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日本経済予言の書2021 新予言1 新型コロナはあと数か月で終息する

昨年6月に発表した書籍『日本経済予言の書』では昨年4月までの状況をもとに新型コロナをはじめとする2020年代に日本経済を襲う7つのショックについて未来予測しました。コロナについては2021年の二度目の緊急事態宣言まで、おおむね当時の予測通りに日本経済は推移していると思います。一方で書籍発行後、コロナについてもさまざまなことが判明してきました。それを踏まえ、2021年の日本経済がどうなるのか、noteで新しい予測レポートを公開していきたいと思います。


「いったいいつになったら終わるのか?」

二度目の緊急事態宣言での自粛要請を受け、わたしたちの間でコロナ慣れ自粛慣れというふたつの相反する空気が生まれています。

コロナ慣れは警戒のゆるみとして表れています。グーグルが発表するモビリティレポートで日本の数字を見てみると前回、2020年4月の緊急事態宣言では東京都の職場への移動はマイナス43%まで減少しました。初めての緊急事態に、一刻でも早く収束させるために多くのひとたちが協力をし、慣れないリモートワークにもチャレンジしました。

今年、2021年の緊急事態宣言での同じ東京都の職場への移動数値はマイナス29%。明らかに前回ほどの力が入っていません。背景には一年近く続くコロナへの社会全体の慣れと疲れがあると考えられます。

一方でその逆の自粛慣れもあります。新しい生活様式の中で不要不急の外出は避け、外出時にはマスクをし、手洗いうがいを励行し、ソーシャルディスタンスを保つ。そのような生活に慣れていくなかで自然と、わたしたちは自宅に籠る時間が増加しています。

このコロナ慣れと自粛慣れは相反する形で日本経済に打撃を与えています。コロナ慣れによってコロナの第三波の収束は遅れ、結果として医療現場の疲弊が長期化します。同時に経済的な自粛も長期化するわけですが、その間、自粛慣れによる不要不急な外出機会の減少は経済のマイナス成長も長期化させます。

だらだらと長く自粛期間が続き、だらだらと長く低調な形での経済活動の日々に慣れてくる日常。「いつまでこんな毎日が続くのか?」と思いのたけを吐露したい気持ちが募る日々です。

いったいいつまでこの状況が続くのでしょうか。

あくまで統計分析的な手法を前提に私の専門分野である未来予測を行うと、実はこのコロナ禍はあと数か月でおしまいになる。2021年7月にはいまのような日々は終息すると予測されます。現在のコロナ第三波が収束するのではなく、コロナ禍自体が終息するというのが私の予測です。

言葉を言い換えると、医療崩壊を起こさないために新しい生活様式を過剰に強いられる日々はもうすぐ終わり、普通に外出できる毎日がもうすぐ戻ってくると申し上げています。これが最初の予言です。「新型コロナ禍は2021年7月には終息する」のです。


コロナ終息が意味すること

とはいえ誤解が生じないように「コロナ禍の終息」とはどのような状況を指しておくのかを明示しておきましょう。

まず第一に、「新型コロナ禍は2021年7月には終息する」と言っても、6月までは新型コロナの拡大リスクは続きます。今、直近の状況を踏まえると緊急事態宣言は早ければ2月後半には解除される可能性があります。しかしそこで自粛が緩めばじきに第四波が発生する危険性が残っています。

ひとつのシナリオとしては2月後半に解除されたことで3月後半にふたたびコロナが勢いを盛り返し、政府がやむなく4月に三度目の緊急事態宣言発令をせざるをえなくなる。そのようなシナリオは十分にありうるというのがひとつめの前提です。

ふたつめに「コロナ禍が7月に終息する」というのは、コロナがなくなる話をしているわけではありません。インフルエンザや風邪と一緒で新型コロナはこれから先、消えてしまうことはありません。ただ2020年と2021年初に世界で猛威を奮った規模でのパンデミックが、この夏を境に世界的に小規模なものに変わっていくということを意味しているとお考えください。

第三に重要なこととして、病気という視点でのコロナ禍が終了しても、経済的なコロナショックは残ります。実はここがわたしたちにとってはおおきな論点で、これまでの一年の間に失われたさまざまな経済活動のマイナスをどう復興していくのかを考えると、コロナショックは2021年後半の日本経済の大きな課題として残るのです。

