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FATFの相互レビューについて

 10月最終週よりFATFのPeer-Reviewが日本で始まりまして。マネロン/テロ資金防止(AML/CFT)はKYCと非常に関連性が強く、今後日本でのFintechの推進にとって結構クリティカルだなあと思っておりますです。
 FATFのPeer-reviewインサイト審査は10/28から始まり、来夏には報告書が出される予定で、報告書の内容次第では犯収法/関連規制の改正が想定されるところ、各所への影響が出てきそうだなあと(金融機関のみならず通信業態とかメルカリ的な古物取扱業にも)。KYC(内容/プロセス)が金融業態準拠ですので。。。
 ちなみに、08年実施の前回Reviewでは本人確認カテゴリで不備が指摘、その後の対応遅延も批判されて、現在の犯収法改正等につながりました。さて、今回はどうなりますでしょうか。

【Study/<FATF勧告>】
<概要>
・AML/CFTに係る政府間TFで現在は37の国/地域及び2機関が加盟する。
・金融NWを健全利用し、負の効果を抑制/是正するための基準策定/遵守監視を目的とし、各国当局に働きかけを行う
 ┗FATF勧告→各国当局での規制検討→各国金融機関での遵守
 ┗各国の状況を相互評価する[Peer-Review]のプロセスを内包する
・罰則規定はないが、当該レビューで厳しい結果になると国際的なプレゼンスの低下に直結するため、当局にとっては実質的な規制枠組みに。
 ┗「高リスク国」となることで、業務の一部に制限が生じる可能性もある
(前回Peer-Reviewでの指摘)
・08年に対日Reviewが実施され、[非遵守]が9項目(全40項目)あり落第levelの評価(日本の制度ではマネロン防げない)
 ┗所謂[Risk-Based-Approach]への認識不備が背景(要は実効性の有無)
  →Global;AML/CFTの意味合い/リスクの特定/評価に基づく規制導入+金融機関個別でのリスク特性/評価に基づく業務体制構築
  →日本;書類チェックのプロセス整備
・当該勧告発出後、金融庁等の規制官庁は強い危機意識を基に下記施策の実施へ
 ┗犯収法改正(2011年):顧客管理の強化
 ┗犯収法改正(2016年):顧客の実質的支配者の確認方法を追加
 ┗AML/CFTガイダンス(2018年);各金融機関での体制整備/高度化支援のための業務フロー等整備ハンドブックを発布

<今回の第4回Peer-Reviewについて>
・今回のスケジュールは「19年春;書面審査」「19年秋;審査団によるオンサイト審査」「20年夏;報告書公表」となっている
・10年前の落第点をいかに挽回できているかが焦点
(対象機関)
・銀行/証券/資金移動業者/暗号資産交換業者など、業態ごとに数社が選定され、ヒアリングを中心に審査
 ┗銀行/証券は金融庁のテコ入れ(勉強会等)で底上げをはかり、KYCなども相当に厳しい状態に
  →地銀/第二地銀ではまだ怪しいところがあるが(噂では日本海側の某第二地銀はザルとか)
 ┗一方で、資金移動業/暗号資産交換業者などは発展途上ということもあり、怪しい…FATFも気にする業態とのこと
  →暗号資産;送付先の顧客属性が不明だったり、暗号資産によってリスクが異なる
(金融機関にとっての事業リスク)
・仮に厳しい勧告となる場合、犯収法をはじめとする一連の法制度が改正/強化され、各社対応が必要に。
・リスクベースでみた場合に過重な業務である場合には、撤退/売却等のオプションを検討する必要がある
 *NWセキュリティと同様、NWの脆弱な部分が狙われるため、当局が上記件に乗り出してくる可能性も高い
(今回のポイント)
・前回指摘事項であった[KYC]に関して、政府/業界がこれまで行ってきた対応への評価が焦点。
 ┗上記法改正/ガイダンス発布、それに基づく各金融機関の対応
  →具体的には各金融機関がAML/テロ資金防止のリスクを深刻と認識、主体的/積極的に関与して実効的なリスク軽減策を講じているか
  (「リスク評価」→「顧客属性ごとのリスト作成」→「リスク低減策の策定」→「策の実行」)
・懸念としては3点で、対応不備/対応強化が想定される項目となります。
 ┗1;PEPs(重要公人)対応--国内の対応規制がされておらず、汚職等の政治的腐敗行為に規制レベルでの対応ができていない
 ┗2;企業の実質支配者判断--金融機関は確認義務(25%以上の議決権を持つ者)があるが、企業は自己申告で事足りており、金融機関が踏み込んだ調査をしているか
 ┗3;KYC通過後の取引--KYCを通った後のトレースができているか(急激な取引拡大/変容をウォッチできているか??)

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