エンタメ界、勝負の秋冬!ハロプロ武道館公演に見た希望の光
先日、ハロー!プロジェクトがこの夏も全国ホールツアーを成功できた秘訣についてまとめた記事を講談社FRaUで執筆。
Yahoo!ニュースでも大きな話題となり、たくさんのみなさんに読んでいただきました。
さて、季節は秋。
低い気温と乾燥する空気はウイルスが好む環境で、感染力が強まるといわれており、さらに春夏に比べて人間の免疫力が低下する秋冬は、ウイルスにとって絶好の機会。
今年は、まだまだ猛威を振るっている新型コロナウイルスと共に、例年どおりインフルエンザの流行が重なるだろうと予想されています。
そんな中、音楽・演劇・映画などのエンターテイメント業界が少しずつ盛り上がりを取り戻しつつあります。
映画界では『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が、10月16日の公開から10日間で興行収入100億円、観客動員約790万人突破の大ヒットを記録中。
一方で、いまだに都内では100人を下回らない数の感染者が連日確認されているし、劇団四季は10月17日、東京で上演中の『アラジン』の出演者など10人が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。
「はたして本当にエンタメを悠長に楽しんでいる場合なんだろうか」と懸念している人も少なくないのではないでしょうか。
ハロー!プロジェクトはというと、夏の全国ツアーに引き続いて『Hello! Project 2020 〜The Ballad〜』と題して、9月から12月まで全国各地をまわるホールツアーを敢行中。
10月12日には満を持して日本武道館でコンサートを行いました。
僕は正直なところ、もう今年はアーティストのLIVEを生で観れることなんてないんじゃないかと半ば諦めていました。
在宅ワークでほとんど人に会わないし、電車にすら滅多に乗らない生活を送っているので、コンサート会場のようなたくさんの人が集まるところに足を運ぶのは、実際とても抵抗があったからです。
けれどFRaUでもお伝えした通り、ハロプロは今年の夏に全36公演という決して少なくない数のホールツアーを成功させ、現在までに出演者、スタッフ、来場客からの新型コロナウイルス感染は一人も発表されていません(11月5日現在)。
武道館公演決定の告知は「安心して見に来てください!」というハロプロ運営スタッフの自信がみなぎっているように思えました。
これはハロプロを信じてみてもいいかもしれない。
そこで、感染者ゼロをキープできている秘訣をこの目で確かめる意味でも、武道館公演『Hello! Project 2020 Autumn ~The Ballad~ Extra Number』に行ってきました!!
入場時間も指定された万全の管理体制
ハロー!プロジェクトが今年コンサートを開催してきたのは、中野サンプラザをはじめとするホール会場で、キャパはせいぜい2,000人程度。
対して武道館の最大収容人数は約14,400人で、ソーシャルディスタンスのため半数に座席を減らしたとしても、これまでとは規模の大きさがまるで違います。
運営スタッフの緊張感はひとしおだったことでしょう。
まず、夏のツアー同様に、入場時はもちろん公演中もマスクを着用すること、公演中は着席を厳守、一切の発声を禁止することなど、コンサートを鑑賞する上でのルールがWebサイトで周知されました。
座席のエリアによって入場時間を分散する措置もとられており、当日は自分が指定されている入場時間に合わせて、いざ武道館へ。
最寄り駅である地下鉄の九段下駅に着くと、武道館へ向かうファンのみなさんが地上へ昇るエスカレーターからすでに列を成していました。
さすがマナーの良いハロヲタさんたち、マスクをしていない人は一人も見かけませんでした。
ただ、天安門をくぐって武道館が見えてくるあたりで通路が狭くなり、辺りは完全に密状態。
屋外とはいえ、しばらく満員電車に乗っていない僕は、「もしもこの中に新型コロナウイルス感染者が一人でもいたらどうしよう……」と、少し体が強張る思いでした。
この武道館公演で、夏のツアーから変更となった点は、会場でのグッズ販売が再開されたこと。
グッズ販売の列がやけに空いていたので、せっかくだからコンサートの前に見ていこうかと思ったのだけど、グッズコーナーの入口から、なにやら言い争う声が……。
一人の男性ファンが、すごい剣幕でスタッフに詰め寄っているところでした。
「こちとら大阪から来てんねんぞ! 入れへんとはどういうこっちゃ!!」
実は入場時間と同様に、グッズ販売も座席のエリアによって受付時間が決まっていて、この男性の持っているチケットでのグッズ販売はもう締め切ってしまったとのこと。
そうだったんだ! 係員にチケットを見せると、僕もすでにグッズを買えない時間になっていました。残念……。
「ほら、兄ちゃんも入れへんのやんか! なんとか言ってやってーな!!」
「まあまあ……もうステージ始まっちゃいますよ……」
怒りの静まらない男性をなだめつつ、僕はさっさと諦めて武道館の入口へ向かいました。
「見ていない方が悪い」と言われてしまえばそれまでだけど、直前に発表されたのか、わりとWebサイトを注意深く見ていた僕でも知らなかった情報だったので、遠方から来たファンがそうして冷たく跳ね除けられてしまうのは、なんだか気の毒な思いでした。
