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書記の読書記録#229「杳子・妻隠」

古井由吉「杳子・妻隠」のレビュー


レビュー

「杳子」は第64回芥川賞受賞作。

ひたすら陰鬱な作品で,メランコリーが全体を支配しているのが特徴。70年代「内向の世代」の代表作で,ある種の純文学の王道だろう。

今にも落ちそうな危うさで,といっても落ちたからといって何事も起こりそうもない,といった徒労。閉ざされた世界における不安は,現代でも十分通じるところがある。

「病的」というのを書こうとすると大抵は意欲作扱いされると思うのだが,本書はそれを普通にこなしてしまった。更に,本作が問うのはごく一般的な「存在の境界線」であり,読者の平衡感覚すら奪ってしまう。果たしてどこからがメタ視点なのだろう。


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