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在宅勤務をポジに楽しむ唯一の方法 〜甲子園という最適解〜

在宅勤務のはじまり

 生まれて初めてパンデミックの影響を身近に感じている。会社の入っているビルにも(他社の人だけど)感染者が出たということで、当然のように弊社でも原則在宅勤務になった。人生で初めて自分の活動を制限される状況になって、ちょっとどうしていいかわからなかった。仕事はしないといけないけど、自宅でやるのは本当に苦手。仕事モードになれない。とにかくPCを開くのが嫌だ。

 でもやらなきゃいけないから…ということで敢えて過度に仕事に集中しない環境をつくることにした。何かをやりながらまずは片手間でPCも開く、という状況をつくること。
 具体的にはテレビをつけてみた。いつもは観ない時間帯だからか最初のうちはちょっと新鮮だった。だけど次第に飽きた。というか内容が毎日同じようなものの繰り返しすぎて、ちょっと耐えられなくなった。

 それならということで、テレカン以外の時間はYouTubeをテレビ画面に映して、それを流し見しながら仕事をすることにした。なぜYouTubeにしたかと言うと、別に真剣に観なくてもいいと思ったから。NetFlixやAmazonPrimeで映画でも観ながら…とも思ったけど、無理だ。仕事しながらだと、話が全く入ってこないからダレる。そんなこんなでYouTubeこそ視聴と仕事のバランス的にベストだと考えたのだ。

在宅勤務とYouTubeとF君

 しかしすぐに問題が発生した。動画ジャンルの問題だ。普通のYouTuberの動画は尺が短い上に、セリフのテンポが早すぎるからなのか、流しながら仕事をすることに向いていない気がする。あと観る人を選べばいいだけなのかもしれないが、普通に「調子乗ってる若者うるさい!」みたいな残念なマインドになってくる。

 広告も非常にウザい。広告屋で働いている人間がこんなこと言うのもどうかと思うけど、スキップしなきゃいけない長い広告ほんとやめてほしい。何より内容がゴミカスみたいな広告が多すぎる。「デブでブサイクだった俺が、巨乳女子大生とセックスできた秘密!」みたいな、クソ広告がめちゃくちゃ流れてくる。そんなのにターゲティングされてる自分にも嫌気が刺してくる。32年間生きてきてたどり着いたたったひとつの真理は、何度凡退したとしても打席に立ち続けること、そして打席でフルスイングし続けること。それしかないのだ。それを続けていれば巨乳女子大生とセックスできることはある。全力でバットを振り続ければ、いつか甘い球(なぜか相手に自分がめっちゃ刺さる神展開/女性側の彼氏に浮気が発覚したなどの神タイミング/ただのヤリマン など)をホームランすることはある。

 これは入社1〜3年目くらいまで、何かに取り憑かれたように合コンをしていた時期に、当時の合コン仲間だった同期のF君という、とにかく打席に立ちまくりながら、全打席ホークスの柳田ばりのフルスイングをみせる男と様々な時間を過ごすことでたどり着いた真理だ。F君が、女の子が乗り込んだタクシーの前で30分間「1回だけやらせてください!」と土下座を続けたことと、なんでもない理由で、僕の頭を鏡月の瓶で思いっきり殴ったことは今でも忘れない。
どちらも普通に何かの犯罪だったと思う。

甲子園名勝負動画というジャンル

 そんな本当に意味のわからないことを考えながら、理想の動画を探していると、早々に最適解にたどり着いてしまった。”甲子園名勝負”というジャンルだ。厳密に言えば、”甲子園名勝負”なんて、YouTubeにおいてはジャンルとは言えないのかもしれないのだが、敢えてここではジャンルと書きたい。それくらい”甲子園名勝負”というジャンルは偉大だった。というか自分にぴったりとフィットした。”甲子園名勝負”動画の素晴らしさを以下に列挙する。

