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日本経済予言の書2021 新予言2 緊急事態宣言は2月20日頃には一度解除される

昨年6月に発表した書籍『日本経済予言の書』では昨年4月までの状況をもとに新型コロナをはじめとする2020年代に日本経済を襲う7つのショックについて未来予測しました。コロナについては2021年の二度目の緊急事態宣言まで、おおむね当時の予測通りに日本経済は推移していると思います。一方で書籍発行後、コロナについてもさまざまなことが判明してきました。それを踏まえ、2021年の日本経済がどうなるのか、noteで新しい予測レポートを公開していきたいと思います。


なぜ緊急事態宣言は解除されないのか?

今になってみて結果だけを見ると、緊急事態宣言が発出された翌日、2021年1月8日の7,882人が新型コロナ陽性者数のピークでした。それ以前、12月までは第三波が来ているとはいえ一日3,000人台の患者数だったものが、年が明けて急速に伸びて、その伸びの激しさに恐れおののいたのがこのタイミングでした。

当時の状況を振り返ると「二週間前のクリスマスの緩みが今、爆発的な感染者増を示している」と言われ「この後、新年の初もうでによる感染増、成人式による感染増は不可避だ」という論調がありました。グーグルのAIは「1月の下旬には一日2万人を超える」とその先のコロナ感染爆発を予測していました。

ところがその後の一か月間、グーグルの予測とは逆に新型コロナ陽性者数は一貫して減少傾向を示し、2月上旬には11月頃と同じ一日2000人台まで新規患者数が下がってきました

もともと緊急事態宣言は2月7日までの一か月の期間を区切って発出されていたので、国民感情としては「予定通り解除してほしい」と思うわけなのですが、実際はそうはならず、3月7日までの一か月、追加延長が決定しました。なぜ緊急事態宣言は解除されないのでしょうか。そしていつ緊急事態宣言は解除されるのでしょうか。

実は3つの数字を見ていくとこの先の未来を予測することができます。そのことを解説したいと思います。

ひとつめの数字は現在患者数です。そもそもなぜ緊急事態宣言が発出されるのかは医療崩壊を防ぐことが最重要な目的です。医療崩壊がおきるかおきないかのぎりぎりのラインは、新型コロナのために用意された対策病床が埋まってしまう状況だというのが重要指標です。

コロナの対策病床数は全国で約55,000、東京都で約8,800です。ここで見ておくべき一番目の数字である現在患者数に注目しましょう。2月2日の現在患者数は全国で42,268人、東京都では9,854人です。

ここでわかることは全国で見れば病床に余裕があるように見えるのですが、実は東京では現在でも病床が足りないのです。

2月2日段階で対策病床使用率が100%を超えている都道府県は東京、千葉、埼玉、兵庫、福岡。そして神奈川、愛知、大阪でも95%を超えています。これが緊急事態宣言の対象の都道府県の現状です。病床に余裕があるのは主に主に大都市圏から離れた都道府県であって、東名阪と福岡では病床面でまだ危機的な状況が続いているのです。

1月を通じて東名阪では病床が足りず、入院先が見つからないまま自宅待機中に患者が死亡するという痛ましい事態が起きていました。とはいえピークだった1月中旬と比較すれば入院治療を要する陽性者数は減少しはじめています。

ですから緊急事態宣言が解除されるかどうかを見るには、たとえば東京都において現在患者数が病床数の8,800と比較して目に見えるぐらい減少してくるかどうかがひとつめの予測の基準になります。


緊急事態宣言解除の先行指標は何か?

ではいつ頃に東京都の現在患者数は病床数を大きく下回るところまで下がるのでしょうか。先に結論を申し上げると2月20日までには病床に余裕が出てくるようになります。とはいえ現在自宅待機を強いられている中症者が病床が空けば入院するようになるので数字だけを見ても病床使用率は改善されないかもしれませんが、少なくとも医療崩壊という観点では状況は2月20日には大きく改善される。そして2月20日頃に、前倒しで緊急事態宣言の解除が発表される可能性は十分にありそうです

なぜそう予測できるのかというと、二番目に注目すべき数値である実効再生産数から事態をそう読み取ることができるのです。

実効再生産数とはひとりの陽性患者が何人にコロナを感染させるかを示す数字です。この数字が1より大きければコロナは拡大しますし、1より小さくなればコロナは減少に向かいます。

東京都が発表する実効再生産数を見ると1月10日頃がピークで1.67でした。つまりその時点ではコロナ患者数が大きく増えることを示す状況だったのです。そのタイミングで緊急事態宣言での自粛が始まります。

自粛が広まり人と人が接触する機会が減ると実効再生産数は下がっていくのですが、予言1でお話ししたコロナ慣れと自粛慣れのおかげで、今回の再生産数の減少はゆっくりとしか下がりませんでした。1月20日頃の実効再生産数は0.90で、この減少率だと3月になっても病床数のひっ迫が続きそうなペースでした。

ところが幸いなことに1月下旬に入り、実効再生産数がもう一段階下がります。2月2日段階で東京都では0.77とかなりいい数字になってきました。

未来予測の正確なシミュレーションモデルは若干複雑で一般の読者の皆様にはわかりにくいものなのですが、ざっくりとした概算ならもっと簡単にできます。たとえば「二~三週間後の入院患者数は、今日時点での現在患者数に実行再生産数をかけるとだいたいわかる」という推論をたてると、それがある程度正しい未来予測になります。

2月2日の東京都の数字でいえば9,854人の患者数に0.77をかけた7,600人が二~三週間後の入院患者数の予測ということになります。これだと病床使用率は85%まで下がることになります。そしてもしそうなれば同じロジックで新規陽性患者数も東京都で一日400人を切り全国でも1000人台になるはずです。そして論理的にはそれ以降の病床も圧迫される心配が減るわけです。

基本的には緊急事態宣言には経済の面でも政治の面でもマイナスしかありません。零細企業や自営業、非正規労働者などの苦境を考えると一刻も早く解除したほうがいい。その圧力を考慮すれば、推論として2月20日頃には緊急事態宣言は解除されることが予測できるのです。


緊急事態宣言解除についての懸念はあるのか?

