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「歳をとるのは悪いこと」という考えが、むしろ老化させる「エイジズム」

健康に役立つエビデンス

わたしたちの健康に関わるエビデンスを紹介するマガジン。


サルデーニャ島の老人たちが元気な理由

脚の形にみえるイタリア半島が、蹴り上げたような場所にある大きな島、サルデーニャ島。前回の『スーパーエイジャー』の記事でも紹介しましたが、この島の老人たちはとても元気で長寿。活動的で、社会的なことがその秘訣という話はそのときに紹介しましたが、今回はもうひとつの秘訣を紹介します。それは、

歳をとることを悪いことだと思う「エイジズム」がない

ということ。「エイジズム」ということばは、耳馴染みがないかもしれませんが、世界保健機関、WHOのウェブサイトでも紹介されている言葉です。

WHOでは、

“年齢を基準にした他人や自分に対する固定観念、偏見、差別のこと”

と紹介されています。このエイジズムが、サルデーニャ島にはなく、老人を貴重な知識を持つ存在として捉えられ、また若者たちを含めて、多くの他の年齢層と接触機会がある風土があります。(※1)

エイジズムとは?

わたしたちの生活において、エイジズムがどういうものか、想定してみましょう。たとえば「おじさんだから」、「おばさんだから」という言葉や考えもエイジズムと言えるでしょう。白髪やシワを気にするのも、または若者に疎まれるおっさん、おばさんという考えかたもエイジズムです。老人は老人どうしてコミュニケーションをし、他の世代とのコミュニケーションが減るのもエイジズムに近い。また意外にも「お若いですね」という褒め言葉もエイジズムの思想を汲んだものです。あるテレビ番組で、そう言われた女性が「それは褒め言葉ではない」と返していました。

ストレスに似ている

ストレスもまた、「ストレスは身体に良くない」と考えると寿命が減り、「ストレスはべつに身体に悪くない」と考えている人は、平均より寿命が長くなるという、このエイジズムに似た傾向があります。

つまり、ストレスにしろ、老化にしろ、「え、べつに良んじゃね?」と考えていたほうがずっと良いようです。実際にハーバード大学の7万人以上のデータを分析した研究(※2)によると

楽観的な人は、悲観的な人より生存率が29%高く、癌の発症リスクは16%低く、感染症には52%かかりにくい

傾向がありました。楽観的なだけで笑。わたしたち、日本人は、幸せのホルモンとよばれるセロトニンが少ないSS型が多い人種。欧米人はLL型が多く、大胆な行動をしがちで、SS型は慎重。宗教の傾向にも反映していると言われます。なので、頑張って、工夫して楽観的になったほうが良さそうです。ちなみに楽観的なほうが寿命が長い、こういった傾向の理由について、研究者たちはこのような推測をしています。

  • 楽観的な結果、幸福度が高くなり、その結果、活動的になり、運動量が増えるから

  • 不幸な出来事から復活しやすい

  • ストレスが少なく、免疫システムが改善される


エイジズムの克服法(1) 他者の目を消す

エイジズムはわたしたちのいわゆる「先入観」です。これを壊すためには、共同幻想から抜け出す必要があります。他者が考えている思想から抜け出すには、同調しなくても良いという価値観の獲得が有効でしょう。ベストセラーですが、この本は、他人からどう思われるか、べつにどうでも良い、という価値観をゲットするにはとっても手っ取り早いです。


エイジズムの克服法(2) 環境アーキテクチャ

科学者やエビデンス重視の人たちに共通した考えに、「意志の力」というものを寄る辺としないというものがあります。わたしたちが行動を変えるには、1つには習慣の形成、もうひとつの方法にゲーミフィケーション(これはときどきおすすめされない。でもわたしはガンガン使っています)、あともうひとつが「環境アーキテクチャ」。わたしは環境によって行動が変わるので、行動を変えるために環境を変えるというのが「環境アーキテクチャ」です。

具体的には、InstagramなどのSNSに接する時間を減らすのがとても有効でしょう。また観察主義という考えも有効だと思います。観察主義とは、他者も自分も観察の対象にしてしまうというもの。観察主義については後日解説します。


エイジズムの克服法(3) 挑戦する

これは、前回のスーパーエイジャーに共通したもの。多くのことに挑戦し、失敗し、それでも上達していくことを楽しむ、というのが、メンタルにも肉体にも良い影響があります。挑戦しても失敗するのがいや!という方には、こちらの本をおすすめします。

何がうまくできないことなんて、ぜんぜん気にならなくって行きます。ほんとうに。わたしもサーフィンぜんぜんうまくなっていませんが、楽しくて仕方がありません笑。

エイジズムの克服法(4) 未来を心配しない

実はわたしたちの不安を作っているものの正体は「未来」。未来を楽しみにできるマインドセットを形成しておくと良いのですが、そうはいっても……と思われる方のために、「なんだかんだ世界は良くなっているかも」と思える本を1冊紹介します。


世界はマスメディアが騒ぐほど、悪くなっていないかもです。ちなみにマスメディアがどうしてネガティブなニュースばかり流すのかというとポジティブなニュースに人間は注目しないためです。これはプロスペクト理論もその論拠にできます。



まとめ

「歳をとることは良いことです」と考えることが、むしろわたしたちを若返らせるというエビデンスを道具に思い込みを壊してくと人生がより楽しくなるかもです。

Youtube ラジオやっています

毎日午後9時更新で、エビデンスベースの話をゆるく10分間話しています。


参照

※1:Psychological Well-Being in Italian Families: An Exploratory Approach to the Study of Mental Health Across the Adult Life Span in the Blue Zone

https://ejop.psychopen.eu/index.php/ejop/article/view/1416


※2:Optimism and Cause-Specific Mortality: A Prospective Cohort Study


鈴木祐(著)『不老長寿メソッド』


https://www.sciencedirect.com/topics/psychology/ageism

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