見出し画像

#24 読書日記03 人は不合理な生きものなのか?

◆人は必ずしも合理的に行動するわけではない

経済学者のダニエル・カーネマンが、このことを「行動経済学」で論じて2002年にノーベル経済学賞を受賞した。

その後2017年にリチャード・セイラーが同賞を受賞したことによって、再び行動経済学に注目が集まった。

経済学は古典から最新まで様々な理論があるが、それをもってしても人間の行動は奇妙であり、理論どおりには動かない。

チンパンジーに近い種の私である。

その脳で考えるには限界もあるが、少し考えてみようと思う。

マーケティングやマネジメント理論もいろいろあるが万能ではない。

人は様々な外的要因によって、不合理、非合理な行動を取る。

行動経済学が、人間の心の動きを切り口に論じたことによって、経済、経営、マーケティングなどの分野に新しい風が吹きはじめているのかもしれない。

知らんけど(一度、この言葉を使ってみたかった・・・・)

◆損得勘定の外

経済学論的に考えて「人は常に正しく損得を勘定し、その結果最も利益を得られる決断をする」という理論を展開しても、現実の人間は合理的に動いてない。

「それはなぜか?」という問いを立てるのが学問研究だ。

自分自身の行動を振り返ってみると、確かに筋が通っていない不合理な行動をとっていることが結構ある。

人間ならではの「心」の作用が深く関係していて計画どおりにいかないことは案外多いものだ。

やるべきこと、やめるべきことは例をあげるときりがない。

衝動買いや無駄買いは言うに及ばず、勉強もしかり、運動やダイエット、読書、部屋の片付け、暴飲暴食、偏食、早寝早起き、一日一善、妻の話をちゃんと聞くこと・・・・などなど。

「強い意志をもって取り組まなければダメだ!」と心に誓い、計画を立てたにもかかわらず、余計なことに時間を費やし、やるべきことをやっていないということが、私はよくある。

従来ならこれを「意志が弱い人」という言葉で片付けてきたが、それではいつまでたっても状況を変えることはできない。

そもそも、明確な動機付けを持つとか、切羽詰まった状況にならないと意思は固まらないものなのか?

行動経済学や消費者心理学だけではなく、一般的な心理学、教育心理学でも、人の「認知行動」が対象となる。

望ましい行動を取ることができるようにするためには、心に対してどのようなアプローチが必要なのだろう。

◆心が弱いのは、心の責任?

大学の教職課程や演習科目で「習慣の確立」の重要性を説いている。

とりあえず、自分のできなさ加減を認めつつ、克服してきた体験談や、各種の事例を話したりもしている。

学生からは、「わかっているんですけど、できないんです」と嘆きの声も聞こえる。

最後は「意志が弱いんです」で片付けてしまう学生もいる。

「どうせ・・・・」
「だって・・・・」は悪魔の呪文だ。

◆行動を見える化する

第一にやることは行動の「可視化」である。

心で思うだけではなく言語化することで、自分を丸裸にすることが第一歩だろう。

やってしまっている行動
やり過ぎている行動
なかなか着手できずにいること
不足行動
邪魔をしている行動
などを洗い出す作業だ。

過剰な行動を抑止するためには、まずその事実を受け止めなければならない。

認知行動療法では、よくノートづくりやボードに書き出す方法が用いられている。

勉強や日常における改善や目的・目標設定の可視化をしたうえで、「マンダラチャート」や「行動マトリックス」「時間管理マトリックス」を用いて、行動を具体化する方法が有名である。

自分の邪魔をしている自分の行動を具体的にあげて自覚することがポイントになる。

書き出していくうちに、無駄な時間が多いことに気付く。

ただし、あまり自分に鞭打つことをやっていると自己嫌悪感が強くなってしまう。

人生には心の余裕も必要だ。

そう「余白」だ。

私は、余白どころか「隙(すき)」がたくさんある。
隙だらけの人生・・・・・

若者たちは時間をどう使っているのか。

10代~20代の若者のSNSの読み書きや、YouTube等の動画視聴、ゲームなどに費やす時間は年々増加傾向にあるという。

1日平均5時間というのはかなり多い。

ネット上のアルゴリズムと認知バイアスに支配され、デバイスの奴隷になる恐ろしい時代だ。

昼夜逆転、睡眠リズム障害から不登校に至るケースもある。

だからといって、100%やってはいけないという強制的な行動規制では実効性がない。

目的は「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のバランスを自分でコントロールする力を身に付けることだ。

勉強、読書、討論など知的生産活動に充てる時間が0~1時間程度という子どもがいた場合、あなたが親なら、あるいは教師なら、あるいは近所のお節介オジサン、口うるさいオバサン、はたまたチンパンジー先生の私だったらどう対処すればよいのだろう。

いきなり2時間、3時間も勉強するという負荷をかけるのはおそらく長続きしないだろう。

人類が歩んできた3日坊主症候群の典型的な例だ。
それは、チンパンジーの私でもわかる。

それよりも、毎日の5分間~10分間の短時間勉強、短時間読書のほうが確実だ。

学生たちに対しては、具体的な方法の例を講義で示したが、チャート方式やマトリックスの手法は、図書資料やネットに各種の事例が載っているので、自分なりに探究せよ、と伝えた。

また、教師になるなら、教授法、学習法の理論などテクニカルな部分だけではなく、学習者の心にどう寄り添うか、心理面の探究も必要だろう。

学生諸君、共に学ぼう。