーズやファインマン物理学と同様,読み物として扱うのが妥当か。 必要な数学についても付録で詳しく説明されており,本書のみでも学習できるようになっている。全体として平易な内容を扱っており,本来なら高校物理にこれくらいは求めてもいいのではないかと思う。

書記の読書記録#224「グノーシスの神話」

大貫 隆「グノーシスの神話」のレビューと読書記録 レビューグノーシス主義(Gnosticism)とは,1世紀に生まれ,3世紀から4世紀にかけて地中海世界で勢力を持った宗教・思想である。グノーシスは,古代ギリシア語で「認識・知識」を意味し,自己の本質と真の神についての認識に到達することを求める思想である。(Wikipediaより 一部省略) グノーシスというのは,キリスト教から見れば手強い異端である一方,マンダ教やマニ教など東方宗教においては必須の要素と言える。 本書はグ

書記の読書記録#223「ブリキの太鼓」

グラス(訳:池内紀)「ブリキの太鼓」のレビュー レビュー作者は1999年のノーベル文学賞を受賞しており,その理由は「遊戯と風刺に満ちた寓話的な作品によって,歴史の忘れられた側面を描き出した」としている。 本作は,『猫と鼠』(1961年),『犬の年』(1963年)と続く,いわゆる「ダンツィヒ三部作」の最初を飾る作品であり,第二次世界大戦後のドイツ文学における最も重要な作品の一つに数えられる。 筋としては,精神病院の住人である30歳のオスカル・マツェラートが看護人相手に自ら