短歌 新作8首 『種をまく人』
相手からあらかじめ求められている立場。
それ以上でも以下でもないと決められた関係。
すべて理解したうえなのに、少しでも前に進めないかと期待する自分がいる。
そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。
第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。
種をまく人 鈴掛真
ひとつずつ抓まれてゆく 落ちた穂を拾い集める農夫のように
性別がうやむやになるから君は酔った帰りに呼び出すんだね
朝露の小麦のように汗ばんだ君の背中を枯らしてみたい
左手に指輪を塡めてもらうときどんな未来を見つめていたの
発生を妨げるためウレタンの袋の中に種をまく人
過ちのひとつやふたつ無香料のボディーソープを渡してあげる
町中ですれ違ってもいいように夢の途中で君と別れた
あかちゃんができるといいね サボテンの花を一度も見たことがない
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