本やビデオで学ぶ人気バンド再結成術 ⑦METALLICA
ロック誕生以降、数多くのバンドが解散~再結成を行ってきているが、成功するためにはノウハウが必要。
私も過去にロックバンドのマネージメントをし、数年後に再結成も担当、様々な問題・課題を解決・克服して幸いにも成功を手に入れた。
その時に参考になったのは私がこれまでに見て・読んでいたビデオや書籍であった。
ここではバンド再結成を担当する読者に向けて、私が有益だと感じた情報をお届けしたい。
この作品達は・・・
今回はメタリカのドキュメント2作品を紹介したい。
メタリカが1983年にデビューし、1991年に発表した5作目のアルバム「METALLICA」(通称「ブラックアルバム」)の制作過程を撮影したドキュメント作品と、ブランクを経て2003年に発表された8作目「セイント・アンガー」のレコーディング・ドキュメント作品。
アルバム「METALLICA」はバンドとして初めてビルボード1位を獲得し、アルバムからのシングルカットも多数発売。
マスターピースとして現在までに全世界で3000万枚を売り上げている
どちらもサウンドプロデューサーとしてボブ・ロックが参加しており、この2作品を観る事でバンドが経験と人気を重ねていった変化が感じられると思う。
このビデオから学ぶべきポイント①は・・・
まず学ぶべきはボブ・ロックのプロデュース能力である。
「ブラックアルバム」の録音中、いいドラム・テイクが録れず腹を立てるドラムのラーズがスネアにスティックを突き刺す。
普通ならスタジオ中に緊張が走る。 もし、この場面を収める役目が読者だったらどうする? 上手く叩けないのはドラマー本人なのに、その本人が感情剥き出しにキレているという不条理さ。
”なだめすかす”か、自分も感情のままに声を張り上げるのか?、何も言えずに固まってしまうだろうか?
ボブは感情を抑え冷静に「ブレイクしよう」と対応する。
これはきっと過去にも同じような場面を経験していて、こういう人間性のミュージシャンの場合、どう対処するのがベターなのかを知っているのだろう。
私も過去にドラムの音作りでドラマーとプロデューサーが揉め、ドラマーがスタジオを飛び出した場面に遭遇したことがあるが、間に入って解決しようなどミジンも思わなかった。
なぜなら、私はかける言葉を持っていなかったし、私が間に入る事をドラマーもプロデューサーも望んでいない、いや、”望む”というより”考えてもいない”とわかったからだ。
だが、こうしてメンバーと正面からぶつかりながらアルバムを一緒に作るプロデューサーがいるということがバンドにとってもとても大事な事だ。
ここはバンド再結成術を伝えるところなので、あなたがバンド再結成を請け負った関係者だとしてお伝えするが、こうした音楽プロデューサーをレコーディングにキャスティングできることが請け負った”アーティスト側のプロデューサー”の仕事なのだ。
メンバーから疎まれたり、拒まれたりするかもしれないが、成功させるために必要だと思えばどうにかしてキャスティングさせる方法を考えるべきだ。
あなたが関係者だったら、『もし、このアルバム制作にボブ・ロックがいなかったら、もしくはバンドメンバーだけで進めていたらどうなっただろう?』とイメージしながらこの作品達をみて欲しい。そうすれば、いかにボブ・ロックの存在が大切だったかを理解できるだろう。
このビデオから学ぶべきポイント②は・・・
このビデオは現在、Netflixで視聴できるので、ぜひ見てもらいたい。
本作は「メタリカの真実」は2003年に発表したアルバム「セイントアンガー」のレコーディング時期に撮られたドキュメントだが、単なるレコーディングの記録ではない。
その当時に至るまでのメンバーのクビ・脱退・加入などの人間関係のもつれ、結婚し家庭を持ったことによる私生活の変化とバンド活動のバランス、バンドを優先するメンバーと家庭を優先するメンバーの考え方の違いなど、バンドがデビューし、順調に売れ続けてゆく中で発生するさまざまな問題をぶつかり合いながら、時間をかけて解決して前に進むメタリカの姿が記録されている。
