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なぜiPadの動画は炎上したのか?

朝起きたらiPadの新しい動画が大炎上しているのを見つけて目が覚めた。

動画を見てみると、様々な製品がプレス機の上に乗っており、プレス機がゆっくりと作動してピアノやゲーム機や楽器がみるみるうちに押しつぶされていき、ペシャンコになったかと思いきやそれがおもむろに開かれると史上最も薄型のiPadが出来上がりましたー!という内容だった。

これに対して日本のX上では「ジョブスが泣いてる」とか「Appleも終わったな」といった反応が見られて、たしかに炎上しそうだなぁ、というのは共感だった。


…日本だけじゃね?


でも炎上しそうっていっても日本でしか炎上しなさそうだし、いくら日本人の大半がiPhoneを使っているといっても、この動画は日本人に向けて作られたわけではない。それにこの動画を見て怒り出す人が一定数いることも当然Appleは織り込み済みのはずだ。

はずなのに、そこまで考えが及ばずに海外で作られた海外の作品を日本人の価値観のみで評価して感情的になっているのがすごく残念だし、短絡的なんじゃないかなと思ってしまった。とにかく自分の快/不快だけで脊髄反射で怒ったりするのもうやめませんか。


とはいえね


一方で日本人が(海外の反応を僕は知らないけれど、この炎上具合は非常に日本的だと僕は感じた)この動画に激しい嫌悪感を抱く気持ちもわかるような気がした。反応を敷衍すると

1.他のプロダクトを破壊して自社の製品の優位性を誇示する表現が下劣
2.道具にプロフェッショナルの心を感じる文化があるのでそれが踏みにじられたと感じる
3.モノを無意味に破壊するのを見ると心が痛む

特に2番の、ギターやカメラ、絵の具といったクリエイターのための道具はそれそのものにクリエイターの誇りがこもっていると我々日本人は思っているので、国旗を燃やす行為がその国に対する侮辱になるのと同じように、ギターをプレス機でぶっ潰すとギターで創作している人に対する攻撃的な表現になるのだろう。(でもギターリストもギターを壊したりするよなあ?テニスプレーヤーもラケットを破壊して日本人からブーイングを受けたりしているけれどあのあたりも"お国柄"なんだろうか?


それでも我々は


CGをメインに用いずにあり得ない規模の撮影をやるような、いわゆる"マジでやってる"系のCMではすごいと思ったし、純粋にどうやって撮影したのか気になったという意味では惹かれる動画だった。(ミステイクするごとにまたすべての道具を手配して並べたのだろうか?)また、嫌な思いをした人や怒り狂っている人ももれなく「iPadってあんなに薄型になったんや…」という感想を持ってしまったのは間違いないと思う。

それにあの動画を初見で見始めたら我々は(あなたも)最後まで観るのをやめられなかったはずだ。その時点で、その結果どのような感情がもたらされたとしてもある種それは我々の敗北で、注意経済と言われる現代において我々は自分の時間を消費して「みて」しまったのだ。だから結果的に我々が怒ろうが、iPhoneの不買運動をしようが、感情を動かされて色々とXに書いている時点でAppleの思う壺なのだ。おつかれさまでした。

前述の通り、Apple(Apple社のブランディング部門にどれだけの頭脳が集まっているのだろう?)はこの動画が一部で批判の対象になることは織り込み済みに違いなく、その批判も含めて新製品の認知拡大に一役買うと読んでリリースされているのだろう。少なくとも炎上が認知拡大のために最も手っ取り早いのは我々が一番わかっている。この辺りが僕の結論になる。


よいこちゃんではいられないと言ってしまえば、あるいはそれまでなのかも知れない。iPadは高いので買わないです。


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