「一流は早起き」は間違い?!
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「一流は早起き」なのか?
ビジネス書を良く読まれる方は、成功者たちは早起きしている!というたぐいの話をよく目にされているのではないでしょうか? ざっと検索してみても一流は早起き!なんて表現が出てきました。
こちらの記事で紹介している4つの習慣とは、
(1)運動をする、(2)読書や新聞をチェックする、(3)交流会に参加する、(4)朝食をとる
でした。
そして一流は早起き」の論拠は、
ちなみにこの記事のなかに出てきたニューヨーク・タイムズの記事はこちらでしょう。
これは、典型的な偏りある判断で、「確証バイアス」による歪みがあります。確証バイアスとは「きっとそうだと思うという自説を支持する情報ばかり集める」バイアスです。
こちらの記事を怪しむ理由を3つ紹介します。
朝型じゃない人間は86%いる
わたしたちにはクロノタイプというものがあり、これは遺伝子で決まっています。クロノタイプとは、朝型か夜型か、その中間かを示すもの。割合は、朝型は14%、普通が65%、夜型が21%(※1)。夜型のひとが、早起きをしようとしても非効率。それぞれの実力が発揮できる時間があります。
クロノタイプチェック
クロノタイプは遺伝子検査でもわかりますが、簡単な質問に答えるだけでもだいたいわかります。こちらのミュンヘンクロノタイプ質問紙(MCTQ)に答えると自分のクロノタイプがわかります。質問にこたえるのにかかる時間は5分程度です。
ちなみにわたしは朝型でした。
ここでは、まあクロノタイプはわかったけれど、早起きと夜ふかし、それぞれにどんなメリットがあるのか、観ていきたいと思います。
早起きのメリットとデメリット
朝型の特徴
エストニア人2,500人以上をを対象にした調査(※9)によると朝型のひとの性格は、誠実性が高く、忍耐と落ち着きがあり、達成感を強く求める傾向が高かったようです。その一方で開放性が低い傾向もありました。
早起きのメリット(1)共感力が高い
イギリスのブルネル大学の研究(※2)によると「早起きなひとほど、楔前部(けつぜんぶ)の灰白質(かいはくしつ)が少ない」ことがわかりました。
楔前部の灰白質が少ない人ほど共感力が高い傾向が、過去のメタ分析からわかってます。朝型のクロノタイプのひとは、ボランティア活動を行う傾向が高いようです。
早起きのメリット(2)うつ病になりにくい
約84万人の男女を対象に行われた遺伝子データとうつ病の診断に関する調査を含んだサンプルを使用した調査によると(※7)、早起きの遺伝子を持ってる人は、うつ病のリスクが低かった、ことがわかりました。さらに睡眠の中間点(就寝時刻と起床時刻の中間点)を1時間早めるごとに、うつ病のリスクが23%低下する可能性があることも示唆されました。 推測される理由は、早起きのひとは日中に浴びる陽の光の量が多いから。
早起きのデメリット(1)全身に炎症が起きやすくなる
ウエストミンスター大学の調査(※8)では、午前7時より前に起きると通常よりコルチゾールというストレスホルモンのレベルが増加し、しかも一日中そのまま高いレベルのままになるようです。慢性的にコルチゾールのレベルが高いと、全身に炎症が起きてしまいます。
夜ふかしのメリットとデメリット
夜型の特徴
エストニア人2,500人以上をを対象にした調査(※9)によると、夜ふかしさんは、協調性が高く、刺激を求めやすく、自己管理能力が低い傾向が高いようです。さらに、優柔不断でリスクを取るタイプの人が多く、物事を成し遂げるのが苦手な人が多いとか。しかし下記にみるように頭が良い人が多いんですよね。
夜ふかしのメリット(1)頭が良い
アメリカの若者を対象にした調査では、早寝早起きよりも夜ふかしさんのほうが、IQが高いという結果が出ています(※3)。
夜ふかしのメリット(2)モテる
ドイツ、ハイデルベルク大学が2012年に行った研究によると、男性の「モテる」要素は、1位が外向的であること、2位が年齢、3位が夜ふかしができる能力でした(※4)。
夜ふかしのメリット(3)年収が高い
スペイン、マドリッド大学の1,000人の学生を対象とした調査によると、夜ふかし型のほうが成績が良く(頭がいいから)、良い会社に入りやすく、年収も良い傾向がありました(※5)。
夜ふかしのデメリット(1)うつ病になりやすくなる
夜型のひとは、精神疾患や神経症と関連しやすいことが、先のブルネル大学の研究論文で言及されています。さらに夜ふかしをする人は、早起きをする人に比べて2倍もうつ病になりやすいようです(※6)。
まとめ
早起きにも夜ふかしにも良いところと悪いところがあるようです。どっちが良いのか?ということよりもまず自身のクロノタイプを知るほうがだんぜん有益なようです。夜型のひとが早起きしようとしてもムダですし、朝型のひとが夜中に働く仕事をするのは避けたいところ。自分のクロノタイプにあったライフスタイルを作るのが何かと良さそうです。そして根拠浅く「できる人間は朝早い!」という声や本にはちょっと警戒したほうが良さそうです。
おすすめの本
ダニエル・ピンク(著)『When 完璧なタイミングを科学する』
わたしは、この本を読んでから、病院にはできるだけ早い時間にいき、プレゼンはできるだけ午前中か夕方にするようになりました。
参照
※1:ダニエル・ピンク(著)『When 完璧なタイミングを科学する』
※2:Diurnal Preference and Grey Matter Volume in a Large Population of Older Adults: Data from the UK Biobank
※3:Why Night Owls Are More Intelligent Than Morning Larks
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/the-scientific-fundamentalist/201005/why-night-owls-are-more-intelligent-morning-larks
※4:Eveningness is related to men’s mating success
※5:Night owls are wealthier and wiser than larks, study finds
※6:いつもより就寝と起床を1時間ずつズラすだけでメンタル悪化リスクが23%も改善?
※7:Genetically Proxied Diurnal Preference, Sleep Timing, and Risk of Major Depressive Disorder
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2780428
※8:The cortisol awakening response: neuropsychological correlates and implications for function in healthy humans
※9:Personality traits relate to chronotype at both the phenotypic and genetic level
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