#114 空と君のあいだに
暑い夏だった。
訃報はインスタのDMに入った。
友人からだ。
「お前の親友が亡くなったよ。奥様に連絡してあげて」
何を言っているんだ
意味がわからない
離れていても
何年も会っていなくとも
ときどき空を見上げ
日本海を眺め
俺とお前はこうして同じ空と海でつながっている
同じ教育に身を捧げる者として
同じ志をもち同じ景色を見ている
いつもそう思っていた
彼の心は病んでいたのだろうか
家族の心中を察すると胸が痛む
訃報を受けた翌日
車で海沿いを4時間走り続けた
中学・高校時代を一緒に過ごした数々の光景が蘇る
涙が止まらなくて途中で浜辺に停車した
海は“べた凪”
こんな穏やかな日なのに心は凪じゃない
部活後の帰りによく一緒に行った岬に立ち寄った
陽の光がどんどん水平線に近づいている
陽はまた昇るけど、お前は沈んだままか
曖昧な喪失感のまま通夜に参列
亡骸に対面してもなお「おい、嘘だろう?」と思った
「なーんちゃって!といいながら起きろよ!」
奥様が深々と頭を下げ
「わざわざ・・・・ほんとに、ほんとうに・・・・」
「なんだかなあ・・・・」
お互い言葉にならない
かける言葉が見つからない
あれから夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬を迎えた
師走を迎え、奥様へ向けてようやく手紙を書いた
心の整理ができたわけじゃない
結婚披露宴のとき、友人代表のスピーチをした
爆笑としんみり話で祝福した
共に喜び
どこまでも幸せが続くようにと願った
いるべき人がいなくなった
あるべきものが無くなった
家族にしか分からない曖昧な喪失感もあるだろう
ずっと手紙を書けずにいた
推し量っても、慮っても、上っ面の慰めにしかならないのでは?
でも年を越さないうちに・・・・
手紙を書き始めたら、つい思い出ばかり
「遺された家族」という言い方はしたくない
未来へ向け
彼の思いを次代へつなげていこう
あいつはもういないけど
奥様は自分の幼なじみ
出会いなおし、結びなおしをしよう
いつかまた貴女と会うときは笑顔で