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トヨタのEV(不)販売戦略@北米

 日系メーカーの多くが北米で販売台数/売上/営業利益の源泉としているのは周知の事実でありまして、世界のTOYOTAもその例外ではないですがEVに関しては各社ともに[出遅れ&出血拡大]な状況であります。先月ですがトヨタのEV販売戦略@北米についての資料がリークされ、トヨタのEVへの認識が明らかになった次第であります。
 資料はすでにWebの海に漂ってますので入手し、読んで考えてみました。

サマリ

 トヨタ本体から北米のEVディーラーNWに配布された資料で、北米でのEV販売で遅れへの回答として[様々な要因からEV/BEVの販売は急がず、むしろHV車を売る]としています。要因は[①原材料調達/インフラ網といったEV起因]に加えて[②インフレ抑制法に基づく補助金対象の少なさ(=価格)]といったところ、当面はHV車販売で行こうって判断がありそうです。
 個人的には本社でのマクロ情報&現地からのミクロ情報を勘案して各市場に慎重にアプローチしていくトヨタの姿勢は好きですが、現在の消費トレンドは[ユーザ=EV/ガソ車の中間的なクルマを求めており、HV需要はまだ衰えず]と結論付けているのかもしれないです。

1;ディーラー向け資料

 トヨタのディーラー向け資料では基本姿勢として[EV普及;懐疑的]なスタンスを取り、ディーラーNWに対してEV/PHEV販売に本腰を入れない理由を大きく3つ提示しています。
 製造面での素材/部材で見れば[1:6:90の法則(BEV1台分の素材でPHEV6台/HV90台作れる)]もあるし、販売面でも公的補助対象外(=価格競争力弱い)であることを鑑みると頷ける部分が大きいのです。今般の北米のEV補助施策ではトヨタに限らず多くの車種が適用除外となり、新車購入層におけるEV購入意欲は落ちているともいわれており、逆にハイブリッド車への意欲が増しているともみているようです。
 もちろん、トヨタもEV/BEVを扱っていて、bZ4XはダメダメながらRAV4-Primeはある程度売れているのではありますが。
↓ディーラー資料での理由↓

ディーラー店舗への説明資料(1)
ディーラー店舗への説明資料(2)

1-A;材料調達のコスト/難易度の悪化

 EVを構成する部材/素材へのアクセス困難性が増大しており、現時点においても将来においてもGlobalに材料調達コストが劇的に悪化している。特に希土類調達は採掘/精製を一貫して行う工程を作るには相当なリードタイムも必要で、急速な需要増加に応えられないとみている。
 トヨタとしては、これら材料をハイブリッド車に使えば、手頃価格/大量生産が可能と考えている。

1-2;充電インフラ

 米国の充電インフラ(設置個所/急速充電機)がEV普及に対応するにはまだ道半ばで、販売してもドライバーが大きな困難にぶち当たる可能性がある。
 インフラ普及に関しては、現時点では充電設備の[12%が急速充電対応][残88%は普通充電器(充電に8-30時間)]であり、米全土への普及には急速充電機を2030年までに140万基設置する必要がある…それには日平均で400基増設が必要で相当ムリゲー。現実には50基/日程度の増設であり、これまた道半ば。

1-3;価格の高さ

 EV/PHEVはガソ車/HV車に比べて高価で、多くの米国人にとって購入に二の足を踏ませるハードルとなる。もちろんインフレ抑制法に基づく補助金/税控除施策はあるが、米国縛りが強すぎて対象車種が相当に絞られてしまい、北米での販売に対して各社トーンダウンしていると指摘。
 トヨタの認識では[ガソ車/HV車=48,000USD]に対して[BEV/PHEV=58,000USD(+充電設備設置=1,300USD)]であり圧倒的に高い…

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