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短歌 新作8首 『君という現象』

誰か一人の存在で、目の前が昨日とは違う色に見え始める。
あざやかに輝き出したり、突然に暗くモノクロームに見えたりもする。
そうして自分の体に起こる変化を表すための、相応しい名前を探している。

そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

君という現象

今日からの俺だけを見てほしいから新しくした玄関マット

キッチンで野菜を切っている音がユニットバスの孤独を壊す

純粋に君を信じていると証明したくて口に含む指先

不自由は、宝飾 ぜんぶ脱いでからアップルウォッチを最後に外す

的確なカメラワークで俺たちを収めたポルノビデオを撮ろう

君という現象を確かめるために俺は生まれたのかもしれない

海原のいかだのようにひとつだけの枕で夢に浮かんでいよう

君がいて色づく世界、幸せになるのが少し怖いと思う


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