もし歌が街の景色に溶け込めばあなたの目にも届くだろうか
三越伊勢丹グループの秋のキャンペーン「彩り祭 2022」の広告キャッチコピーを短歌で担当させていただいた。
9月21日(水)〜10月4日(火)の2週間にわたって、北海道から九州まで、全国の三越・伊勢丹・丸井今井・岩田屋の店舗で展開されている。
三越伊勢丹さんとの関わりは2017年に遡り、伊勢丹新宿店がセクシュアルマイノリティへの理解を表明するイベント「PINK FOR ALL」の、チラシキャッチコピーとショーウィンドウを担当した。
特にショーウィンドウは、待ち合わせ場所として名高い「新宿三丁目交差点」の正面に採用していただき、新宿を訪れる多くの人の目に留まることとなった。
あれから5年、「彩り祭 2022」は、店舗単位の展開ではなく、全国の三越伊勢丹グループ全店で展開されている。
読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋……新しい季節への期待と高揚を表現した短歌をキャッチコピーとして依頼された。
担当者やデザイナーと何度もディスカッションを重ね、30首近く書き下ろした後、この歌が採用された。
あざやかな
色に染まった
言の葉を
あなたのもとへ
届けに行こう
キャンペーンが始まり、日本橋三越本店での展開を拝見するため、東京メトロ銀座線の三越前駅に降り立つと、短歌が自分の目に飛び込んできた。
短歌がカルチャーのメインストリームとして取り上げられることは、ほとんど無い。
「短歌を書いてる人に初めて会いました!」とこれまで何十回と言われてきたし、歌集を1冊も読むことなく一生を終える人の方が多いだろう。
街の景色の中に、短歌が自然と溶け込んでいたらいいのに。
本屋に行かなくても、図書館に行かなくても、誰もが短歌に触れられる世界。
短歌を始めた十数年前からそんな想像を巡らしてきた。
今回のキャンペーンではあくまでコピーライターを担当したまでのため、短歌やデザインが店舗ごとにどのように展開されるかまでは共有されていなかった。
てっきり店内のみの展開と思っていたから、地下鉄の改札を出てすぐの柱に自分の短歌が掲示されていて、実をいうと、最初は呆気に取られてしまった。
それほどに、十数年前に思い描いたとおり、短歌が日常の景色に溶け込んでいた。
10月4日(火)のキャンペーン終了まで、あと1週間足らず。
遠くに暮らすあなたの目にも届いたらいいなと思う。
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