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日本の資本市場を変え得るVCセカンダリ投資~Global事例~

 日本政府は今後の経済成長の原動力としてスタートアップによる事業創出/技術開発を重視して、より円滑/簡易な立上に向けて様々な施策を打っています。起業に当っての手続簡素化/規制緩和は重要なところですが、先立つものが無ければ何も始まらず、その点でVCの果たす役割は大きいと思います。
 VCは投資家から調達した資金をスタートアップに投資/伴走し、交通で言えば燃料とナビを提供するって重要な役割を提供。重要な役割を担う一方で、昨今は乱立/粗材乱雑な感もあり、ガバナンス整備がFSA主導で整いつつあります。また、VC/投資家からの現金化圧力が規模の小振り化につながっているところ、VC持分の流通市場整備は重要とみられます。
 日本では端緒に着いたばかりの事業ですが、海外でもクラブディールながら現金化手段/投資先としてセカンダリ投資は認識されています。
今回は主要プレーヤーについて調べてみましたので、自分のお勉強かねてシェアします。

1;VCセカンダリ市場の概観

 VCセカンダリ市場は基本的にVC&スタートアップ界隈のクラブディールが主流ゆえ謎とヴェールに包まれてきた。PEセカンダリに比べるとGP/LPともにあまり知られず、少数の有力企業によってエコシステムが運用
 セカンダリファンド大手であるIndustry Venturesは市場規模が23年で1380億ドルに達したとするが、情報が限定/非開示で証明しがたい部分も…現状の市場はGlobalで見ても相当に限定的で、今後の発展には情報開示/取引アクセスの開放が求められるところ、まずは主要プレーヤーの顔ぶれを確認するのが有効と思われ。

2;VCセカンダリ投資の主要プレーヤー

 ココからはGlobalに有力とみられる14のプレーヤーをセカンダリ投資規模純に並べてリストアップ。基本は非開示ながら徐々に情報が流れ始めており、プレーヤーが増えることで民主化が進むとみられる。

A;Lexington Partners(https://www.lexingtonpartners.com/)

-概要-
 上場証券の運用を中心に、PE投資/VCも行う総合的な投資運用会社で、セカンダリに関しても流動性提供の観点から積極投資/関与を行う。非上場アセット運用エコシステムの守護神を自称し、LPに対して[運用ポート調整][政府規制対応][過剰配分調整]などのニーズ充足に向けた機会提供を行う
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;750億ドル/286億ドル
本社/設立;ニューヨーク州ニューヨーク/1994年
戦略(対象);LP持分,持分分離投資
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導)
取引規模;100万-1000万ユーロ

B;Stepstonegroup(https://www.stepstonegroup.com/)

-概要-
 直接投資/FoF投資/セカンダリー直接投資/間接投資を行う専門とするグローバル投資会社。対象地域は全世界で、これまでにセカンダリ対象ファンドで200億ドル近くを調達。調達成功の秘訣は[長年の取引を通じたLPとの信頼関係]と[非常に高質な資産が非公開で共有されるがアクセス可能というポジション]にあるとする
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;1570億ドル/204億ドル
本社/設立;ニューヨーク州ニューヨーク/2006年
戦略(対象);LP持分,ファンド
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導),分割取得
取引事例;24/02にPrimaryVentureFundの1号ファンドを30%を分割取得(0.9億ドル)

C;HamiltonLane(https://www.hamiltonlane.com/en-us)

-概要-
 PE投資/VC投資/上場証券投資/FoF投資/セカンダリー投資など幅広い戦略をもつ総合投資ファンドでAUMは9000億ドル以上。セカンダリー投資はこれまで6号ファンドまで組成して計56億ドルを調達、様々なクラスのセカンダリー投資を実施。現在、セカンダリーデビューファンドを調達中で23/11に1.3億ドルでセカンドクローズ
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;9207億ドル/106.8億ドル
本社/設立;ペンシルベニア州コンショホッケン/1991年
戦略(対象);LP持分(GPリード)
戦略(方法);直接取得,市場取引(相対含む)
取引規模;1000万-1億ドル