 ①めっちゃたくさんある
 ②めっちゃ長い(なのに広告がない!)
 ③たまに集中して見るだけでいい
 ④頑張ろうと思える

①めっちゃたくさんある
 これは当たり前と言えば当たり前なのだが、試合数がたくさんあるので飽きない。甲子園は春と夏、年に2回開催される。出場チーム数は大会によってちょっと違ったりもあるが、現在は春32校、夏49校がトーナメント形式で試合を行うので、1回戦から決勝までで春が31試合、夏が48試合となって、1年間で81試合行われることになる。さらに甲子園は春夏ともに100年以上の歴史があるため、名勝負の蓄積がとにかくたくさんある。(YouTubeにアップされておるかどうかは運次第)

②めっちゃ長い(なのに広告がない!)
 これも当たり前なのだが、野球は基本的に9回まで。他のスポーツに比べても1試合の試合時間は長い方だと思う。高校野球の平均試合時間は、2時間〜2時間半くらいと言われているので、一度再生を初めてしまえば、腰を据えて見ることができる。だから仕事中にぴったり。
あとなぜかわからないけど、広告が出ない(気がする)。これはアップしてる人がそうしているからなのか、わからないけど。途中で広告が流れることがない気がする。普通に流れたらごめんなさい。
 もうひとつ細かいことを言うと、YouTubeにこの手の動画をアップするのは基本的には違法アップロードの類だと思うので、あまり人にすすめられたものではないのかもしれないけど、甲子園の動画に関しては圧倒的にNHKの映像が多く、僕はNHKにちゃんと受信料を払っているので、まあ、そんなに悪いことをしている気にならない。一応だけど。だめだとは思うけど…。

③たまに集中して見るだけでいい
 これは野球というスポーツの特徴でもあるけど、試合が動くタイミングがある時いきなり訪れるということが、少ない。ターニングポイントになるイニングが試合の中で数回あるため、その時だけちょっとタイピングの手を止めて試合に集中すれば済む。だから仕事もある程度は進む。

④頑張ろうと思える
 これが一番重要かもしれない。これは自分が高校野球をやっていたからというのも大きいけれど、高校球児はとにかくほとんどの選手が一生懸命プレイしている。ここまで高校野球の人気が加熱しているのは、その熱量の高さが人の心に響くからなんだと思う。そんな高校生の頑張る姿を見ながら胸を熱くして、画面が暗くなったPCに目を落とすと、ディスプレイに反射する覇気のないおじさんの顔。頑張らなきゃな、と思える。

在宅勤務にオススメの甲子園名勝負 とりあえず3戦

ここからは、これは在宅勤務に本当にオススメできるという名勝負を紹介したい。めちゃくちゃ個人的な見解。一応みんなYouTubeに(おそらく)違法アップロードされているものなので、観る人はその辺をちゃんと理解した上でご覧になっていただきたい。

1998年夏 準々決勝 横浜 対 PL
言わずとしれた平成の怪物、エースで四番の松坂大輔を擁して春の選抜で優勝した横浜高校が、春夏連覇を目指した98年の夏。松坂以外もタレント揃いでとにかく強かった。そこに立ちはだかったのが大阪の超名門PL学園。実は春の選抜準決勝でもこのカードで対戦していたが、この時も3−2で横浜がPLに勝利していた。雪辱に燃えるPL学園は、エース上重聡(現 日本テレビアナウンサー)を中心にまとまった良いチームで、松坂大輔を最後まで苦しめ、白熱した試合は延長17回までもつれ込む大熱戦になる。
ちなみに横浜高校は、この日の1番小池、3番後藤、4番松坂、5番小山の4人が後にプロ入りするスター軍団。対するPLも1番田中一徳、5番大西、途中出場の平石、田中雅彦の4人が後にプロ入り。エース上重も大学時代の怪我がなければ・・・、というチームだった。
実況の故 石川洋NHKアナウンサーの試合終了後のコメントも素晴らしかった。


