復職後の処遇をめぐって 1

 私は精神科医の仕事、産業医の仕事の他に、その企業の産業医でなくても労働者の対応について相談を受ける、という相談の仕事もしています。企業によって、産業保健をどの程度熱心に行っているかという問題でもあるのですが、産業医にすべてを任すのもよし、精神面の問題は専門医に任すのもよしですので、これ自体は企業の考え方でよいと思っています。

 ですが、その「相談業務」となるとやや異なる対応を求められることもあります。その一つが、精神疾患で休職中の社員について、この社員を職場はどのように扱えばよいですか」という質問です。

 私が産業医であったり、面談を行って、どのような人物か、病状かを知っている方であれば問題ないのです。しかし、この質問に多いのは、私がその方と話したことがないにも関わらず意見を求められる、ということです。

 そして、この時、私は「主治医はどう言っているのですか?」と訊きます。担当者が主治医に確認していることはほとんどありません。

 もちろん、主治医の言うことをすべて聞かなければならない、ということはありません。でも、どんな人かわからない、何もわからないで、担当者からの情報収集だけで返答するほど、私は自信家ではありません。

 「なぜ、その方のことを私に聞こうと思ったのですか?」と担当者に聞くと、理由を話してくれます。「では、それを主治医に聞いてみたらどうですか?」とさらに伝えます。

 初めて、私にこのように言われた担当者は困ってしまうようですね。私が意地悪なのでしょうか。

 しかし、復職にあたって、労働者をどのように処遇すべきかを、主治医に確認するのは必要なプロセスです。私が産業医をしている企業では、保健師などの担当者が、どういったことを主治医に確認する、という主治医宛ての文章を作って持ってきてくれます。産業医の名前で文章を出すので、もちろん、私が確認してから主治医へと送ります。その返事を元に対策を講じるわけです。この流れは、保健師や会社がその労働者のどういったところに困っているか、産業医が把握する、懸念を主治医に伝える、という二つの意味で重要です。

 主治医がまともに取り合ってくれない、という担当者も存在します。だから訊かない、のではなく、訊いても返答してくれなかった、ということが大事です。その上で、産業医が本人と面談して方針を出せばよいのですから。

 「その2」では主治医視点からの見え方を書きたいと思います。

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