見出し画像

ニール・ヤング『Live At Massey Hall 1971』を聞こうよ

自分語りから入ります。読み飛ばしてくれ。流行りに乗って「好きな42枚のアルバムを見せびらかす」というのをやりました。こうなりました。

生命、宇宙、その他もろもろについての深遠なる疑問の答え

あまり悩まずに「このアルバムはよく聞いたな~」感で選んだところ、デッキ構築を間違っていて、キュアーの『Disintegration』がない。それから、たぶん一番よく聞いたニール・ヤングのアルバムを入れていません。『Live At Massey Hall 1971』です。

ニール・ヤングをぜんぜん知らない人向けにかいつまんで説明します。ニール・ヤングはカナダのミュージシャンです。60年代にフォークロックバンドのバッファロー・スプリングフィールドのメンバーとして活躍し、その後ソロデビュー。常に迷走しているような人なので、どういう音楽をやるかは時期によってかなり違いますが、大雑把に言えば二つの面があります。バックバンドのクレイジーホースと一緒にエレキギターをデカい音で鳴らすロックの面と、アコースティックギターやピアノで弾き語りするフォーク、シンガーソングライターの面です。今回取り上げる『Live At Massey Hall 1971』は後者、シンガーソングライターとしてのニール・ヤングが聞けるライブです。

ニール・ヤングのような活動期間の長いカタログが膨大なミュージシャンを、過去のすべての音源にアクセスできるストリーミングサービスから聞く場合、「どれから聞くか?」という問題が発生しがちです。公式プレイリストから聞く、ベスト盤から聞く、代表作から聞く、1stから聞く、新作から聞く……好きに聞けばいいんですが、せっかくこれを読んでくれた「ニール・ヤング聞きたいけどどれから聞けばいいかわかんないね~」の諸氏におかれましては『Live At Massey Hall 1971』から聞くことをオススメします。

理由ですが、まずセットリストがいい。バッファロー・スプリングフィールド、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング、クレイジーホース名義、ソロ名義の作品をすべてカバーしていて、これを聴くだけで初期の名曲が一通りわかります。そして録音がいい。ライブ盤には音質が悪いものや、リバーブが過剰で演奏が聞き取りにくいものもありますが、このアルバムは71年の録音とは思えないほど音がよく、聞きやすい。さらに演奏時間がコンパクトにまとまっている。ニール・ヤングのライブ盤ではクレイジーホースと共演した『Live at the Fillmore East』もすばらしいのですが、熱い演奏は一曲15分にも及びます。一曲が長い分、収録曲数も少ない。こっちは二枚目以降でいいと思います。最後になにより、演奏がすばらしい。一曲目の『On The Way Home』からして、物悲しく響く声の伸び、きらきらとしたアコースティックギターの音色、ニール・ヤングのいいところが詰まっている。一曲目で感じた名演の予感は最後までまったく薄れることなく続いていきます。ぜんぶいいアルバムです。ぜんぶ聞こう。

ついでなんで、特に好きな演奏を紹介しておきます。収録されているアルバムも書いておくので、興味を持ったらぜひ聞いてみてください。ライブとのアレンジの違いが楽しめるかも。

Old Man

『Harvest』に収録。ギターのオブリも高い音域で張り上げた声もなにもかもいい。ライブが行われたときにはまだリリースされてない曲ですが、『Harvest』の曲はけっこう演奏されてます。

Helpless

CSNYの『Deja Vu』より。代表曲の一つです。CSNYのコーラス隊をうまくつかったアレンジもいいけど、アコギ一本でやるとさびしさが際立ちますね。

Cowgirl In The Sand

『Everybody Knows This Is Nowhere』収録。元はクレイジーホースとエレキ編成やってる曲ですが、アコギでも定番曲。コードよくわかんないけどメジャーからマイナー戻って「old enough to」って歌い上げるとこが本当に好きでここを聞くためにこの曲を聴いている部分がある。

See The Sky About To Rain

『On The Beach』収録。74年にリリースのアルバムなので、この時点では客席のほとんどの人が聞いたことがなかったんじゃないかと思います。個人的な話をすると、ぼくも『Live At Massey Hall 1971』聞いた時点でまだ『On The Beach』を聞いていなかったので、ライブ盤ではじめてこの曲を聞きました。そういうわけで、この曲、この演奏に関しては聞く前にどうでもいい先入観を与えたくないので、黙るしかない。この曲を最後まで聞いたとき、一瞬を永遠にすることのできるライブ盤のすばらしさを感じた気がする。

Down By The River

『Everybody Knows This Is Nowhere』収録。いちばん好きなRiverです。そのつぎに好きなRiverはフェネスの「Rivers of Sand」です。ライブも大詰め、客席からのリクエストにこたえる形で演奏される代表曲です。盛り上がるに決まってる。「I shoot my baby」という叫びから「dead……」で静まり返る表現の幅がいいですね。これもバンド編成で演奏したときと比べるのが楽しい曲です。アルバム版と比べてもいいんですが『Live at the Fillmore East』と比べても面白い。めっちゃ長くなってて驚きます。

そういうわけで『Live At Massey Hall 1971』を聞き、ニール・ヤングに入門しようという誘いでした。聞こうよニール・ヤング。終わり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?