D;Industry Ventures(https://www.industryventures.com/)

-概要-
 マルチステージVCでFoFのマザー運用も。投資はPE投資(中堅Tech系)/上場証券投資/セカンダリ投資がメイン。23/09にクローズしたセカンダリー特化ファンドは14.5億ドルを調達したが、需要多寡(25億ドル)で投資家を絞り込んだとのこと。本ファンドには米各州の対象年金委員会がLP参加する(LA水道電力従業員退職年金基金/SC州退職年金委員会/制度投資委員会/NM州教育退職年金委員会など)
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;80億ドル/24.9億ドル
本社/設立;カリフォルニア州サンフランシスコ/2000年
戦略(対象);創業者持分,LP持分,
戦略(方法);直接取得,ファンド投資

E;Pinegrove Capital Partners(https://pinegrovecp.com/)

-概要-
 セカンダリ特化ファンドで、株式/メザニン投資を通じた流動性提供機能を通じてGP持分/LP持分の双方を流動化。Brookfield-AMとSequoiaCapitalの支援を受けてデビューファンドで20億ドル調達を目指す。
ソリューション事業に特徴があり、[対GP;継続ファンド/持分買収,ファンド再編,NAVローン][対LP;資金調達,共同投資,融資枠設定]などの機能提供も。初期段階ではLaterステージのTech企業投資に重点。時期を見計らって別ステージやFoF等の展開の可能性も示唆している
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;10億ドル/10億ドル
本社/設立;カリフォルニア州バーリンゲーム/2023年
戦略(対象);LP持分,
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導),分割取得
取引規模;~5000万ドル
取引事例;24/05に破綻したSVB-FGの投資PF事業であるSVB Capitalを買収

F;NewView Capital(https://www.nvc.vc/)

-概要-
 プライマリ/セカンダリ双方に張るVCで[SaaS][フィンテック][AI][Webサービス]のGrowth段階の企業をターゲットとする。これまでに[プライマリ:15億ドル(2本)][セカンダリ:5億ドル(2本)]を調達。現在は[プライマリ:3.5億ドル][セカンダリ:3億ドル]の調達中。セカンダリ投資は他VCが[清算対象とするポートバスケット]とする点に特徴
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;26億ドル/4.88億ドル
本社/設立;カリフォルニア州バーリンゲーム/2018年
戦略(対象);LP持分,
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導),分割取得
取引事例;2018年に23andMe(遺伝子検査)/Canopy(SW開発)/Duolingo(言語教育PF)/UBER(シェアリングPF)の株式をセカンダリでNewEnteepriseAssciatesから13.5億ドルで取得

G;TrueBridge Capital(https://truebridgecapital.com/)

-概要-
 2007年創業の直接投資/FoF投資を行うVC、24/05には2.3億ドルのセカンダリーファンド調達を含む5本のファンドで計16億ドルの調達を完了。同社によると[セカンダリ市場の成長でLPは可視化向上/柔軟な保有期間/割引価格へのアクセス/新しい資産へのアクセスといったメリットを享受することが可能となる]としている
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;75億ドル/2.3億ドル
本社/設立;ノースカロライナ州チャペルヒル/2011年
戦略(対象);創業者持分,LP持分
戦略(方法);直接取得,相対(LP主導),分割取得
取引事例;20/12にNordStarからStreetbees(AI-PF)の株式をセカンダリにおいて670万ドルで取得

H;Ballast Equity Partners (https://www.ballastequitypartners.com/)

-概要-
 2022年に年金基金FM及び米国Seed-VCのパートナーが立ち上げたセカンダリ専門投資ファンド、VC持分/企業持分の両方に投資。新設ながら23/12に1号ファンドを7800万ドルで初回クローズ、1億ドルを目指す。最大投資家は3000万ドル拠出したウィスコンシン州投資委員会。
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;0.78億ドル/0.78億ドル
本社/設立;ロードアイランド州プロビデンス/2022年
戦略(対象);創業者/従業員持分,GP持分,LP持分
戦略(方法);直接取得
取引規模;創業者&従業員=50万-500万ドル,GP/LP=100万-2000万ドル