「終わる」「終息する」というのはあくまで猛威をふるう伝染病としてのコロナ禍であって、コロナの影響自体はこれから先になって本格的にわたしたちの課題になる。そうお考えいただきたいと思います。

その3つの前提を念頭に置きながら、それでも今、わたしたちが我慢に我慢を重ねて送っているコロナ禍の日々は、いつまでも続くことではない。もうすぐ、あと数か月で終息するのだという予測は、これから先の日々を送るにあたっての心のよりどころになるはずです。

そして「もうだめだ、生活が成り立たない」「去年でも苦しかったのに、この冬の自粛でいよいよ廃業しかない」という状況に追い込まれている方は、一度、これから何回かのレポートに分けてお話しする2021年についての予測を読んでいただきたいと思います。なぜなら、今が一番、世界全体にとって暗い時期、つまり世界の夜明け前かもしれないからです。


コロナ禍はなぜ終息するのか?

歴史は繰り返すといいます。ちょうど百年前のパンデミックを例にとって、歴史のメカニズムを検証してみたいと思います。

1918年に世界を襲った「スペインかぜ」では日本では38万人の犠牲者が出ました。死者数を見ると一年目が25万人、二年目が12万人とその被害は甚大で、まさに「いったいつまで続くのだろうか?」と世界中がその猛威に震えたのです。この時期、イギリスの保健省は「被害はこれから30年続く」と警鐘を鳴らしたほどです。

しかし三年目の1920年の冬、スペインかぜは世界中で終息に向かいます。日本の場合、1920年冬の犠牲者は3698人。被害がなかったとはいえない一方で、一年目、二年目とは被害者の数が二けた少ないことも事実です。

いったい何がスペインかぜの三年目の流行を抑えたものにしたのでしょうか。スペインかぜの原因であるインフルエンザウィルスが分離されたのは1933年。ワクチン含め、有効な予防手段がなかった時代の出来事です。

有力な説明は集団免疫の獲得です。スペインかぜはそれまで人類が免疫をもっていないH1N1亜型のインフルエンザウィルスが引き起こしたパンデミックです。免疫がないから感染速度も速く、重症化率も高かった。一方で二年間のうちに徐々に世界中でH1N1亜型への集団免疫が広まっていくことになりました。その集団免疫によって三年目の感染拡大の波は小さいものになったということのようです。

では新型コロナの場合は、これからどのようなことが起きるのでしょうか。リスク要因としてはスペイン風邪のような集団免疫の獲得には、百年前と現在では、現在のほうが時間がかかるかもしれません。理由はマスク、手洗い、うがいといった当時はそれほど普及していなかった生活習慣のおかげで、現在のわたしたちはウィルスと接触する頻度自体が抑えられているからです。

一方で百年前と大きく違うのがワクチンです。今年の春から夏にかけ、大量生産されたワクチンが、主に先進国の間で投与が始まります。WHOが「豊かな国がワクチンを独占する」と批判していますが、おそらく先進国各国の政府は全力でそうすることでしょう。

これだけ短期間に開発されたワクチンですから副作用の心配は残ります。おそらく少なからずの医療事故的な事件も起きるでしょう。にもかかわらず、過去のワクチンについて副作用も含めた統計的な経験則になぞれば、ワクチン接種者に関してはワクチンが効くことで新型コロナのり患から予防される人の数のほうが圧倒的多数になるでしょう。

ワクチンが広く接種される時期が北半球の夏にあたるという季節要因も重要です。夏であれば新型コロナの感染の威力は小さく抑えられます。重症化しない季節に一気にワクチンの接種が広まるとすれば、2021年の秋から冬にかけて次の流行期が訪れる前に、ワクチンによる実質的な集団免疫を社会的に広げることが可能です。

これが先進国全体で起きるとすれば、スペインかぜの三年目同様に、新型コロナ禍も三年目には収まるというシナリオは妥当な前提ではないでしょうか。


2021年に予測されるコロナ禍終息のシナリオ

さて、ここまで述べた前提条件に沿って、今年の世界全体でのコロナの拡大と収束がどうなるのか、シナリオとして整理してみましょう。

2021年2月2日、緊急事態宣言は延長され、わたしたちはまだ自粛生活の中を過ごしています。ここから先が未来に関するシナリオです。

早ければ2021年2月下旬、遅くとも3月中旬頃までには新型コロナの新規陽性者数は減少し、病床数にも余裕が生まれ、政府は緊急事態宣言解除に踏み切ります。飲食店の夜間営業も再開されますが、まだ国民の間には疑心暗鬼の状態が広まっています。一方で若者中心に次第に街の人出は回復していきます。

