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TeslaのSC-NWの現況と今後について

混迷の度を深めて方向性が良くわからなくなっているTeslaの充電事業について、まとめてみました。
先週末にはTeslaっが解雇従業員を再雇用しようと動いていたり、スタートアップ/エネ各社が人材獲得に乗り出しているなど報道が様々にあります。
いずれにしても北米でのNACSという標準規格という強い武器をTeslaがもっているのは事実、日系メーカーも獲得に名を挙げてもいいのではなかろうかと。

https://www.tesla.com/impact/product

1;レイオフ前のSuperChargerNW(SC-NW)の状況

-SW-NWの概要-
 米国内;25,000/全世界;50,000を超える充電ポートを備えるNWはEV高速充電の紛れもない王者で、普及度/実効率で他を凌駕するレベルのサービス提供で、EV保有者の[航続距離不安]の解消につながった
 最近のレイオフは人員削減は予測されたがまさかの事業部門閉鎖…。この動きで充電インフラ拡大には暗雲が立ち込め、継続性(人員/取引関係/設備など)が担保しえなくなった
 退職した充電部門の元従業員は[世界最高のNWを構築できた。我々はTesla全体のことを考えて常に高い目標達成へ行動してきた]と語った

 Teslaの直近のレイオフ/事業部閉鎖後、Musk氏は5/10にSC-NWの拡張/新設に5億ドルを費やすと表明。しかし、内部関係者も懸念するように蓄積したナレッジ/ノウハウの消失と、作業実務部隊がいないので予算があっても目標達成は厳しい…

-SC-NWの拡大状況-
 レイオフ前、SC-NWは競合他社への優位性の絶対化と拡大が可能な状態にあった。
 具体的にはSCの生産/設置方法を改良したプレハブ方式で設置コストを2万ドル/台にまで低下させることに成功(最も近い競合他社の半分以下)。プレハブ方式での設置はレイオフ前、数十か所において計画/建設フェーズにあったが現在は頓挫/中止された可能性が高い
 いち早く普及率/実効率の高いNWを形成したため、NEVIの補助金を受けやすい環境にあったともされる。まず開発/設置が簡単な拠点から開始し、その後にNEVI補助金を使って連邦政府の[重要視する地方/コミュニティ]での設置に着手、既存顧客へのサービス水準を維持しつつ、リース交渉/設備アップグレードの調整/既存インフラへの併置といった対応が様々に必要で拡張は非常に困難

 多くのアナリストはAWSと同様のルートをSC-NWとTeslaはたどると予測したが、想定よりはるかに早く収益計上を実現した。SC-NWは他OEMがアクセスを開始する前、自社のみサービスの段階で利益を上げていた

2;SC-NWの誕生と拡大

 Teslaは12/09に最初のSCステーションをCA州に開設。初期モデルは100kWの給電レベルだったが当時としては大きい数値で、競合するCHAdeMOは62.5 kW、CCSは試作段階。CA州での拡大を皮切りに東海岸/中西部/テキサス州の高速道路沿いに展開を加速
 その後、年を追って給電能力を向上。2013年には最大出力を120 kWに引き上げ、2015年には米国全土に広がるNWを構築。同時に海外展開も加速し、欧州/中国/豪州などでSC-NWを構築。現在では50,000台近い設置に成功した

3;SC-NWの強み

 展開初期、Model-S及びModel-Xの所有者に無制限の無料充電をインセンティブ提供。Model-3の発売開始以降、新しい所有者に充電料金の請求を開始。充電プロセスは車の電源ON/充電開始/登録クレカへの請求というシンプルなプロセスで提供
 現在のSC充電器は最大250 kWの充電速度をサポート、他のNW最高出力は350kWだが信頼性が桁違いのレベル。TeslaのNW稼働率は99.95%であり、競合他社よりもはるかに優れているといわれる
 UCBの調査によると充電での問題/課題経験の比率はTesla車以外で25%、Tesla車では4%だったとのこと

4;SC-NWの拡大

 開設から10年近くSCはTesla保有者のみ利用対象としてきたが22年秋にプラグ設計詳細を他メーカーに公開。充電セッションは車両と充電器の間の結合で開始され、請求はオンラインで行っていたためTeslaは利用者を厳密に制御。仕様公開の時点でTeslaは充電時の通信プロトコルをCCSと同様のものとして、準備は進めていた
 23/05にFordがNACSとして知られるTeslaのプラグ設計を採用して同社EV顧客への提供を発表、その後他社も追随した。Teslaは24/02から自動車各社にNACS/SC-NWへのアクセスを許可し始め、まずFordが既存EV所有者へのアダプタ無料提供を通じて対応開始
 対応するOEMはほぼすべてにわたり、GM/Toyota/Honda/Nissan/Hyundai/Kia/Mercedes/VW/Volvoなど

 現時点でSC-NWは早期の新設が見通せず事業の頂点に達した可能性があり、Musk氏は[新拠点の拡大は従来より遅いペースで継続、100%稼働と既存拠点拡大に集中する]としている。ただ、適切なチームが解散した今では新設はもちろんだが既設の箇所でも複雑な作業となる…

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