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ウサギに学ぶ、究極の生き方(奄美大島のコト:VOL4)

(前回からの続き・・)

奄美の山奥深くをジープで見学するツアー、
そこにはこの島にしかいない
「短い耳」を持つ不思議なウサギがいるという・・
そんな話の続きから。

――

ガイドさんが話すそのウサギは、
「アマミノクロウサギ」という名で
奄美大島だけに生息し、
今は国の天然記念物らしい。

耳は短く、跳ねもしない。
ウサギらしからぬ、ウサギ。

そのウサギにまつわるストーリーに
私の心はくぎ付けになった。

なんとこのウサギ、
500万年前から一切姿かたちを
変えていない、ウサギの原種だという。

500万年・・・
一切、変わらない・・・

かたや、ここにいる私たち人間は
火も扱えない猿だった時代から
農業・工業・ITの進化を経て、
今ここにいる。何なら自分たちに
変わって働くAIまで作り出している。

こんな離島の山奥でさえ、
最新スマホでこの瞬間の感動を撮った写真は
ネットを通じて全世界をかけめぐる。

進化しない道を選んだウサギと、
進化し続けることを選んだ人間、
ふたつの種のコントラストが
とにかく強烈だった。

ガイドさんは運転しながら話を続ける。

私は、暗闇の中でジープの車体に
揺られながら、その二者の選択の違いに
ただただ思いを馳せた。



さらに解説は続いた。

聞けば、閉ざされた土地に住む
ウサギたちには、大きな天敵もなく、
生き延びるための変化は不要だったと
一説には言われているらしい。

なぜなら、アマミノクロウサギは
奄美大島の生態系のTOPであるハブと
驚くべき共存の道に進んだからだった。

変温動物のハブは、南の島といえども
夜間や冬の寒さには弱い。そのため、
アマミノクロウサギのほら穴で共生し、
暖をとるという。

小さなほら穴で、
アマミノクロウサギとハブは
時に一緒に生活をするという、
ちょっと想像つかない共存スタイルが
アマミノクロウサギにとっての生存戦略だった。

ハブたちは、暖をとらせてもらう代わりに、
ウサギたちの安全を保証する、
そんな交換条件なのかもしれない。

人間のように進化をとげなくても
「あり方を変える」ことで、
500万年もの間、生き続けている
アマミノクロウサギの姿は強烈に
目に焼き付いた。

ツアー中に、何度も遭遇したその姿は
本当に短い耳で、跳ねることなくトコトコと
私たちの前を過ぎ去っていった。



じんわりとくる感動を抱えながら、
車を1時間ほど走らせた頃だろうか、
山頂近くでこはるちゃんのパパが車を止めた。

エンジンを止めて、
車のライト消した。

あたり一面は真っ暗。
木々が生い茂り、生き物たちの息吹が聞こえる。
そこでは、普段はわがもの顔で過ごしている人間も、
完全にアウェイだった。

頭を上げると、
木々の間から見えるあまの川。

星だと思っているその一部には、
夜空を舞う蛍も混ざっているという。

都会だと、こぞって見に行く
貴重な自然がそこに普通にあった。

何万年光年も先にある天の川と、
目の前の蛍の明かりが入り混じる不思議な光景。

壮大な自然とは、
ただここにあるだけでこんなにも
私たちの心を打つもんなんだ・・

アマミノクロウサギ、
夜空の満天の星、
あたりを飛び交う蛍、
この島にしかいない貴重な生物たち。

こはるちゃんのパパがこうやって
終始興奮気味にガイドしているワケも
少し分かったような気がした。

このツアーを経験して
私の奄美への印象はガラッと大きく変わった。


(続く)

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