短歌 新作12首 『誰のものでもない』
どう生きるかは自分が決めるもの。
自分という存在は、他の誰かじゃなく自分のためにある。
けれど、この世から鏡が無くなるように、孤独は自分という存在すら曖昧にさせる。
他者の存在を強烈に感じ取ったとき、そんなことをふと思った。
そんな気分を、12首の短歌で書いてみました。
第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。
誰のものでもない
死のうかと身を乗り出したベランダで下の階からカレーの匂い
公転の遠心力で離れたり交わったりを続ける身体
抱かれるとわかってる日、信号の止まれはあんなに赤かったっけ。
引き止めてくれたと思ったハンズフリー通話している誰かの「マジで?」
歳の差を埋めてくように適正な順序で脱がしてゆく人だった
酸素系漂白剤で洗ってもたぶんあなたがまだ残ってる
まっすぐのつもりで歩き出したのに曲がりくねっていたストーリー
死ねなくて絶望してもパナップの穴はいつでも笑顔のままで
またいつか帰って来てもいいように誰のものにもなっていないよ。
君を消すか、俺が消えるか、よりつらい方の末路を考えている
代わり映えしない明日が来るまではせかいでいちばんあいしてほしい
前もって俺が死ぬ日を伝えたい 連絡先を知らない君に
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