【人間は思考する建築である】芥川賞受賞『東京都同情塔』を読んだ
芥川賞受賞の九段理江さんの『東京都同情塔』を読んだ。
以下あらすじ
この本、話題です。
この本は全体の5%をAIが書いたことでX上で話題になり、賛否両論を巻き起こした問題作だ。見ての通りそれで痛烈に批判している人の9割が本書を読まずに批判しているわけだけど、そんな中「AIで書かれたことが不快な人にこそ読んで欲しい」という書き込みがあり、なんだか惹かれてしまって読むに至った。
本書を購入するために蔦屋書店に足を運んだのだけれど、なんと本が売れ切れていて購入することができなかった。正直新刊を買うために本屋さんに行ってそれが買えないということが中学生以降は体験していなかった為本当にびっくりしてしまった。それだけたくさんの人が本を手に取っているのだろうと想像する。
結論、けっこう面白かった!
個人的には50ヘルツより面白く、汝星のごとくの方が面白かった。
東京オリンピックが2020年に強行された別世界線で、日本の倫理が倒錯していく空気の変容にどきまぎした。(公式の紹介では日本人の欺瞞を暴く現代版バベルの塔みたいな触れ込みだった気がする)
この物語の中では「犯罪者は恵まれない出自から犯罪者になってしまっただけなので、恵まれていたから犯罪者にならずに済んだみなさんは彼らを労り、同情し、慈しむ必要があるのです」というなかなかハードな倫理観がまかり通っているのだけれど、理屈としては一つ通っていて、今SNSで蔓延しているポリコレなどを見ていると、ひょっとしたらこういう世界来ちゃうかも…と思わせる妙なリアリティがある。
ただ生成AIの予言の書と言われると全然そうは思わなかった…??
そんなシーンなかったくない?え?本読んだ?
ChatGPTみたいな生成AIは確かに登場するけれど、せいぜい現代のAIレベルの活用のされ方だし、本筋とはあまり関係ない…物語の小道具として登場するレベルなのでは?と思ってしまったけれど…。
主人公がガチガチの職業人間の小説を久しぶりに読んだので新鮮だったし、なんとなく建築士の脳内って大なり小なりこんな感じなのかも
…と思って面白かった。
なぜかはわからないけど物語の中に「いい人」が一人も出て来なかったのも印象的だった。それが作者の描来たかった人間らしさなのかもしれないし、人が人である証なのかもしれないと思った。
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