こうした小さなトラブルは、管理体制が厳しいからこそ生んだ弊害と言えるかもしれません。
一人ひとりに語りかけるような歌声に感動
武道館の中に入ると、アリーナ席・1階席・2階席、どの座席も前後左右が1席分空いており、キャパは最大収容人数の半分以下(約7,000人程度)に減らされていることが見て取れました。
ただ、武道館は座席がとても小さく、もともと隣の席の人と肩が触れるくらいの近さなので、1席分のソーシャルディスタンスは正直まだ少し安心できない距離感ではありました。
その代わり、約3時間の公演の中間で、換気を兼ねた25分間の休憩が設けられました。
アイドルのLIVEでの途中休憩としては異例の長さの25分間は、武道館の広さにおける充分な換気を見越した措置だったことが想像できます。
この日、僕は1人でチケットを購入して観に行きましたが、友人が2人で観に来ていると言っていて、てっきり1席空けた隣同士で座っていると思っていたら、この公演はもともと1人1枚しか購入できず、たとえ友人や家族であっても隣同士で座ることができないようになっていたことを知りました。
この徹底ぶりには驚きましたが、発声や会話を禁止する名目としては的確なシステムだったと思います。
客電が落ち、いよいよ開幕。
モーニング娘。'20・アンジュルム・Juice=Juice・つばきファクトリーのハロー!プロジェクトメンバー(ミュージカル公演のため出演できなかったBEYOOOOONDSを除く)総勢39名がセンターステージに集まりました。
1曲目は、なんとAKB48の『365日の紙飛行機』を全員でカバー。
アイドルグループとしては後輩、そして「国民的アイドルグループ」という座を受け渡したライバル、しかしメンバーから見れば芸能界の先輩という、ジャパニーズアイドルを語る上で切っても切り離せない関係のAKB48に対するリスペクトを感じさせる粋な選曲でした。
円形のセンターステージをゆっくりと踏みしめ、客席の一人ひとりに語りかけるように目線を送りながら歌うメンバーたち。
「ああ、そうだ、これがLIVEだ。僕たちはこれが観たかったんだ」
1年以上ぶりに鼓膜を撃つ生の歌声に、僕の涙のダムは1曲目から完全に決壊しました。
中学生にも武道館ソロを歌わせる鬼のハロプロ
この武道館公演も、夏のツアーと同様に、『ハナミズキ』『いい日旅立ち』『見上げてごらん夜の星を』をはじめとする往年のJ-POPバラードを、ひとり1曲ずつソロで披露するという企画。
観客の持つサイリウムが、歌唱するメンバーのメンバーカラー1色に染まる美しい光景がとても印象的でした。
この企画、公演のたびにメンバーの歌唱曲が変わるのが大きな特徴。
表現の幅を1曲に限定してしまうのではなく、個々のキャラクターや知られざる魅力を引き出せるよう、歌唱曲をローテーションするように工夫されています。
メンバーによってはこの日初めて披露する楽曲もあり、誰もが聴き馴染みのある往年の名曲をソロで、しかも武道館で歌うという緊張必至の状況でも、全員が真っ向から、そして楽しそうに歌い切ったのは、さすがは年間を通して膨大な数のステージをこなしている「ステージパフォーマンスのプロ集団」といったところ。
しかも、モーニング娘。'20の岡村ほまれ・山﨑愛生、アンジュルムの橋迫鈴、Juice=Juiceの松永里愛にいたっては、まだ中学生。
さらに初めての武道館でのパフォーマンスがソロ歌唱という、「鬼やな……」とファンが心配になる過酷なチャレンジでした。
けれど、現状に甘んじず、若いメンバーにも大きなステージを経験させる攻めの姿勢こそ、ハロプロの醍醐味。
そんな心配をよそに、4人とも堂々たる歌唱を披露。
「次世代ジャパニーズアイドルの夜明け」とも言うべき記憶に残るステージでした。
勝負の秋冬、エンタメを復活させよう
はじめは大きな会場に入るすら心配だったけれど、公演後も僕の体調は良好で、「行ってよかった!」と心から思える一夜になりました。
これも、メンバーの生の歌声をたくさんの人に届けたいと奮闘してくれた事務所と、徹底した管理体制で臨んだ運営スタッフのみなさんの賜物であったと思います。
日本武道館では今後、清水翔太やKing Gnuの公演が控えており、いよいよ横浜アリーナもTHE YELLOW MONKEYが、さいたまスーパーアリーナではあいみょんがLIVE公演を予定しています。
ウイルスが猛威を振るう季節、コンサート会場だけでなく、いかなる場所であっても、厳重な感染症対策が今後も引き続き必要になることに変わりはありません。
イベント開催にともなうルールへの協力はもちろん、万が一体調が優れない場合は、イベントへの参加を取りやめる判断も求められます。
しかし、正しく感染症対策を行えば、エンタメは楽しめる。
映画や舞台だって見れるし、コンサートにだって行けるのです。
長く暗い時期が続いたエンタメ業界を復活させることができるのは、我々ファンの応援に他なりません。
「今年まだLIVEを生で観てない」というみなさん、この秋冬、ぜひ一度はコンサートに出向いてみてはいかがでしょうか。
外出時には、くれぐれもマスクを忘れずに。
あらゆる言葉が無料で読める時代。 それでも、もしも「読んでよかった!」と思っていただけたら、ぜひサポートお願いします。 また新しい言葉を書くために、大切に使わせていただきます。