そのような状況下で一か月ほどたったころ、それまで一日1000人台中盤で推移してきた新規陽性者数が2000人を超え、二週間後には再び4000人を超えます。第四波の襲来です。政府は「送別会や卒業イベント、春休みの旅行などの行動が増えたことで接触の機会が増え、コロナが勢力を増してきた」といったアナウンスがあるでしょう。

その間、主要知事たちが「我慢の3週間」といった呼びかけを続けていたにもかかわらず病床のひっ迫が問題となり、4月上旬には今年2度目(通算3度目)の緊急事態宣言が発令されることになります。これはあくまでシナリオとしての未来の想定です。

そこから先、幸いにして5月に入り、温暖な季節に入ったことで新型コロナ感染者数は100人を切るところまで減少し、5月下旬ないしは6月上旬には緊急事態宣言は終了することになります。

この前後から新型コロナのワクチン接種が始まります。まずは医療関係者、つぎに高齢者という形でワクチン接種が広まり、その効果もあって2021年夏の第五波は2020年夏の第二波よりも大きさは小さく、中でも重症者はほとんど見られなくなります。

2021年秋には20代から40代の比較的若い世代にもワクチン接種の順番が回ってきて、国民の7割がワクチン接種を終えることになったところで2021年の冬の第六波を迎えます。

ここで集団免役獲得の効果で第六波が非常に小さいものになるというのが予測の基本シナリオです。現実にはこの2021年12月のタイミングが日本国民全体が不安視する「いったいいつまで新型コロナ禍は続くのか?」についての答が出ることになります。

あくまで新型のウィルスが引き起こすパンデミックであり、ウィルスである以上、変異がどれだけ起きるのかも予断を許しません。とはいえシナリオとして提示した今回の予測どおりの経過をたどった場合、スペインかぜの三年目同様に新型コロナの三年目には「コロナ禍終息」という結果に未来が落ち着く蓋然性はある程度高いと考えてよいのではないでしょうか。


そうならないリスクシナリオは?

一方で、そのような良い未来にならない場合は、何がその予測を狂わせることになるのでしょうか。

ひとつはワクチン生産が間に合わない場合です。思ったほどのペースでワクチンが増産できず、国家間のワクチンの取り合いはワクチン開発に成功したアメリカ、欧州優先となり、結局日本には一部の国民の間でしかワクチンが回ってこないというケースが悪いシナリオのひとつめです。

ふたつめにワクチンの効果が想像以上に小さかったケース。ないしは副作用が想定以上に大きくとてもではないけれども国民の多数がワクチンを打ちたいとは思わない状況に追い込まれたケースです。

そしてみっつめにウィルス自体に大きな変異が起き、ワクチンが効かない、ないしはこれまでとは違う新たな毒性を示すことで、これまで同様に自粛を続けるしかなくなるというケースです。

新型コロナの場合、夏の間にその勢力がいったん弱まるといっても、2020年がそうだったようにブラジルや南アフリカといった南半球では逆に流行が広がります。そして流行が広がる間にウィルスの変異も起きるわけなので、2021年の夏になったからといってウィルス変異のリスクがまったくないというわけではない。ここは注意すべき点でしょう。

とはいえ、話をまとめると、以上のようなリスク要因によって新型コロナが継続するリスクよりも、最初に提示した新型コロナ終息シナリオの方が、それが起きる可能性としては高いと私は予測しています。

その根拠は、過去数十年の医薬品業界の進化と、ワクチン開発の信頼度を前提にそう考えています。これは医学的な見地の予測ではなく、医薬品産業に関する知見からの予測なのです。「新型コロナにはそれが当てはまらなかった」というリスクはあるという前提で話を聞いていただきたいとは思いますが、それでも極度に未来について悲観的になる必要はないと私は考えます。

このように「新型コロナ禍は2021年7月で終息する」という予測は、今回ご説明させていただいた前提の範囲内で信頼していただいていい未来予測だと私は考えているのです。

次の記事は『新予言2 緊急事態宣言は2月20日に一度解除されるです。これまでのコロナ予測と、これからの日本経済予測が書かれた書籍購入はこちらまで

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