他の記事にも書いたが、アメリカではアーティストに主導権がある。自分達がマネージャーを雇い、レコード会社と契約するので、バンドがノーと言ったら絶対ノーである。日本のようにプロダクション、事務所と呼ばれるところに所属していないので(要る場合もあるが)、全責任が自分達である。言い換えれば、自分達で何でも決められるということだ。
当初、このビデオはレコーディング・ドキュメントとして撮り始められたと思うが、序盤からバンド内に問題が起こる。
14年ベースを務めたジェイソン・ニューステッドが脱退。ヴォーカルのジェイムズのアルコール問題で入院などによりスケジュールはどんどん後ろにズレて行く。 ズレるということは、ドキュメントの撮影期間も延びるので、そのコストも増えて行く。
では、この場合、増えたコストは誰が負担するのか?メンバーである。彼らは出資した分、権利も保有するのでドキュメントが売れれば印税が入ってくるが、レコーディングがどこまで延びるのか?、撮影費用はいくらかかるのか?、全くゴールが見えない中を突き進むメタリカをぜひ見て欲しい。
やはり敏腕プロデューサー ボブ・ロック
両アルバムともサウンド・プロデューサーはボブ・ロック。
ドキュメント「メタリカの真実」の序盤のスタジオではジェイソンが脱退したため、ボブ・ロックがベースを弾いてレコーディングが進むが、この辺りの彼の発言がかなり重要である。
メタリカといえばヘヴィーなリフであるが、レコーディング中、このリフを完成する瞬間が記録されている。それはジェイムズが弾いたリフをプレイバックで聞いている時にボブが口頭でリフの細かいアクセントを変え口ずさむシーンがある。リフはほんのわずかな違いでキャッチーさが生まれるが、まさにこの瞬間に曲の骨子となるリフが誕生していた。
また、ジェイムズが歌を入れている時に、ボブは歌のアクセントが平坦で、このままだとビートを感じないと思ったんだろう。 ジェイムズの歌入れ中にボブが歌のほんの一部アクセントを変えて口ずさむとジェイムズがすぐさま反応。ビートに乗った抑揚のついた歌に変わった瞬間である。
こうした一瞬の細かいアドバイスをいくつも積み重ねることで一見、凡庸な曲でも見事に抑揚のついた曲に生まれ変わることができるのである。
それは、時間をかけて変化させる場合もあるだろうが、紹介したようにほんの一瞬、ふと口ずさむだけで曲の印象を大きく変えることができるのである。そのアイディアを思い浮かべることができるのがサウンドプロデューサーの仕事である。
もちろん楽曲の魅力としてはメタリカのメンバーの演奏力、作曲能力によるところが大きいが、出来上がってきた音にボブが出過ぎたところは削り、平坦なところを引き出すことでより楽曲の魅力が増していく過程をこのドキュメントは記録している。
見どころは…ケンカ?
どちらの映像も同様にレコーディング中に何度かはスタジオ内の空気が悪くなる。
良いものを作ろうと努力するほど、見えない道を突き進むので行き違いもあるだろう。だが、キャリアを重ねてゆけばよりスマートに問題に対峙できるのかと思うとそうでもない、「メタリカの真実」はメンバーがアホなのかともうほど、感情むき出しに怒り、騒ぎ、大金を動かす。
スタジオを飛び出したメンバーが帰ってくるまでに時間がかかりすぎる!(詳しくは作品を見てほしい)
各自の家と思われる場所でも撮影されているが、どこも成功者の住まいにふさわしい部屋である。
人間関係に悩み、曲作りで揉め、メンバー探しで大金を使う。日本のスケールでは考えられないドキュメントをぜひチェックして見てほしい。
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