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虫除けスプレーの誓い

 彼女は都会の中でふいに公園や森に足を踏み入れる度に、本来手にしているべき虫除けスプレーが自宅の化粧ケースの奥底に仰々しく収納されたままになっていることを思い出した。自らの行動を正確に予測できなかったことを恥じて、今後悔い改めることを誓うと、それを察した何かしらの虫がその白い腕を刺して膨らませ、誓いの証とした。

 彼女から話をきいた帰り道、そもそも家に虫除けスプレーを持ち合わせていないわたしは、薬局での購入を胸に誓ったが、書面にしなかったので例に漏れずに買い忘れた。しかし幸いにもこの誓いは虫たちに伝わることがなく、わたしの腕は白いままだった。否、虫たちは、わたしの誓いの薄っぺらさをしっかりと見抜き、ともに電車に乗ることをやめたのだ。

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