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俺たちは福丸小糸と歩き出す

沼の中にいる。
沼の名をシャニマスという。

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コメント 2020-07-26 182232

『noctchill』というユニットは、ジュブナイルを根幹に据えたユニットである。
この場合のジュブナイルとは今風でいえばエモい、もう少しいえば青年期への懐古。
過去に未練がない人なんていない。それが未熟だった頃であればなおさらだ。
俺たちは『noctchill』が魅せる特有の”青さ”に、懐かしさと、同調と、後悔と、自嘲と、羞恥と、それらがない交ぜになったもので感情を揺さぶられる。
そのメンバーの福丸小糸は、"特別"な幼馴染達の背中を焦燥感に駆られながら追いかけている。"特別"でない自分を自覚してなお、懸命にひたむきに腕を振り、足を動かす。
遠い目で見守る俺たちも、あの頃自分の"特別"をがむしゃらに探していた。
探すのをやめたのはそれを見つけられたから?
それとも。

1.

コメント 2020-08-14 012447

幼い頃から"特別"な幼馴染達といたせいか、福丸小糸は自己評価が低い。自分は普通より劣っていると思っていて、だから努力して当然、"特別"になるならさらに努力が必要で、それは「よゆー」なのだと自分に言い聞かせている。
努力や頑張れる事自体もすごいことだが、そこに苦しさや痛みを感じながら、それでもなお積み重ねることができるのは、本当にすごいことだ。淡々と積み重ねられる人を努力の天才というなら、いうなれば福丸小糸は努力の秀才なのである。その小動物的な可愛らしさとは裏腹に、その歩みはとてもかっこいい。

コメント 2020-08-14 015116

コメント 2020-08-14 015148

……………

コメント 2020-08-14 012800

やっぱりかわいい(テノヒラクルー

福丸小糸は"特別"な幼馴染達と一緒にいることが自分の居場所だと信じて、その"特別"と並び立つために頑張り続けている。教育熱心な家庭で育ち、幼馴染達とは別の中学校へ進学したことが、よりこの想いを強くした。プロデューサーや両親に嘘をつくという形で表面化したその必死さは、彼女自身すら傷つけて、でもだからこそ強い意思の表れでもある。
そして、アイドルを続ける中で、福丸小糸は幼馴染達以外にも"特別"を見い出し始める。それは、彼女が追いかけていた誰かの輝きではなく彼女自身の輝きで、アイドルを始める際にプロデューサーから出された課題、「どんなアイドルになりたいか」にも繋がる。
自ら輝くなら、誰かを照らすことができるのだ。

コメント 2020-08-10 030636

コメント 2020-08-14 013922

コメント 2020-08-14 014006

コメント 2020-08-14 014033

小糸がこの言葉を両親に告げるシーンを幻視して涙腺ぶっ壊れた。

自分の居場所がここであると信じられる人は、自分の中の何かを信じられている人だ。
俺たちは、特別なんて誰もが持つわけじゃないといつしか諦めたはずなのに、未だ自分の特別に期待している。
この居場所が自分のものであって欲しいと願いながら、一方で、そうであることを信じきれずにいる。
自分が何かなんて、俺たちもまだ知らない。
探すのをやめたのは、見つけたからじゃなくて、怖くなったからだ。信じきれなかったからだ。
自分の小さな輝きと誰かの大きな輝きを比べて、絶望したことがあった。
輝きに見えていたのに、その輝きが誰の目にも映らないものだと、思い知らされたことがあった。
大人な言葉でいくらでも取り繕うことはできるけど、結局、俺たちは辛いから、苦しいからやめただけだった。
福丸小糸は頑張っている。辛くても苦しくても頑張っている。
その姿を見ていると、なんだか、もう一度立ち上がれるような、そう思えてしまうのだ。
一度諦めたことを再び始めるのは、未練がましくて、情けなくて、立ち上がるのも、前を向くのも、躊躇われるけれど。
思い切って足を前に出してみると、あの頃は窮屈に見えた世界が案外広く見えたりする。痛みで満ちていた世界が、意外と優しかったりする。

コメント 2020-08-14 043301

見方を変えると急に光が見えることがある。小糸の両親が勉強を課してきたことも、純粋に小糸を想ってのことに違いない。
見たよ、小糸両親。ノクチルライブで号泣してた。

過去を変えたいか、というよくある問いかけに、ほとんどの人は変えたいと答えるだろう。誰だって後悔や失敗はあるものだ。1つ選択を変えるだけで、違う人生を歩める人もいるかもしれない。だけど、その後悔や失敗は、本当になかったことにしてもよいものだろうか。
同世代が遊びに明け暮れる中、幼少の頃から勉強ばかりをしてきた福丸小糸は、どうして自分ばかりと悩んだこともあったとプロデューサーに打ち明けた。その表情は暗いものだったが、続く言葉で俺たちはまた福丸小糸の強さを思い知る。

コメント 2020-08-14 014336

コメント 2020-08-14 014423

コメント 2020-08-14 014504

あらゆる過去は今の自分に繋がっている。それがどんなものであれ。
辛い経験で人は強くなれるし、その分誰かに優しくなれる。
福丸小糸が自分の輝きを見つけたのはアイドルになってからだが、その輝きはこれまでの一生懸命な積み重ねによるものだ。気づいていなかっただけで、彼女は輝きを積み重ねていた。
そんな彼女の優しい光で照らされていると、過去の諦めた自分さえきっと無駄ではなかったのだと、俺たちは過去の弱かった自分を受け入れられるような気がして、だから、もう一度歩き始めようと、自然にそう思えるのだ。
その歩みは前よりもゆったりで、しかし前より柔軟で、意思だけは固く。
俺たちがまた自分を信じ切れなくて迷ったら、前を駆ける福丸小糸は振り返って、いつものいばった調子でこう言うだろう。
そうしたら、俺たちは苦笑しながら、気恥ずかしさと共にその手を取るのだ。

コメント 2020-08-14 051105

俺たちは福丸小糸と歩き出す。

強くあることじゃなくて、強くあろうとする姿が、誰かに勇気を与える本当の強さだ。

俺たちは福丸小糸と、"特別"を探して、もう一度、歩き出す。

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