1998年夏 準決勝 明徳義塾 対 横浜
また98年夏の横浜高校。でも、この試合は続けて観ることに意味があると思うので、ぜひ準々決PL戦の死闘を観てからこの試合を観て欲しい。
そう、この試合、なんと延長17回を戦ったPL戦の翌日なのだ。前日に250球を投げ抜いてボロボロの松坂大輔はレフトで出場。横浜はエース松坂を使えない状況で高知の強豪明徳義塾に挑む必要があった。当時の高知県はめちゃくちゃレベルが高く勝、後に阪神で大活躍する高知商の藤川球児や高知高校の土居龍太郎ら、高知高校野球史上最も?逸材が集まっていた年ではないだろうか。そんな高知を制した明徳義塾も、エースで4番寺本四郎、控え投手の高橋の2人がプロに進むほど戦力の充実したチームだった。
そんな明徳義塾を相手に横浜は、袴塚と斉藤の控え投手の継投で挑むも8回表終了時点で6対0。明徳寺本の快投もあり、絶体絶命に追い込まれていた。7回までは好投した寺本だったが、8回に味方のエラーもあって2点を失うと、高橋に投手交代。横浜は二番手高橋からも2点を奪い、8回裏に一挙4点をあげた。そして9回表、なおも2点ビハインドの横浜高校のマウンドに、ついに松坂大輔が上がり、球場の雰囲気が横浜一色に。
※動画が埋め込みできない仕様だったので、以下のURLでYouTubeに遷移して観てください。タイトルにもリンクつけてます。
https://www.youtube.com/watch?v=k5qUvB8kycU


2007年夏 決勝 広陵 対 佐賀北
 ここで、ぐっと最近っぽいやつ(10年以上前だけど)を選んでみた。広島の広陵高校は、旧制中学時代から甲子園にも出場している伝統校。新興勢力の私立学校かと思いきや、実はめちゃくちゃ伝統がある。2007年のメンバーはエース野村、キャチャー小林、ショート上本、サードで主将の土生の4人が後にプロ入りした力のあるチームで、戦力的には広陵が圧倒的有利な状況だった。対して佐賀北は田舎の公立高校。特に名門というわけでもなく、後にプロ入りする選手はもちろん、大学で野球を続けた選手も多くなかったのではないか?もちろん誰も決勝まで上がってくるなんて想像していなかった。
 そんな佐賀北、近年の甲子園では珍しく1回戦〜3回戦まで全てが公立対決。1回戦では福井の強豪福井商業、2回戦は好打者中井大介を擁する三重の宇治山田商業、3回戦で群馬の伝統校前橋商業の公立対決を制し、準々決勝では優勝候補の帝京高校と延長13回までもつれる大熱戦。当時の帝京はエースの垣ヶ原(青学−日立製作所)、控え投手の大田阿斗里(元横浜)、高島(元中日)などの充実した投手陣に、打線は4番の中村晃(ソフトバンク)、杉谷兄弟(弟の杉谷拳士は日ハム)の強力クリーンナップを擁して破壊力抜群。地力はどう考えても帝京だった。それを粘りに粘ってサヨナラ勝ちした佐賀北。この試合あたりから、完全にちょっと普通じゃない空気、佐賀北旋風が吹き上げているのを肌で感じる。この試合もめちゃくちゃいい試合なので、一応あげておく。

 そんなこんなで準決勝に進んだ佐賀北。準決勝でも馬場、久保の継投は冴え渡り、同じ九州の長崎日大を3−0で完封。決勝に駒を進めた。前述した通り当時の広陵は戦力的にも非常に充実しており、地力ではどう考えても広陵有利。試合も広陵エース野村の快投に、7回終わって佐賀北はヒット1本、0得点に押さえ込まれ、4点のリードを許す絶体絶命の展開…なのに、ここから奇跡が起こるのが面白いところなんだよなぁ…。これはもう球場全体で佐賀北を後押ししてたし、もう雰囲気がおかしくなっていた。この動画はフルじゃないけど、ここだけ観たらもう充分。趣旨がズレまくっているかもしれないけど、この動画は在宅勤務が進まない。

ただただ甲子園開催してほしい

 まずはこの辺りの動画を観ながら仕事にトライして観てほしい。トライしてもらえればわかると思うが、野球が好きな人は、仕事が全く手につかない。最適解とか書いたけど、すみません、嘘です。全くもって最適じゃない。むしろ最悪だった。
 とにかく、大人の在宅勤務とかどうでもよくて、高校生たちの3年間の集大成を、今までの努力をぶつける場所をどうにかして守ってあげたい。朝日新聞さま、何卒。
無理かな。たぶん中止なのかなと思うけど、可哀想だな。

 僕は、今日も自宅でダラダラ仕事をしながら、高校野球を待ってます。

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