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フランス国民議会選挙結果が2027年大統領選に与える影響~国民連合(極右)に有利に働く!?~

 2024年7月7日(日)の七夕の日にフランスでは、国民議会選挙の決選投票が行われました。結果は、左派連合1位、与党連合2位、国民連合と連携勢力が3位という予想外のものとなりました。

 共和国戦線 (le front républicain)と呼ばれた「決選投票で極右候補の当選を阻止するため、極右政党以外の候補者に票を結集させる選挙戦術」が功を奏した結果となりました。

 しかし、今回の国民議会選挙の結果2027年に予定されているフランス大統領選挙に大きな影響を与える可能性があることについて考察していきたいと思います。

フランス国民議会選挙の決選投票に関する事前の世論調査


 本件の考察を始める前に、「フランス国民議会選挙の決選投票に関する事前の世論調査」を確認しておきたいと思います。

 フランス世論調査機関「Ipsos」が行った事前の世論調査結果では、各政党や連合の議席数は以下のとおりと予測されていました。

出典:フランス世論調査機関「Ipsos」公式HPより
  • 国民連合 (極右)と連携勢力:175議席~205議席

  • 新人民戦線 (左派連合)  :145議席~175議席

  • 与党連合 (中道)             :118議席~148議席

 多くのメディアが「国民連合 (極右)が国民議会第一党か」と、国民連合の優勢を伝えていました。実際、日本のメディアもフランスの報道に倣い、「仏 議会下院選挙 きょう決選投票 極右政党が第1党の勢い(NHK記事)」と報じていました。 

実際の選挙結果


 しかし、大方の事前の予想と反し、「新人民戦線 (左派連合)が国民議会で第一勢力与党連合 (中道) が第二勢力、国民連合と連携勢力 (極右)が第三勢力」という意外な結果となりました。正直、私もこの予想外の結果に驚きました。

出典:Le Figaro紙「Élections législatives 2024 : la future Assemblée nationale selon les résultats définitifs du ministère de l’Intérieur
  • 新人民戦線 (左派連合)  :184議席

  • 与党連合 (中道)             :166議席

  • 国民連合(極右)と連携勢力 :143議席

    ※メディアによって、若干各勢力の議席数が異なっています。選挙結果は内務省によって確定しているため、恐らく、どの勢力を「左派連合」、「与党連合」にカテゴリーするかの違いだと思われます。

    事前の世論と比較すると、以下のように議席が変動しました。
           

  • 新人民戦線 (左派連合)  :+9議席 ~ +39議席

  • 与党連合 (中道)        :+18議席 ~ +48議席  

  • 国民連合 (極右)と連携勢力:-32議席 ~ -62議席

     
    第一回選挙と決選投票の結果を比較すると、新人民戦線 (左派連合)と与党連合 (中道) が票を伸ばし、 国民連合 (極右)と連携勢力が票を落としたということが分かります。

新人民戦線 (左派連合)と与党連合 (中道)の巻き返しの背景

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