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IBAT社が米国発のリチウム直接抽出むけプラントの商業稼働開始へ

米国で直接リチウム抽出を行うIBAT社がユタ州で北米初の直接抽出プラントの商業稼働を開始したとリリースしました。
バッテリー/EVの自国内生産完結体制の構築が急がれる中、モジュラー設計でのプラント構築で生産体制の早期拡大が可能となります。
本件での成功を足掛かりに米国全土でのリチウム採掘/加工が加速しそうです。

1;北米でのリチウム直接抽出施設の開業

 7/11にInternational Battery Metals(IBAT)は米国の新施設で直接リチウム抽出(DLE)を開始したとリリース。ユタ州ソルトレイクシティ郊外のモジュラーDLEプラントが稼働中で、IBATにとって北米で初の商業用DLEオペレーションとなる。
 今回の採掘リチウムはEVバッテリーパックをメインに供給が行われる予定

 IBATはリチウム採掘/精製/加工に関し、環境影響を最小にとどめる技術開発に重点を置く会社でカナダに本社を置く。
 今回採用するモジュラ―DLE技術は最大95%という高い回収率を維持しながら、採掘/資源保全/生息地保護の面で環境メリットを有す。同社技術はまた、化学薬品を使用せずに閉鎖循環リサイクルシステムにより最大98%の水回収率で、塩水から利用可能なリチウムの97%以上を抽出可能
 新施設はUS-Magnesiumの施設内にある1エーカーの施設で、マグネシウム生産から得られる塩化マグネシウム/塩化リチウム塩水の副産物からリチウムを抽出。IBATによると、ユタ州の事業所は、抽出後のリチウム販売ロイヤリティ/リチウム価格連動の機器レンタル料をUS Magから受け取る予定

2;モジュラーDLE技術の特性

 IBATは[材料リサイクルの大きな進歩]と評するDLE工程について下記の特性を掲げ、リチウム採掘/抽出を一変させるとする
(CTO;John Burba氏によるコメント)
-[この成果はIBATにとって非常に重要で、リチウム生産をよりコスパ高く持続可能な形で大幅に増加させる業界変革の前兆である]
-[EVバッテリーや大規模な蓄電施設向けの低価格/高品質のリチウム供給への道を開くもので、米国のリチウム生産復活のキッカケであり世界のリチウム供給に大きな変化をもたらす]
(特性)
1;市場投入までのスピード
-モジュラーDLE設計により、従来のスティックビルドDLEプラントは数年かかるのに対し、約18か月でリチウムを市場投入可能
2;低コスト
-業界で最も低い設備投資/運用コストの1つになると予想される
3;拡張可能&機動性の高さ(塩水に非依存)
-システムの設置面積が小さく、様々なリチウム塩水資源に設置してモジュールを追加することで簡単に拡張可能
4;高品質リチウム
-独自の結晶構造で吸収することでリチウムイオンを選択抽出し、バッテリーグレードのリチウム生成に必要な原料純度の塩化リチウム溶液を生成
5;持続可能性
-独自の吸収剤は、抽出工程で化学物質を必要としない。当該技術は、塩水源からリチウムを抽出して、リチウム抽出後の塩水を水源に戻す

3;DLE技術とは

 DLEはリチウムを地下水/塩湖/地下水層などから直接抽出する技術で、従来のリチウム採掘方法と比較して効率的で環境に優しい手法とされる
(プロセス)
1;採取地の選定
-地下水/塩湖でリチウム濃度が高い場所を選定すべく地質調査が行われ、地層構造や水質分析を通じて最適地を特定
2;採取水の取得
-地下水/塩湖の水を採取&処理してリチウム濃縮液を獲得。この際に採取水の処理プロセスを通じて不純物や他金属イオンの影響を最小限に抑制
3;リチウム濃縮液の生成
-水からリチウム濃縮液を生成すべくイオン交換/溶媒抽出などの技術が使用され、リチウムが他イオンとの混合を克服して高濃度のリチウム濃縮液を獲得
4;選択的なリチウム分離
-リチウムを他成分から高い選択性で分離。例えば、イオン交換樹脂や特定有機溶媒を使用してを効率的に抽出
5;精製プロセス
-リチウム濃縮液を高度精製し、蒸留/沈殿/フィルタリングなどを行って高純度リチウムを得るために不純物を除去
(メリット)
A;選択性の向上:
-DLEは高い選択性を持ち、リチウム以外の成分を極力排除することが可能
B;エネルギー効率
-従来の鉱石採掘や蒸発池法よりもエネルギー効率が優れており、環境負荷が低い
C;地域依存性の軽減
-地下水や塩湖からリチウムを抽出するため、地域による供給制約が少なくなる
(デメリット)
A;技術の新規性
-DLE技術は発展途上で、大規模な商業生産展開には技術的な課題が残る
B;初期投資の高さ
-DLE導入には高い初期投資が必要であり、普及障害となる可能性がある

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