とはいえ、この予測は手放しで採用していいかというと、いくつか懸念点があるのでその点を指摘しておきたいと思います。

ひとつは1月に首都圏などで医療崩壊が現実になった際に、厚生労働省の指導でPCR検査に関する方針が変わったことです。具体的には濃厚接触者のうち重症化リスクの小さい若者については積極的に追跡しないことになったことが一部の識者の間で問題として取り上げられています。

つまりこの方針に沿った検査が行われると新規陽性者数が少なくカウントされ、結果的に発表される実効再生産数も正しくなくなるリスクがあるわけです。あまりうれしい話ではないのですが、数字だけ見ながら病床に余裕ができると予測していると、あとからそれが間違いだとわかるリスクが存在していることは念頭においておいたほうがいいかもしれません。

もうひとつの懸念点としてはこれまで入院できなかった待機者が2月下旬にどう判断されるかです。病床に余裕ができれば発熱症状のある陽性者はすぐに入院することになるでしょうから、実際は状況が改善されているのに病床の占有率は数字としては下がらない可能性はあります。その場合、緊急事態宣言解除の判断は3月初旬まで持ち越しになる可能性はあると思います。

緊急事態宣言の解除については医療崩壊と経済崩壊の両面のバランスから判断されるわけですが、その片方の判断基準である病床の使用率が下がらなければ、実情はどうであれ緊急事態宣言が2月下旬に解除されないという可能性はありうるわけです。


2月20日に緊急事態宣言が解除された後に何が起きるか?

さて、仮に2月20日に緊急事態宣言が解除されるとどうなるでしょうか。論理的に考えると解除から一か月後に新型コロナの患者数がまた増加を始めることが懸念されます。

緊急事態宣言下では東京都の場合、飲食店は20時で閉店する代償として一律一日6万円の協力金が支給されています。自治体の財源を考えるとこれはかなり大きな予算規模となるのですが、その負担を終える目的からも宣言解除後は営業時間は元に戻すことになるはずです。

予算の執行が止まっているGoToが再開されるかどうかは不確定ですが、国全体の視点でいえば早急に経済を元に戻す動きに舵が切られることになります。リモートワークの制限も解除されるでしょう。そして東京都の公立中学校、高校は予定通り3月25日前後の終業式まで授業を続けることになるわけです。

このように社会の活動が緩和されれば、結果として人と人の接触はどうしても増えますから、実効再生産数は再び上昇していきます。3月というのはまだ気候的に新型コロナが活動しやすい時期であることには変わりがないのです。いったん0.77に下がった実効再生産数が0.95くらいまでの上昇で収まればいいのですが、1を超えだすと危険です。新型コロナが勢いを盛り返すことになるからです。

この2月下旬から3月にかけての新型コロナの盛り返しの動きを予測するためにこれからご説明する三番目の数字が役にたちます。それがGPSによる外出率のデータです。

グーグルが発表しているコミュニティモバイルレポートによれば2021年1月19日時点での日本全体の飲食店やショッピングセンターへの人の移動はコロナが始まる前の2020年1月頃と比較してマイナス23%、職場への移動(つまりリモートワークの普及)の状況はマイナス15%となっています。

これが東京都となるともう少し減っていて飲食店・ショッピングセンターでマイナス37%、職場がマイナス29%で、このような人の移動の減少が起きたことで先ほどお話しした実効再生産数が下がり、新型コロナの新規陽性者数も収束してきたわけです。

しかしこの新規陽性者数の減少が鬼門で、その結果、ひとびとの気持ちが緩み始めます。それがどうなるかというと、グーグルのGPSデータに顕著に現れます。具体的には1月31日の東京都の飲食店・ショッピングセンターの人手がマイナス27%、職場がマイナス14%と急速に緩みはじめているのです。

このGPSデータは数週間後の新型コロナの感染者数の先行指標になると考えてください。そして仮に緊急事態宣言が解除された場合には、このGPSデータの推移に注目してください。

参考数値を挙げておきますと昨年の緊急事態宣言解除前の2020年5月20日には東京の飲食店やショッピングセンターへの人手はマイナス54%減、職場はマイナス43%減までGPSの数字が下がっていました。そこまで人の移動を減らすことが徹底されたことでこの時期の実効再生産数も0.6を割っていました。本当はそこまでやらなければ冬場のコロナは収束できないのです。

それに比べれば現在のわたしたちははるかにコロナに慣れきっています。その状況で緊急事態宣言が解除されれば、社会の活動は確実に現在よりも緩みます。ですから仮に2月に緊急事態宣言が解除されれば、3月後半の第四波は確実にやってくることが予測できます。

ただいずれにしてもこのレポートで書いたことは、現時点でわかる予測であり、その予測結果もさることながら参考にしていただきたいのは予測手法の方だと考えています。

これからの数か月間、見ておくべき数字は3つだけ。現在患者数、実効再生産数そしてGPSデータでの人手の減少数の3つが重要なのです。


次回は『新予言3 新型コロナ禍が終息するのとコロナショックは別物になる』を発表する予定です。これまでのコロナ予測と、これからの日本経済予測が書かれた書籍購入はこちらまで

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