見出し画像

同窓会のなんだかわからん面々

6月に私の高校の同級生の同窓会を予定しています。私がなぜか幹事役。
最初は全員が還暦になった年に開催と思っていましたが、実際は現役で休めないという人が多くあり、では65歳定年ということで全員が66歳になった年の6月6日にやろうと計画し、それが今年です。

かつては往復はがきとかで連絡もしていたのですが、お金も手間もかかるので昨年の春からメールアドレスを調査(高校同窓会の会報にも載せてもらったりして)し、だいたい200人の同級生の内123人のアドレスをゲット。中にはメールしないとか案内不要という方もおられたので、それ以外の方ですが。
そりゃあもう50年前の人に会いたくないとか、あの時嫌な思いをしたので…とか、色々おられるのが普通ですからね。

で、ただ今2月中旬を締切として先週から123人に対してメールを送り、今の所25人くらいから参加の返信が来ています。
アドレスわかる方の内、広島に在住の人は2割程度で県外が大半ですから、出来れば送った半分くらいの参加があればなと思いますが、どうなるでしょうか。

ただ辛いのは、既に11人の物故者がいることでした。
昨年は二人旅立ちました。そのうちの一人、1月に急逝した友人は小学校から高校まで同級生。
先週日曜日が1周忌で、お墓参りさせてもらいましたら、お墓の前でご家族にばったり、法事への参列は控えお供えをお渡ししましたら、代わりということではないですが、形見分けでネクタイとかが何本もあり「一つ思い出がわりに」と渡されました。それがこちらのネクタイ

彼はずーっとサッカーをしていて、体育の教員でもあったし、県のサッカー協会の役員でもあったので、JFAのマーク入りのネクタイも持っていたようです。偲びつつネクタイを結びました。

さて先日から絲山秋子氏の「神と黒蟹県」を読んでおりますが、これが抜群に面白いのです。一種のマジックリアリズムなんでしょう。

その中の「なんだかわからん木」という短編の主人公は、50代の営業所長の女性「十和島絵衣子」さん。その中にこんなのがあって、「そうだよね」と思った次第です。


「70代、80代ともなれば老いというくくりに収斂していくのかもしれないが、還暦前後の男性というものは、実に多様である。同窓会に行けば若作りでてかてか光っている人もおじいさんみたいにすっかりしぼんでしまった人もいる。決して中身を見てはいけない玉手箱みたいな人、埃を被った貯金箱みたいな人、ガレージの脇に放置されたソファみたいな人、ひび割れた長靴みたいな人、床の間の壺のような人もいる。
女友達もまた多様である。スピリチュアルや陰謀論の世界に旅立った人もいる。ヴィーカン、環境保護、動物愛護の方面から過激さの渦に身を投じた人もいる。言葉が通じなくなり、たくさんの別れがあった。それはなりたくない自分への拒絶だったのかもしれない。パラダイムシフトを経験した人々はまるで外から窓を開けてもらったようなことを言う。窓の外側には引き手もハンドルも存在しないのに。いずれにせよ、かれらは他者を人間として見ることはなくなってしまった。
それとは別に、にこにこしていても、のほほんとしていても鎧がどんどん厚くなる人がいる。言じられないほどパワフルでとてもついていけない人がいる。やはり言葉が通じなくなり、たくさんの別れがあった。
それでも何かあるというのはいいことだ。わたくしには何もない。味もそっけもない。趣味すらない。
もとからスカスカだったわたくしのナワバリはさらに閑散としている。殺伐として乾いている。賑わいのある往来で自分がマジョリティであると言じていた頃は幸せだった。そのなかでサイレントな存在として、なにも言わなくてもわかってもらえると思っていた時期は幸せだった。しかし大変に愚かでもあった。そこは悪ふざけと露悪とハラスメントへの許容に満ちたホモソーシャル大陸であった。二度と戻りたくはない。」

おお、6月の同窓会はこういう顔ぶれなんでしょう。

「なんだかわからん木」は庭の一角にリャマという木がニョキニョキと生えて、それを片付けるというものでもあるのですが、そのリャマ(マジックリアリズムだから架空の木)は、燃やすと良い香りがするということがわかるのです。

多分同窓会の同級生は卒業してからの50年、様々なことがあっただろうし、あの頃の彼ら彼女らではないでしょう。顔を合わせても大半の人は「これだれだっけ?」という「なんだかわからん」状態だと思います。
66歳で会うのですから皆、社会から「ご苦労様でした」とはじき出された枯れ木ともいえますが、絲山氏が書くように「愚かなホモソーシャル大陸」から抜け出せた状態でもあります。

巨大な木もあれば、小さな木もあるし、いまにも朽ちそうな木、あるいは花を咲かせたり、実を実らせている木もあるかもしれません。
でも見た目ではなく、それぞれを燃やすと、それぞれの生き様の良い香りがするのだろうと思います。

当日は余興として全員のフォークダンスを予定していますが、キャンプファイヤーもしたい気分です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?