I;SecondQuarter Ventures(https://www.secondquarter.vc/)

-概要-
 セカンダリー特化ファンドで、Tech企業の創業者/従業員/初期投資家からの直接株式購入に注力。また、VCへのLP投資も検討。AUS/NZの両国に関係する企業に投資。対象企業の規模は評価額が少なくとも5000万ドルで、年間30%以上の収益成長が求められる
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;1.34億豪ドル/1.34億豪ドル
本社/設立;豪州シドニー/2019年
戦略(対象);創業者持分,LP持分
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導),分割取得
取引事例;21/10にOIF-VenturesからAssigner(建設管理SaaS)の持ち分を取得

J;Isomer Capital (https://isomercapital.com/)

-概要-
 欧州を拠点/対象とするFoFマネジャーで、[Connect Ventures][First Capital][Karma Ventures][Kindred Capital][Seedcamp][Zero Carbon Capital]などに出資している。セカンダリー取引についてはGP/LP双方の持ち分購入をターゲットとする。セカンダリー専用ファンドでは初回クローズで2,000万€を調達済みで1億€を目指す。
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;5.4億ユーロ/0.2億ユーロ
本社/設立;英国ロンドン/2015年
戦略(対象);LP持分,
戦略(方法);直接取得,ファンド投資,相対(GP主導/LP主導)
取引規模;100万-1000万ユーロ

K;Launchbay Capital(https://launchbaycapital.com/)

-概要-
 欧州/イスラエルの[Fintech][ソフトウェアインフラ]企業への直接/セカンダリの両方を投資戦略とするマルチステージVCで、以前はDigital Horizonの名称で活動。アーリーステージ投資とセカンダリー投資を行っており、セカンダリー特化ファンドは2500万ドルでファーストクローズ、1億ドルを目指す。
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;3億ドル/0.25億ドル
本社/設立;英国ロンドン/2018年
戦略(対象);LP持分,
戦略(方法);直接取得
取引規模;100万-1000万ユーロ

L;E1 Ventures(https://www.e1.vc/)

-概要-
・米国のDeep-Tech対象で、セカンダリー/マルチステージ直投資の双方を行うVC。セカンダリは案件別投資を行うべく複数SPCを介して調達。
・現在、3000万ドルを目標とする1号ファンド調達中で今後数か月以内に直接セカンダリー投資を開始する予定。
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;0.2億ドル/0.2億ドル
本社/設立;カリフォルニア州サンフランシスコ/2023年
戦略(対象);LP持分
戦略(方法);直接取得

M;TempoCap(https://www.tempocap.com/)

-概要-
 欧州拠点のTech企業に対するプライマリ/セカンダリ投資に重点を置くVCで、セカンダリの直接取引及びVCの持ち分についても取得する戦略を取る。21年から調達を開始し、プライマリ;2.26億ドルをクロース。その後にセカンダリ:3億ドルの専用ビークルを立ち上げた
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;2.7億ドル/0.2億ドル
本社/設立;英国ロンドン/2006年
戦略(対象);創業者持分,LP持分,GP持分
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導),分割取得
取引事例;20/12にNordStarからStreetbees(AI-PF)の株式をセカンダリにおいて670万ドルで取得

N;Lightspeed Venture Partners(https://lsvp.com/)

-概要-
 マルチステージVCで[エンプラ][ヘルスケア][フィンテック][コンシューマー]に特化した投資を行う。最近セカンダリー取引の実現に向けてSECにRegistered Investment Advisorを申請。承認後にGrowth-Fund(22年クローズ/23.6億ドル)の20%をセカンダリー取引に充てる予定
-ファンド情報-
AUM/セカンダリ向け;250億ドル/NA
本社/設立;カリフォルニア州メンローパーク/2000年
戦略(対象);LP持分,
戦略(方法);直接取得,相対(GP主導)
取引事例;過去3年でAnduril(防衛技術)/Rippling(SW開発)/Stripe(決済PF)のセカンダリに5.8億ドル投資

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